赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

ヨーロッパに広がる農民ストとその背景

2024-02-26 00:00:00 | 政治見解



ヨーロッパに広がる農民ストとその背景 :240226情報


ドイツで過去最大規模の農民の抗議デモが発生し、ショルツ政権は農業関連の歳出削減措置の一部撤回に追い込まれました。農民は全ての削減措置を撤回させるべく、全国でトラクターを動員した抗議デモを行ったと伝えられています。

農民デモはドイツだけではなく、フランス、ポーランド、ルーマニア、オランダ、ベルギーなどでも広がっている模様です。

これらの背景について国際政治学者は以下のように解説しています。


ECB(欧州中央銀行)が1月25日に金利据え置きを決めましたが、ここもアメリカよりインフレが遅れて始まって、まだ進んでいるという感じで、簡単には金利引き下げに応じないという姿勢です。この農民ストのことについて、お話しいたします。


まずはドイツの方からいくのですが、去年の11月にドイツのショルツ政権のパンデミック対策の予算が600億ユーロも余っていたそうです。余っていたのは結構なことですが、それをパンデミック対策に使うのではなく、経済の脱炭素化やデジタル化のためのグリーントランスフメーションやデジタルトランスフメーション、DX、GXといった基金の方に流用しました。

そしたら、野党のキリスト教民主党・社会同盟の方が「これは憲法違反ではないのか」と言い始めて裁判をやったらところ11月15日に負けたのです。連邦憲法裁判所で予算をこのように使うと言っていたのに、それを他の目的に使ったら駄目だから違憲だと最高裁に言われました。

つまり、連邦の憲法裁判所に言われてしまうとどうしようもないということです。それで予算が使えなくなったけど、脱炭素化やデジタル化をやらないといけないから金が足りなくなりました。予算170億ユーロの穴埋めをするためにショルツ政権が目につけたのが農家向けの補助金です。

これを全廃してから資金を生み出そうと考えました。今までトラクターに関する車両税を免除してきたけど、それは他の車と同様に農家のトラクターについても自動車税を払わせるようにしたのです。

それから農業用ディーゼルエンジンの燃料に係るエルギー税についても今まで優遇措置をしてきたけど「これも廃止にする」と言ったので農民が怒りました。12月18日、ベルリンで抗議デモが起きて、1700台の大型トラクターがベルリンの主要道路を塞いで大渋滞を引き起こしたということです。

これが起きてしまったのでショルツ政権は引いて、1月4日には農業用トラクターへの車両税導入は撤回するから許してくださいと逆に言ってきました。それからディーゼル燃料の方も課税をして優遇措置をやめるけど、一気にやめるのではなくて3段階くらいに分けて徐々にやめていくので勘弁してほしいと懇願したようです。

それでも農民の組合の方は許さないと言っていて、1月4日から5日間にわたって全国各地で抗議デモを繰り広げました。いわゆる農家いじめの根本は何かと言ったら、二酸化炭素を出したらいけないからと言われているからです。ディーゼルエンジンというのは二酸化炭素を出すから駄目だろうとして、この二酸化炭素を出すことを優遇しているから優遇税廃止であると言っていく形で、農業いじめをしています。

2021年9月26日総選挙のときの社会民主党(現与党)の支持率は25.7%でしたが、このおかげで2023年11月25日の約2年後には16.0%まで下がっていました。それから、連立を組んでいる緑の党の支持率も14.8%から12.0%に下がっています。あとは連立政権を組んでいるドイツの自由民主党も11.5%から6.0%に下がったのです。随分と下がったもので、5.5%も下がったことが確認できました。社会民主党は10%近く下がっています。

一方で野党のキリスト教民主党・社会同盟の方は24.1%だったものが、30%に増えているということです。それから、私が注目しているナショナリスト政党なるものがあります。マスコミは極右と言っていますけど「ドイツのための選択肢(AfD)」は10.3%だった支持率が22.0%となり、12%も伸びているということで、この辺りはなかなか頼もしいです。

要するに、二酸化炭素カルトによって農業いじめをやったら国が揺れ動いてしまい、農民たちが怒って、それに対する反対運動を始めたということです。

これは以前オランダでも同じような動きがあって、農民が勝ったというお話をしました。フランスの方も基本は同じで、農業用ディーゼル燃料に対する減税措置の段階的廃止をやると言ったので農民が憤怒しています。

ただでさえ、食い物の値段が高いからインフレを抑えるということで、政府はスーパーケットに対して食料の値段を下げるように言ったのです。そのせいで農家から「これは自分たちの適正な価格で農産物を売れないだろう」と言いました。収入は全く伸びないで、コストばかりかかっているが農民に死ねと言っているのかということで、農民一揆的なものが起きたようです。


フランスは2010年から2020年の10年の間に農家の20%にあたる10万1000戸が廃業しています。最近、メルコスールという共同体が出てきました。これは南米南部共同市場といって、ブラジルやアルゼンチン辺りでやっているのですが、ここがEUと自由貿易協定を締結しました。

そうすると、南米のメルコスールで作ったものが入ってきます。しかも、南米の農家は農薬使用の問題やCO2規制云々でEUと同じ基準を満たすことを必要とされてないということです。そういう状況で安い農産物が入ってきたら、フランスの農民は続けていけないということで強烈なストライキをやっています。

結局、二酸化炭素カルトというものが、どの国でも農業いじめになっているのです。日本も例外ではありません。外国から日本の水田はCO2を発生させるので良くないといった酷い言いがかりまでつけられています。それぞれの国が、食料生産の基本である農業、牧畜業などをしっかりと守っていかないといけません。




お問い合わせ先 akaminekaz@gmail.com【コピペしてください】
  FBは https://www.facebook.com/akaminekaz

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする