すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。
中国の行方(後)——金融バブル、軍・官僚腐敗・大粛清
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午前からの続きです。
それから、次に人口減の問題の話です。中国は2021年から数えると2年連続で人口減となっています。2021年の中国の総人口14億1260万人でしたが、2022年は14億1175万人、2023年の統計人口は2024年の1月17日にアップされましたが14億900万人、すなわち2021年から2022年にかけて人口85万人が減少し、2022年から23年にかけては208万人も減少しているのです。一人っ子政策の影響もあって、これからますます下がっていくでしょう。出生率は日本と同じくらいまでのレベルになっているということです。
人口が小さくなると、それだけでGDPも小さくなります。それから高齢化ですけど、2022年から23年にかけて60歳以上の人口が1693万人も増えているということです。2023年の中国の60歳以上の人口は2億9697万人で総人口の21.1%にまで上っています。高齢者は今後どんどん増えるでしょう。中国は割とリタイアする年齢が早く、男性が60歳、ホワイトカラーの女性が55歳、ブルーカラーの女性は50歳で引退します。2024年、過去最高の2800万人が一斉にリタイアするそうです。
当然年金システムは、まもなく破綻すると言われています。2035年には1人の退職者を支えるのに2.4人の勤労者しかいないという状況になるのです。2022年、日本でも現役労働者と退職者の比率は2対1ですから、1人の退職者を2人の現役の勤労者が支えるということですけど、そういう状況に急速で中国もなっていきます。
しかし、中国の場合は富の蓄積や社会システムの準備ができていません。いわば中進国のまま、超高齢化、人口減少状態に入るということです。この中進国と言っていいのは大都市だけであって、田舎の方は低開発国状態と一緒です。そのまま、いきなり人口減と高齢化に襲われていくというので、非常に悲惨なことになると思います。こういうことが長期的に言えば、中国共産党の独裁体制を終わらせていくということになるでしょう。
それから、軍の粛清を大規模にやっています。これは軍だけではなく官僚機構が腐りきっているわけです。とにかく2023年12月29日は全人大常務委員会が9名の高級軍人の罷免を発表しています。そのうちの8名はロケット軍(ミサイル軍)の装備発展部で重きを成していた人物で、李尚福という国防大臣自体がクビになっているし、ロケット軍は司令官を初めトップ3人が全部クビになりました。
ロケット軍というのは2015年以来、習近平がやってきた軍政改革の目玉です。これは新しい軍種を作って陸海空だけではなく、ロケット軍を作りました。つまり自分の子飼いの部下ばかりを、そこに集めていたのです。習近平に諂っている習近平派の人間だけを集めたのに腐敗が酷いことになっています。
習近平派の人間が腐敗していないのかと言ったら、そのようなことはありません。習近平自身も汚職しているし、習近平派の人間も汚職しているのですが、贈収賄をやるにしても限度があるだろうということです。ロケット軍がどこまで酷いかといったら、液体燃料のところに水が詰めてありました。
そこまでやられてしまうと、軍が機能しません。地方政府の財政が赤字になり、地方で様々な反乱、ストライキ、デモが起き、失業者が増えてくれば国民の不満が爆発せざるを得ないでしょう。そういうときにデモ隊を暴動鎮圧するのは、最終的に軍です。この軍が動かないという状況であり、そこまでいったら習近平の自分の可愛い子分と言っても「お前たち、やりすぎだろう」ということでクビにせざるを得ない、粛清せざるを得ません。
今まで習近平は敵の贈収賄などの腐敗を利用・粛清して政敵たちを次々に追い落としてきました。それに成功してきたのです。かつての江沢民派の奴らが、汚職を沢山していたことを理由に解雇してきました。そして、権力を集中してきたのです。胡錦濤派の人間も共産主義青年団の人間も追い落としてきました。
そして、我が世の春となったわけですけど、自分の子分たちも親分のやっていることを見ているし、あるいは3000年来の中国の贈収賄文化は容易に変えられるものではありません。なぜ軍人になるかといったら、偉い軍事になって賄賂をもらうためです。正々堂々と軍人になって戦争で戦って、軍人としての名誉を勝ち得たいと思っている人は中国の軍隊にはいません。
ちょっとした商品にも全部賄賂を入れて、下から賄賂を取った人は、さらに自分の上の人に賄賂を渡すことによって出世しているのです。それで将軍や司令官になったら、これ以上渡す必要もなくなるので、これから大儲けしようと企むのです。特にロケット軍は統括する資本も政府の予算も大きいけど、戦争をしたいとは思っていません。
戦争になって最初にアメリカから狙われるのはロケット軍の基地です。アメリカからすれば、台湾や南シナ海辺りで米中戦争が起きたら、一番初めに叩くのはロケット軍の基地と言って間違いありません。米海軍の艦船がやられないように、まずはミサイル基地を叩くわけです。
もし米中戦争になったら、中国は初めにミサイル軍が主導しないといけないから初めに叩かれます。つまり、アメリカと戦争が実はしたくないところです。そして、沢山の賄賂を取っていたのでやり過ぎだろうということで、これではいざというときに軍が機能しないし、共産党がピンチになったときに軍が救ってくれません。
軍があるから共産党支配を保たれているわけです。どのようなデモが起きても、天安門事件のように武力で弾圧できます。その軍が機能しなくなったら終了というので、さすがの習近平も自分の可愛い部下ではあったけど、汚職のやりすぎと収賄を取りすぎということで、軍が機能しないところまで来ていたので、やむを得ず粛清せざるを得なかったのでしょう。
本当に愛国心があって国のために死ぬ覚悟で軍人になるという奴は、中国に殆どいません。みんな、お金儲けのために軍人になっているのです。習近平自身にしても愛国心がないと、私は思います。愛国心がない証拠に、彼の兄弟姉妹は全員外国に住んでいるのです。中には香港に住んでいる人もいるそうですが、香港も半分外国という感じでしょう。
今の香港は中国の一部になっていますが、姉夫婦がオーストラリアにいたり、その他の家族も全員外国に住んでいたり、本当に愛国心があったらそのようなことはしません。国の最高指導者が自分の家族を外国に住まわせているということが異常ではないでしょうか。これは彼に本当の愛国心がないという証拠だと思います。
たまたま彼は自分が権力者になって、お金儲けをする場として権力を手に入れて、金を手に入れる手段として最高権力者になりました。その闘争に勝ち抜いたというのが現在の習近平の姿でしょう。そういったことで汚職という問題から、最高指導者が大粛清をやらざるを得ないということになってきました。
この贈収賄による腐敗問題は、軍だけではないでしょう。歴代の中国の王朝を見ますと、こういった腐敗問題が起きて内部から自ら崩壊しました。外部から侵略されて崩れたというよりも、その前に内部から崩壊を始めていたのが歴代王朝の崩壊パターンです。それが現代の中国でも、いよいよ起き始めたと私は見ています。
(了)
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中国の行方(前)——金融バブル、軍・官僚腐敗・大粛清
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昨日に引き続き、中国の現状を国際政治学者に語っていただきます。詳細情報ですので、午前、午後の二回に分けます。
昨今の中国経済が不動産バブルの崩壊から金融バブルの崩壊に発展しつつあります。加えて、軍と官僚組織の腐敗が酷くなっていて、大粛清を習近平がやっているところです。粛清をやっている間は軍も機能不全で、台湾を侵略しようと思ってもできません。それは結構なことですが贈収賄が蔓延ってしまい、贈収賄文化によって現体制が自己崩壊するのではないかというのが私の考え方です。これは中国の今までのあらゆる王朝が崩壊したのと同じようなパターンだと言えます。
それと、人口減が実際に始まっているのです。高齢化も恐ろしい勢いで中国では始まっています。いずれも経済的には大きなマイナス効果です。
特に対中投資を見てみると明らかで、対中直接投資は23年以降マイナスになっています。要するに投資していた外国資本が引き上げているという段階です。これは近年では2020年の直後に起きたのですが、そこからはプラスが続いていました。もちろん、外国から資本を呼び込んで、技術を持ってきてもらって経済開発するというのが中国の経済発展のパターンでした。それが完全に逆転しています。これは以前にも申し上げましたけど「2023年初頭は中国経済が好調である」という事で外国人がお金を大量に持ってきたのですが、それが全部23年末までに引き上げているくらいです。
2023年には中国の株式時価総額が激減しまして、ピーク時から比べると6兆3000億ドル(950兆円)も吹き飛んでいます。これでも政府が圧力をかけて「大株主に株を売るな」と言っていますから、本当はもっと下がって然るべきでしょう。
中国本土の株式市場で有名なCSI300の指数は2023年まで3年連続で下落していました。ピーク時から40%あまり下落しているので、放っておけば30%くらいになってもおかしくありません。日本の日経平均でも実際そのくらい下がったわけですから、中国株価指数が50%強も下落しています。これでも政府が止めているから、どうにかなっているということです。
典型的なことを言いますと、有名なTikTokを経営するバイトダンスという会社も社員全体の1割に当たる1万人を解雇しました。それから去年の12月31日に習近平自身がテレビ演説をしたのですが、そこで労働争議も多発していることや若者の就職難を認めたのです。習近平が国内経済の低迷を公的な発言で認めるのは極めて稀なことであります。
年間鉄鋼生産量1000万t以上を誇っていた河南アシン鉄鋼という会社があったのですが、2023年11月に全面生産停止・経営破綻が起きて7000人が一挙に失業といった状況が起きているくらいです。また、2023年下半期には400ヶ所以上の事業所でストライキが発生して、数百万人規模の解雇や給料未払いが発生しています。
2022年5月13日に私は『マネーモンスター中華帝国の崩壊』という本を出版しました。それから1年7ヶ月が経って、まさにその状況になっているので、いいタイミングで出したと思います。
2021年1月1日から債務の返済が始まるということで、債務を積み上げるだけ積み上げた企業の債務返済が苦しくなりました。その瞬間をミンスキー・モーメントというのですけど、お金を借りて投資すると儲かるというものをやっていたところが、中国の不動産ディベロッパーです。ついにそれができなくなってしまって景気が逆転するのですが、それでもしばらくはいいのですけど「借りた金を返してください。不良債権です」と言われるときから、この苦しみが始まって経済の地獄が始まります。
アメリカの経済学者のミンスキーがそういう現象を発見して、膨らませていた債務を減らさないといけない瞬間から経済地獄が始まるということをミンスキー・モーメントと名付けました。
これが私は2021年1月から始まっていると言ったのですが、実は私の予測が外れてしまい、このときに家計と一般企業、非金融業の債務残高の対GDP比が、2021年の1月には220%だったのです。
2020年の7月1日には224.2%だったので、それが220.5%に下がり債務減らしが始まったかなと思ってミンスキー・モーメントは2021年の1月1日から既に始まっていると言ったのですが、間違っていて債務残高のGDP比が2023年の9月には284.5%となり、2023年12月には286.1%になっていたのです。この間、さらに60%も債務が上積みされていたというわけで、こういった問題は早く手をつけて解決するほど楽で苦しくなりません。
どうにかなるだろうと放置すればするほど、債務が積み上がってしまい、いざ減らすときには企業も個人も地獄の苦しみを味わうことになるのです。これ以上は減らせません、増やせませんという段階に来ています。
そして、中国では政府の方から「今やっている不動産開発、計画公共投資を全て地方政府に向けて全部半分にしなさい」という命令が出ているのです。今までみたいに景気が悪かった、失業者が出たというのを、この公共投資による不動産ブームの景気で引っ張っていったり、失業を吸収したりすることはできないということになります。債務減らしをやりなさいということです。
これは誰でも知っていることですが、1月29日に香港の高等裁判所が恒大集団の法的整理の決定開始を命じました。これは企業に清算命令を出したということです。今まで莫大な債務を抱えてきた企業に対して、いよいよ今ある資産を全て売り払って得たお金で全ての返済は無理でしょうけど債権者に対して返しなさいという命令を下しました。既にミンスキー・モーメントは始まったということです。
しかし、これがどういうことになるかというと、外国の債権者や外国人で恒大に金を貸している人たちは、香港だったら国際的にイギリスで裁判をやっていますから大丈夫だろうというので、香港の裁判所に頼みました。そしたら、裁判所は清算命令を出しました。
しかし、実際の資産は中国本土にあり、香港にはあまりないのです。そうすると、実際の資産を売り払って債権をどれだけ回収できるか、売り払ったお金を債権者が分配するためには、本土の裁判所の許可が必要になります。要するに中国共産党が決めるということで、実際上これでは何も決まっていません。ここではっきりしたのはミンスキー・モーメント、債務減らしが始まったということです。
この民間の一般の話だけではありません。中国では地方政府がものすごい債務(借金)を持っているのです。特に大変なのが隠れ債務だと言われてきました。隠れ債務とは融資平台というものがあって、地方政府が勝手に作っている不動産開発特別第3セクターです。金融事業体を作る第3セクターが、市場からお金を借りて調達してきて公共事業をやります。公共事業をやって工業団地を作ったり、一般用の住宅を作ったりして儲かれば、お金が入ってくるので返せていました。
この不動産ブームは完全に崩壊したため、融資平台が集めた金というのは返せません。それから地方財政もピンチに陥るわけです。実際上の仕事を全部やっているのは地方政府なので、この地方財政が全て赤字になってしまいました。31ある直轄市と省の全てが赤字になっています。一番景気の良い上海でも赤字です。
ここで省と直轄市の地方自治体・地方政府がどうやって儲けているかというと、税制のシステムが中国では完備されていないので、実は収入の7割から8割が不動産収入となっています。地方政府がどうやって不動産収入を手に入れることができるかというと、中国では土地を貸すリース料が収入になるわけです。値段を勝手につけて景気がよければ高い値段で外国資本も売ることができます。
中国は共産国ですから、土地は国有財産ですから売ることはできません。土地を売ることはできないけど、使用権を売ることができるのです。短いと30年、長くて50年・70年という単位で売ることができます。それを収入にしてきたわけです。これまで不動産ブームのときは、それが地方政府の収入源が7割でした。税金その他で入ってくる収入は3割しかなかったのです。不動産ブームの終焉、不動産バブルの崩壊ということは、地方政府の財政危機であると言えます。融資平台の方も実は借金が大きいと言われているのです。
どのくらい大きいのかということは、よくわからないのでIMFの数字で推論・試算することしか選択肢はないのですが、融資平台は全国で1万以上存在しています。これは小さな自治体でも作っているのです。融資平台の借金が隠れ債務と言われているものですが、1月17日に時事通信がIMFの試算というのを紹介しています。
融資平台の債務が66兆元、地方政府の表に出た債務が40兆元ということで合わせて、実際上の地方政府の債務は106兆元と言われているのです。この66兆元の融資平台の債務が隠れ債務と言われているものですから、106分の66で6割以上が隠れ債務となります。
この106兆元というのは、大体15兆ドルです。現在、人民元も経済が悪くて駄目になってきていて、1ドル=約7人民元ということですが、それが15兆ドルあり、このうち4割が表に出た債務で裏の隠れ債務が6割強ということになります。
先ほど言ったミンスキー・モーメントの話は民間の企業の話ですけど、地方政府自身がこれだけの巨大な債務を背負っているということです。これは、はっきり言ってどうしようもないと思います。不動産ブームのときだから回転していたわけで、これは恒大のようなことを地方政府自身がやっていたと言って良いでしょう。
これは日本のバブル崩壊のときに株価が崩壊して、土地の価格も崩壊して不動産価格が大崩壊しました。あのときは日本中で1000兆円くらいの価値が失われたのです。それで我々は、それ以降ずっと苦しんだのです。それでも数年間で解決すべき問題で、少なくとも10年でリカバリーすべきはずの大問題だったのですが、実際に日本で不動産の不況で苦しくなったのは94年から95年くらいのときでした。
それから10年後の2005年くらいには片付けるべき問題だったのが、政府自身でやっていることが間違っているものだったので片付かなかったということです。中国では、今後も長く構造的な不況が続くというのは確かだと思います。
(午後に続く)
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