赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

続・財務省解体論(第二回)——賃金上昇を妨害する財務省の工作

2024-12-03 00:00:00 | 政治見解
続・財務省解体論(第二回)——賃金上昇を妨害する財務省の工作




昨日の続きです。特別に許可を頂いて掲載しています。(なお、本講演録は岸田首相在任期間に収録されたものです。)


その一方で、岸田政権は何を言っているのかというと、継続的・持続的賃上げですよ。持続的な賃上げ、どうやってやるんですかね、これを。経済成長も望めないような状況の中で、持続的な賃上げを実現していくというのを今年の「骨太の方針」、つまり「骨太の方針2024」で高らかに歌い上げているんです。 

要するに、「骨太の方針2024」の最大のポイントは、この持続的な賃上げです。一番の大きなポイントは。そのために何をやるのか。本当にそれが実現できるのかというところを考えてみた時に、まったく具体的な中身がない。それをうたっているだけ。うたっているだけじゃないにしても、大企業を中心に政府主導でケツを引っぱたいて、賃上げし ろ、賃上げしろと言っているに過ぎない。

では、その一方で中小零細企業はどうするのか、小規模事業者はどうするのかという具体的な処方箋がまったく描けていないという中で、持続的な賃上げをうたいあげたとし て、それはただ単純に「絵に描いた餅」になってしまうのではないのかなと、私は思いま す。

ですから、そういった良い非常に評価すべき目標があるにもかかわらず,その上台の部分で——上台の部分というのは、いわゆるこのデフレ脱却をどう進めていくのか、景気経済をどう良くしていくのかというところが、非常に空っぽなんです。本来やるべきことが 何もできない。


財務省のサボタージュ

財務省の、あえて言わせていただくと、サボタージュと妨害工作によって 何もできないという状況、そういう縛りをかけておいて、結果的に景気を良くして、言ってみれば持続的な賃上げを実現していくという。はっきり言って「絵に描いた餅」という 状況になってしまっているわけなんですね。

ただ、そのあたりも財務官僚のよくやるところなんですけれども、どうなんですかね。 じゃあ岸田政権がいつまでもつのかと考えてみた時に、今年の「骨太の方針」はやりたい放題だったのかなと。

はっきり申し上げて、無理難題みたいな、無茶な形で取りまとめた としても、将来的にですよ。つまり、首相の首のすげ替えが起こったあと、新首相が来た としても、それは前任者の問題だから責任は岸田首相が負うべきであって、後任としては 知らぬ存ぜぬになるでしょう。

いや、そして事務方、つまり財務省サイドも「いや、前任 の首相がこういう方向で臨みたいと言ったので、こうなりました」みたいなところで、また言い出すのでしょう。

となると、やりたい放題になるのです。政権が弱体化してくる。つまり、岸田政権が風 前のともしび、いつ総理の首がすげ替えられてもおかしくないような、今そういう状況で すよね。

そういう状況の中で決められた「骨太の方針」だからこそ、財務省もやりたい放題というか、意向のままに、何の修正も行われることなく、考えたとおりのものが反映されてしまったという。我々にとってみると非常についていない状況になってしまいました よね。

ただ、このついていないということだけでは、事は済まされません。このことによつ て、少なくとも先ほど来から申し上げているような財政出動、景気を何とか安定させていくためにも、景気を拡大していくためにも公的セクターに一部分担ってほしいところではあるのですが、それが期待できない以上、民間セクターが頑張らざるを得ないという状況になってしまった。

そういった意味で言うと、今後の景気動向もあまり大きく期待はでき ないところですけれども、その中で民間がどう動いていくのかというところに大いに期待 をするにしても、じゃあこれから3年縛り、その後どうなっていくのか。この積極財政派 と緊縮財政派のバトルは、はたしてどうなっていくのかというところが注目になっていくんですけれども。 

ただ、今回どうですかね。やはり積極財政派が大きな力を発揮できなかったというところも、やはり安倍首相が亡くなったということも大きな影響をもたらしているのではないか。これは間違いなく大きな影響はあります。やはりその最大の後ろ盾だったのが、安倍元首相ですからね。

この安倍さんですら、3年間の1,000億円縛り【※1】というのは知りませんで した。総理時代には気づくことはありませんでした。あの安倍さんですら気づくことがで なかったわけですから、ポスト岸田さんに誰が就くのか分かりませんけれども、そこは 言ってみればあるべき方向にそれを誘導することができるのか、期待する私たちとして は、その新首相に期待することができるのかというと、それもまた難しいところではない のかなと、そう思います。

【※1】3年間の縛り2015年の骨太の方針以来、財務省はその骨太の方針の中に「非社保障費の純増は、3年間で1000億円以内」という3年縛りを、それとは分からないような形でひそかに潜り込ませていた。この縛りによって、例えば教育無償化の拡充、国土強靭化といった政策を進めようとしても、政策的選択の幅がまったくなくなった。これがバレたのは7年後の2022年6月3日の政務調査会。なお、今年6月に策定された「骨太の方針2025」にも、「非社保障費の純増は、3年間で1000億円以内」という3年縛りは継続された。


財務省解体の方策

ですから、財務省の上限キャップ問題というのをやはり正しく理解して、声を上げていく、あるいは、それに対して異論を差し挟んでいる、あるいはそれに対して抵抗している、そういう国会議員を支援していくこと以外に、この構造を覆していく、壊していくと いうことは不可能なのではないかと。

ただ、幸いなことに、自民党の中にも積極財政派に属する議員は100名を超えております。しかし、残念なことに、当選回数が若い方、当選回数 が少ない方が中心です。せいぜいいっても当選回数4回とか、5回の方がほとんどです。

ほとんどの方はもっと若手の議員によって占められているわけなのですが、党内において影響力があまり大きくない。党内においてあまり影響力が大きくないということは、メディアのほうも軽く見て、あまりそういった人たちの主張であるとか指摘について、報じられる こともありません。

ですから、皆さん方の目に触れるチャンスもないと思うんですけれども、今日話をさせていただいたキーワードを基に、新聞とかテレビは期待できないので、皆さん方ご自身が 自ら動くことによって情報を検索していただきたいなと。

それによって気が付くこともあ ろうかと思いますので。こういったところに気が付かないと、いつのまにかこの日本経済 というのは、とんでもないところに連れて行かれてしまうのではないか。

また新たな3年 間、1,000億円のキャップというのがほぼほぼ決まったということが、一体何をもたら すのか。非常に大きなマイナスの影響をもたらすことは間違いありません。それをこの 3年間でひっくり返すということは、不可能です。はっきり申し上げて、おそらく不可能 です。

では、将来的にまた4年後の話をするというのも、また私としては忍びないことなんですけれども、これを繰り返さないためにはどうしたらいいのか。あるいは、本当にこの3 年間の!,000億円キャップを、もうこの3年間にわたって引つ繰り返すことはできないのか、どうなのか。これをやるためにはどうしたらいいのか。

相当なエネルギーは必要だけ れども、何をやったらいいのかというところも、今後の課題として出てくるのではないのかなと、そんなふうに思います。

とりあえず、今日はこの3年間で1,000億円のキャップについて、そしてそのもたらす影響についてお話しさせていただきました。加えて大きな構造としては、予算編成作業がー 体どういう形で行われて、そこに財務省はどういう形で関わっているのかについても、お話しさせていただきました。

(了)
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