赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

続・財務省解体論(第一回)——財務省は経済成長が嫌い

2024-12-02 00:00:00 | 政治見解
続・財務省解体論(第一回)——財務省は経済成長が嫌い




財務省が発足したのが2001年(平成13年)です。行政事業の効率化等を目的に中央省庁再編がされた際に、一部権限を旧大蔵省から他の機関へ移し、新たに設立されたのが財務省です。

ただ、財務省が発足して以来、日本国民は一度も好景気になった印象はありません。バブル崩壊からの「失われた30年」、この原因は財務省の緊縮財政にあると思われます。

しかも、現在、日本には1.2京(12000兆)円資産あるのにも関わらず、「103万円の壁」を取り除こうとしても「7兆円の税収さがる」といって目下の総務官僚に言わしています。国民の幸福は眼中にないのです。

そんな、財務省について、「財務省解体論」の続編を、二回にわたりお届けします。もちろん特別に掲載許可を頂いています。(なお、本講演録は岸田首相在任期間に収録されたものです。)


GDP世界第5位に転落した日本政府の失敗

失われた30年という言葉があります。「失われた30年」の意味する ところは一体何なのかというと、ずっと長期にわたって景気の悪い状況が続いているということなのです。

景気が悪い状況が続いているということは、経済が成長しない状況が続いているということですよね。GDPがプラス成長になっていかない。なったとしても、ごくわずか。場合によってはマイナス成長という状況が、この30年近くにわたって続いているということなん です。

では、一体これはいっから始まったのかというと、1991年1月。これはバブルが崩壊した年です。とすると、言ってみれば失われた時代は33年間にわたって続いている。あまり そういう認識を持たれている方は少ないんですけれども、これは経済史上、極めて異例な、あるいは異常なことが起こっているんだということを、ぜひ認識していただきたいのです。

なぜ異常だと言えるのかというと、これも改めて言うまでもなく、景気あるいは経済というのは循環するものです。よくなったり悪くなったりするものであるにもかかわらず、ずっと悪い状況が33年間続いているということは、異常なことが起こっているんです。

なぜそんな異常な状況が起こっているのかというと、コンパクトに言うとすると、それはデフレスパイラルに陥ったからです。つまり、悪い物価下落がどんどん進んでいったというところになっているんだろうと思うんですけれども、なぜそうなったのかというと、やはり有効需要が足りないということです。

つまり、供給能力に比べて、需要が少ない。需要が圧倒的に少ない。だから価額下落をし、そ して企業業績は悪化し、賃金が上がっていかない。むしろ下落する。結果的に需要がまた減っていくという、このスパイラルに陥っていたのが最大の原因であることは、これは誰の目にも明らかですね。

だとすると、そこの段階において普通だったら何をするのか。先ほど、有効需要という キーワードを用いましたけれども、これは経済の原理原則から考えて有効需要の創出、つまりプロダクトですね。これをやっていかない限り、景気は良くなりっこないのです。

つまり、需要不足が引き起こしている「失われた30年」なわけですから、その有効需要をつ くり出していくということをしなければ、景気は絶対に良くなっていかないわけなんですね。あるいは、言葉を換えて言うと、デフレからは脱却できません。ですから、普通だったら何をそこでやるのかといったら、有効需要の創出ということで需要というものを作れ のは、二つのカテゴリーしかありませんよね。

一つは民間セクター、もう一つは公的セクター。このデフレスパイラルに陥っているということは、個人消費であるとか、企業の 備投資が少ないというわけですから、公的セクターが有効需要を作り出さなければ誰も作り出せない。つまり、財政出動しかないのです。

本来、この33年間の中でやっておくべきことは何だったのかというと、公的セクター、すなわち国が需要を創出してくる、需要をプロダクトするということ以外に景気を良くする方法はなかったということなんですね。

だから未来永劫やれというわけじゃないんですよ。総需要が供給能力を上回った段階で、自律的に、ナチュラルに景気が拡大傾向に向かって民間需要に火が付きますから、民間セクターが消費を増やしていったり投資を増やしていったりしますから、そうなるまでに一時的に公的セクターが需要創出ということをすべきだった。

それをやってこなかったというのが、最大の問題点だったわけですね。日本経済が。その結果、GDPは世界第5位に沈むと。世界各国が成長している中で、まったく成長できないという状況になってしまったのは、その需要が少なかった。それだけではなくて、公的セクターがっくり出すべき、やるべきことをやってこなかったということに 尽きるのです。


財政再建を優先するあまり経済成長を犠牲にした財務省

にもかかわらず、少なくとも2015年以降、こういったキャップをはめて有効需要の創出 については徹底的に妨害をしてきた。ですから、それが2024年の今年になって、まだ相変 わらずデフレ基調が続き、物価は上がってますよ。物価が上がることが景気が良くなると いうことではありません。

この物価の上昇というのは、あらゆる物価上昇。つまり、一昨年2月のロシア軍のウクライナ侵攻を受けての、原材料価格の高騰、エネルギー価格の高 による物価上昇ですから、これは企業業績は良くならない。ですから賃上げを伴わないのです。

そういった点で言うと、悪い物価上昇しかできていないものですから、ベースのところではデフレ基調が続いているということになる。

ここから着実に脱却するためには、有効需要をつくり出さなければならない。そのためには財政出動をしなければならない。もう答えは決まっているのに、経済の原理原則として答えは一つしかないにもかかわらず、 まったくやってこなかった。そして、それは明らかになっているだけでも2015年以降、意 図的にそれをしてこなかったということになるということが、一番の問題の本質なので す。

つまり、財務省は、財政再建を優先するあまり、経済成長を犠牲にした、と言ってしまったら言い 過ぎなのかもしれませんけれども、要するに、優先順位をつけた時に経済成長、景気が良くなる、あるいは国民の生活が豊かになる、あるいは賃金・ボーナスが上がっていくことより前に、財政再建のほうに軍配を上げてしまった。

優先順位のトッププライオリティをつけてしまったというのが、今日まで継続している――今日だけじゃありませんね。また しても3年縛りというのがかけられてしまったわけですから、予算案で言うと2025年、 2026、2027年と、この3カ年の予算に関してはこの新たな縛りがかけられてしまった。

別に皆さん方にがっくりさせるような、あるいは暗い気持ちにさせるようなことをしたいがために、この話をしているわけじゃありませんよ。

何か良いことも言いたいわけなのですが、今回の件に関して言うと巡り合わせ、つまり今自民党の中でこういったことを激しく議論しているタイミングではなかったというところもあるのかもしれませんが、巡り合わせの悪さというところもあったのかもしれませんけれども、結果的に「骨太の方針2024【※1】」でこんなキャップがはめられてしまって、また3年間の縛り【※2】という状況に なってしまった。

【※1】骨太の方針:政府の経済財政運営と改革の基本方針を指し、翌年度の予算編成の方向性を示す文書。正式名称は「経済財政運営と改革の基本方針」で「骨太の方針」という通称で呼ばれている。骨太の方針は、毎年6月に閣議決定され、国民にとっては政府が重要視する課題や今後の予算投入の傾向を知る材料となる。

【※2】3年間の縛り:2015年の骨太の方針以来、財務省はその骨太の方針の中に「非社保障費の純増は、3年間で1000億円以内」という3年縛りを、それとは分からないような形でひそかに潜り込ませていた。この縛りによって、例えば教育無償化の拡充、国土強靭化といった政策を進めようとしても、政策的選択の幅がまったくなくなった。これがバレたのは7年後の2022年6月3日の政務調査会。なお、今年6月に策定された「骨太の方針2025」にも、「非社保障費の純増は、3年間で1000億円以内」という3年縛りは継続された。

(つづく)

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