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コラム(500):軍事予算から見るアメリカの本気度
12月15日にアメリカ上院で2023年度の国防予算の大枠を決める国防権限法(NDAA)を可決しました。今回の国防権限法の一番の特徴は、史上最大の軍事予算となったこと。過去最高の8580億ドルに達し、バイデン大統領の提案を450億ドル上回りました。
これが何を表すのか? 台湾独立運動家の視点からの解説をお届けします。
■人事と予算をみれば政権の本気度が分かる
政権の本気度を判断する際に何を見れば一番わかりやすいか。
1 人事
2 予算
その観点から来年度のアメリカの国防権限法を見るとアメリカが本気にしている部分が分かります。今回の特徴である過去最大の軍事予算はアメリカが、これから国防を何より重視することを意味しています。
そして、国防で一番意識している相手とは中国。中国に対する警戒心は特に軍事の面においてこれほどまでに高まっているのです。
今回の国防権限法で通した予算8580億ドルは前年比800億ドル増額。約10%近く増額されています。さらには法案を提出したバイデン政権の予算案より450億ドル増額されました。そんな国防権限法で一番議論され、注目された部分とは? それは台湾政策法の精髄を織り交ぜたことにありました。
■国防権限法で織り交ぜられた台湾政策法
今回の国防権限法に織り交ぜられた台湾政策法は
主に以下の5つの部分になります。
1.Major Non-NATO Ally
主要なNon-NATO同盟国の地位を与え米軍が持ってる武器を速やかに譲り受ける、購入することができる。これまで武器調達は新品しか受け付けず、事前審査の上発注し、それから製造だったため10何年のスパンが必要だった。これにより極めてスピーディーに対応が可能となる。
2.軍事支援(2023-2027年)
(a)無償で20億ドル/年相当の軍事物資支援金を提供
・このうち毎年3億ドルは台湾自国生産の武器を購入が可能
・台湾の国防産業そのものへの援助になる
・この内容でアメリカが軍事支援しているのは世界でイスラエルのみ
(b)融資として最大20億ドル/年
(c)大統領権限(PDA) 10億ドル/年
(d)地域の緊急時対応用備蓄弾薬庫10億ドル/年
アメリカから合わせて年間60億ドルの軍事支援。台湾の23年軍事予算は190億ドルであり、60億は台湾にとって膨大な軍事予算。アメリカが台湾を重視する証拠の一つ。
3.武器売却加速
パッキング武器売却が禁止され、不必要なものを購入する必要がなくなった。それにより交渉・全ての製造を待つ必要がなくなり武器の引き渡しが速くなる。
4.軍事訓練・軍事演習参加
アメリカの軍事演習、RIMPAC(環太平洋合同演習)に台湾も参加を検討。台湾軍の士気も上がり、アメリカとの連携もしやすくなる。ウクライナ軍は2004年からアメリカ軍が直接訓練をしている。
5.米国公務員台湾派遣
10名のアメリカの公務員を台湾に派遣。一年目は台湾の言葉を学び、二年目は台湾の公務員と一緒に仕事をする。実際は軍事関係者。台湾とアメリカが軍事の面で一体化するための一環。
では、これでもう法案は決まりでしょうか? 今回、国防権限法はほぼ成立が決まりましたが、予算を歳出するにはもう一つ法案が必要になります。そこで、歳出が多少削られる可能性はありますが歳出法案が可決されれば、おそらく来週あたりに国防権限法が確定します。
■国防権限法から見た将来の方向性
この国防権限法を通すことで、将来の方向性はどうなるのでしょうか。おそらく以下の3点が進んでいくと思われます。
1.日米台一体化作戦
連携がよくなることになり、無駄がなくなる。
2.統合司令部
現在は日本と台湾の軍事連携する術がないが、アメリカを通すことによって日米台が軍事的に連携可能。
3.武器互換性
日本の弾薬の貯蓄はとても不足している。武器の互換性を持つことによってお互いの補給が容易になる。
東アジアでは緊張が非常に高まっている状態です。今回の国防権限法では、中国の侵略を抑止するための方向性をきちんと示してくれているのではないかと思います。
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