経済動向二題——米国株と景気 & 経団連と日銀 :240207情報
日本経済は米国の景気との相関関係がありますので、国際経済の専門家から現状の経済動向についての解説をお願いしました。
過度の楽観論は危険!正しい米国情勢の理解とは?
米国経済に対して楽観論は危険であるということです。
FOMCの12月の内容が公開されました。1月3日に公表されたのは、去年の12月12日と13日に開いたFOMCの内容です。去年は3回連続で利上げを見送ったので、市場の方の期待としては早くも3月くらいから利下げに転じてくれるのではないかと言っているのですけど、そうはならないと私は思います。このFOMCのメンバーもパウエル議長自身もインフレの完全な収束を見るまでは安易に利下げに応じないという頑固な態度をとっているので、これは変わらないでしょう。
全ての参加者が2024年内の利下げシナリオを示した経済見通しを、極めて不確実であると言っています。ただし、経済状況によっては再利上げもあり得るということです。数人のFOMC参加者は政策金利を据え置く期間は、今の想定より長くなるかもしれないと言っています。それで市場参加者に警告を発しているのです。
それから利下げを始めた後も物価が2%の目標に向かい続けると明確になるまでは、金融引き締めを続けるという点で、FOMC参加者全員の意見が一致していました。こういった話を見ると、利下げに入るのも今年後半になってからではないかと私は思います。
ここの雇用統計が思ったより良かったということは、インフラがまだ収まりきれていません。17万いくらだったのが新規雇用者数21万6000くらいの数字になってしまったので、これで景気が良すぎるということは利上げが遠のいたということで株価が下がっています。つまり利下げ観測が遠のいて下がっていくということです。去年の全般も同じようなことを繰り返していました。市場参加者の方が楽観的になって、もうすぐ金利は打ち止めというのを先走り・先取りして、その株を上げる材料にしてきたのです。今後その辺りの過剰期待で上がっている株があると危ないということになります。
また、その中でアーティフィシャル・インテリジェンス、人工知能関係の株の振るい落としも起きてくると思うのです。これは安易な景気楽観論、株高論、早期利下げ論には期待しない方がいいということを申し上げておきます。
日銀に誤った期待を持ち続ける経団連.—..金利正常化の行方
この話題が1月1日、新年の日本経済新聞の電子版に出ており「経団連は日銀に募る不安と金融正常化はまだか」というタイトルで報じられていました。金融正常化ということはマイナス金利・ゼロ金利から金利がある世界に戻ってくる、あるいは固定歩合を上げていくということです。そういう不満を持っています。
この記事によると、経団連が不満を募らせているということは、金融緩和策が一つの原因の円安で輸入コストが増大していて、賃上げの要請との間に財界が板挟みになっていると書かれているのです。
12月25日、経団連の審議委員会で日銀の植田和男総裁が講演しました。直前の現状維持と金融政策決定会合での現状維持という話をしただけでサプライズはなかったということですけど、今まで金融政策は日銀の専管事項でそれを批判するようなことは言わないのが経団連の人たちだったのです。さらに記事では「しかし、秋頃から多くの役員や幹部が、いつになったら正常化するんだと漏らすようになった。十倉雅和会長は昨年12月18日の記者会見で“早く正常化を”と踏み込んだ。不満の理由は二つある。一つは円安で輸入品の物価が大きく上がっているのに、輸出が冴えない悪い円安が長引いていることだ。大手は拠点を世界中に分散させて地産地消を進めてきた輸出増のメリットを感じ難い。ドル建ての海外売上高は円安だと、円高換算が膨らむ」と書かれています。
グローバル企業の業績が好調ですが、世界の資産投資家にとってはドルベースでの数字が全てであり、円安で円に直して利益が増えても世界の投資家は喜んでくれないという話もしていました。この人たちのこのような発言の前提となっているのが「金利を上げれば円高になる」と言っているのですが、そのようなことはありません。しかし、そのように固く信じているのです。
金利を上げて円高になる場合もありますけど、必ず円高になるわけでもなく、金利が下げていった時期というのは日本の国債はバブルが発生していました。逆に金利を上げていくと、国債バブルが破裂します。
債券投資で言えば、買っていた日本の国債を売り払ってしまう外国の投資家がいっぱい出てくるので、日本の投資家も自国の国債を売って外国の金利が下がっていく国の値段が上がっていく債券を買うことになります。
この日銀が言っている不満の「金利を上げれば自然と円高になって輸入インフレが収まる」という前提自体が間違っているのです。常に金利を下げていったら、円が強くなるとか、ドルが強くなるというわけでもありません。他の国との相対的な変化、あるいは、そこまで大きな国債市場や債権市場がない国では、そういったことも起きないのです。
確実に言えることは、日銀がゼロ金利を解除して金利を徐々に上げていったら円高になる、もしくは円安が終わるという保証は全くありません。おそらく私は逆の結果になると予想しているのですが、その辺りが日本の経団連・経済界の人たちの認識の底が非常に浅いということです。実際の購買力を示す実質賃金は、2024年も前年割れが続くとの見方が根強いというのは、その通りだと思います。普通の国民の生活は楽になってこなかったし、おそらく2024年も辛いものがあるということです。
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