『音色』 -第3話-

2018-11-08 08:21:52 | 作り話

「おばあちゃんがお嫁に来た頃
この町ってどんなだった?」
「昔は漁師さんと小松石を運ぶ
人足が沢山いてね~。
今よりはずいぶん荒っぽかったけど
それは活気があったよ!」 

 今は猫くらいだ 元気があるのは。
とにかくこの町にはそこいらに猫が
いる。 もしかして、おばあちゃん
が言っていたアマル何とかって町も
猫がいっぱいいるところなのかな?
猫はいいな、いつも好きな事だけ
して。 なにもしゃべらなくても
いいし気に入らないことがあれば
「ぷいっと」どこかへ行けばいい。
その事に誰も文句を言ったり
怒ったりもしないもん。

私は人から「おくて」と言われる。
「人見知り」と言う人もいる。
本当はそうじゃない。 ただ他人に
聞こえるほどの大きな声が出せない
だけだ。
心の中ではいつも叫んでいる
「そんな服じゃいやだ!」 
「私、こっちじゃなきゃ絶対
いや!!」って
頭の中ではうるさくて大きな音なの
に、何で聞こえないのだろう。
お母さんにも良く言われる
「どうしたいの 陽?」
「もっと大きな声でちゃん
と言って!」って。
私はちゃんと言っている
つもりだけど、お母さんにも
聞こえない程の小さな音なのかな。

猫にはちゃんと聞こえている
みたいだよ。
だって猫に「あっち行け!」って
言うと直ぐに猫は逃げるもの。

あと、おばあちゃんにも聞こえ
ているよ。
皆、おばあちゃんは耳が遠いって
言っているけど、そんなのきっと
嘘だ。
だって、おばあちゃんいつも言うよ
「はい、はい、そんなに大きな声を
出さなくても聞こえるよ、陽」って。

どうして他の人には聞こえないん
だろう、陽の声?