赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

ロシアは原発周辺で何を探しているのか topics(670)

2022-12-03 11:11:07 | 政治見解



topics(670):ロシアは原発周辺で何を探しているのか


最近のウクライナでは、ロシアの占領地がどんどん小さくなっていて、ウクライナが国土回復を進めています。しかし、ロシア側はウクライナのインフラ、特に電力関連の発電所や送電所といった民間インフラの卑劣な破壊を進めています。民間のインフラを攻撃することは国際法違反、つまり戦争でもやってはいけないことですが、ロシアは平気でやっているわけです。

これがウクライナにはボディブローのように効いてきています。あのあたりは冬は非常に寒いので、電気がない、暖房がないというのは、人々にとっては非常に困るわけです。

一方、ロシアからすると戦場では不利ですが、インフラ破壊によってウクライナ人の戦闘意欲を挫くという作戦に出ているということです。一気に雌雄を決するような決戦戦争みたいなことはせず、消耗戦争をしているわけです。

しかし、長期化すればロシアが有利かというとそうではありません。新たに徴兵した30万人に多数の犠牲が出れば、ロシア側でも戦争をやめた方が良いという雰囲気になるでしょう。

また、一時的に休戦があっても、紛争として完全に解決するということは当面ないと思われます。

今のところウクライナの国民の士気は高いようですが、NATO側、支援している我々側にも援助疲れが出てきているわけです。経済の良くない事態が長く続き、景気が悪くなっています。こういった国がウクライナをさらに支援することは難しくなってくるでしょう。

つまり、時間が長引くとウクライナに不利になる要素の一つです。

戦争の行く末はわかりませんが、停戦ということになったとしても、ロシアとウクライナ、そしてウクライナをバックアップしているNATOの対立は長く続くということです。

11/16には、ポーランドにミサイルを打ちましたが、その時にも申し上げましたがこれは案の定、ロシアのミサイルをウクライナが撃ち落とそうとして失敗したというのが実態でした。アメリカとポーランドが冷静に判断してすぐに声明を出したので大事には至りませんでしたが、こういったアクシデントからロシアとアメリカの第三次世界戦争になることもありうるということです。

しかし、冬の間は戦線が膠着するので、戦況が大きく変化することはありません。

ところで、ロシアはウクライナ南部のザポリージャ原子力発電所の占拠を続けています。敷地内では砲撃が相次ぎ、先週も外部からの電力の供給が一時、喪失したとしてIAEA=国際原子力機関が懸念を示しています。原発の破壊をおそれているわけです。もし、これが破壊されれば、放射線による被害は東欧諸国やロシア西部、ベラルーシにも及ぶ可能性があると言われております。

この問題について、長年親交のある東大の宇宙物理学の元教授で、ロシア・アカデミーに弟子を抱える方と久々にお会いして、ロシア軍は原発で何をしているのかというお話を伺いました。要点は以下の通りです。

1. ロシアはチェルノブイリ原発の恐ろしさを見に染みているので、原発を破壊したりはしない。
2. かつてウクライナは米ソに次ぐ核兵器大国で、ソ連崩壊後ロシアが核兵器を持ち去ったが、あるものを探している。
3. それは中性子爆弾。原発周辺に隠しているのだと考え掘り起こしている。
4. 中性子爆弾は、人間を殺傷するが建物は壊さない。占領するためには必要なもの。
5. なお、ロシアの動向は、西側の報道ではわからないが、軍需景気で湧いているとのこと。
6. Zマークがついた大量の戦車が破壊されているのも、自国でスクラップするよりもウクライナ軍によってスクラップさせたとのこと。
7. また、普通ソビエト時代から、ロシア軍は一点集中で攻めるのに、今回のウクライナ侵略は分散している。最初から、本気で戦おうという意欲はないのではないか。
8. アメリカからウクライナに送られた兵器は30%しか使われていない。ウクライナ内戦のために取っておくのと中東諸国に高い価格で買われている。ミサイル1発で高級車2~3台、買える。


にわかには信じがたい話ではありますが、国際情勢は何でもありなので、頭から否定すると判断が狂います。いずれにしても、どの国も煮ても焼いても食えない連中であると考えておいた方がいいようです。



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統一地方選挙後の台湾 topics(669)

2022-12-03 00:00:00 | 政治見解



topics(669):統一地方選挙後の台湾


台湾の蔡英文総統が党主席の辞任を表明しました。

台湾で行われた統一地方選挙で与党である民進党が大敗したことが要因なのですが、蔡英文政権は支持率も高く、経済状況も良好…と、本来なら十分に勝てる状況でした。では、なぜ、大敗してしまったのでしょうか?

台湾独立運動家は次のように解説します。


今回、はっきり言って民進党は「信じられないような」大敗をしてしまいました。というのも、蔡英文政権そのものは、非常に高い支持率を維持しています。2期目でなお支持率50%超えは異例なことです。経済成長率もとても良くて、個人国民所得は、今年初めて日本と韓国を抜いて高くなりました。

つまり負ける要素はほとんどなかったのです。なのになぜ大敗してしまったのか? 
これには2つの理由があります。


■予備選挙の廃止が裏目に…

一つは人選ミスです。本来、民進党は選挙の前に党内で「予備選挙」というのを行います。そこで内部で戦わせて、一番強い人を立候補させるのです。しかしこの方法だと本選挙に入る前に、党内でいざこざが生じることもあるので、今回はそれに配慮して、実質的に蔡英文総統に一任する形となりました。実はそれが、裏目に出てしまったのです。

蔡英文は外交と国防の分野ではとても素晴らしいリーダーシップを発揮していますが、党内・地方勢力の派閥や権力分配には全く無関心です。しかし、地方選挙の場合、地方の派閥、勢力、利益分配にある程度精通しなければ、候補者を立てることは難しいのです。

蔡英文はそこを無視して人選を無理やり押し付けるような部分がありました。例えば、新北市の市長候補だった林佳龍(りんかりゅう)は、もともと台北市で立候補しようと入念に準備していました。ところが彼を、まったく地盤もない新北市に立候補させたのです。つまり、本来なら勝てる候補者を勝てないところに立候補させてしまいました。

民進党にもいろいろな派閥がありますから、この派閥の支持基盤を見極める必要があるのです。これにより民進党は今回の選挙で一致団結していませんでした。これは民進党内に敵への油断、おごりと慢心があったと言えます。


■若者が離れたネガティブキャンペーン

そしてもう一つの敗因は何か? 今回の選挙では、政策を出して政策論争をするよりも、民進党でも国民党でもネガティブキャンペーンでお互いの政党を批判・個人攻撃することばかりやっていました。このようなネガティブキャンペーンに若者は嫌気が差していますから、今回は自分の故郷に帰って投票するような様子もなく、
若者にとっては全く魅力のない選挙になっていたのです。

しかし民進党の支持者層の多くは若者です。若者が投票に行かなければその分、民進党の票が減ってしまうということです。


■2年後の総統選はどうなる?

明らかに今回の失敗によって蔡英文の影響力は弱くなり、これからはポスト蔡英文の時代が始まります。総統としての任期は残り1年ちょっとですが、党の主席を辞めたことで、レームダック化するでしょう。そして今回の責任を問われる中で、内閣改造もする可能性があります。

そうなった場合、2024年の総統選挙では、蔡英文の意中の人物が立候補できなくなる可能性が非常に高いです。

現時点で、2024年の総統有力候補は3人います。
・頼清徳(副総統)
・陳建仁(前副総統)
・鄭文燦(桃園市長)
この3人のうち、陳建仁と鄭文燦の2人は蔡英文の意中の人選なのです。

しかし今回の選挙によって、この2人が立候補する可能性は非常に低くなり、その分、頼清徳が総統候補になる可能性が高くなりました。実は皮肉なことに、頼清徳の支持者たちが今回の選挙であまり積極的に動かなかったことも大敗した1つの要因なのです。

本人がどう思っているかは別として、彼の支持者らは明らかに今回の選挙で、民進党の足を引っ張ったのです。結果的に、頼清徳にとってかなり有利な情勢となりました。確かにこの3人の中で考えると、頼清徳は良い人選だと思います。

しかし敵である国民党は今回の選挙で勢いづくはずですから、民進党もこのまま内部闘争をしている余裕はもうなくなり、一致団結せざるを得なくなるでしょう。

そういう意味で、今回の大敗は決して、長い目で見れば悪いことではありません。民進党がこの大敗を反省して、一致団結して気を引き締められるかが今後の鍵になると思います。



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