コラム(477):
メディアの経済主張を聞くと地獄を見ることになる
(中国問題を連載中ですが、ちょっと気がかりな話がありましたので急遽これを取り上げます)
経済がわからない毎日新聞の日銀批判
「一般国民は知識ないから政治に意見言ったらいけない」が社風の毎日新聞が、なぜか「知識のない一般国民」に世論調査を行いました。その内容は「日銀の金融緩和政策について、どう思いますか」で、調査結果はなぜか自社の新聞には公表せず、ブルームバーグが代わりに報じました。
――「見直すべきだ」が55%、「続けるべきだ」は22%、「分からない」が22%だった。――
ブルームバーグは、「黒田日銀に逆風、世論調査で過半数が金融緩和『変更すべきだ』」として「円安と物価高に苦しむ国民から支持を失いつつある」と結論づけています。
基本的に、日銀の金融政策に対する国民の関心はそれほど高くないと思うのですが、メディアが連日「円安がやばい、値上げラッシュで生活が苦しい」と連呼していますので、政府や日銀の金融政策が変われば、なんとかなるのではないかという素人感覚を利用した世論調査結果だと思います。
しかし、この調査こそ、毎日新聞の社風である「素人は政治に口出すべきではない」の典型的な事例で、「何もわからない人に聞いても何もわからない」究極の迷路だと思いますし、そもそも、円高の時は「円高が悪い」、円安になると「円安が悪い」と騒ぐしか能がないメディアが、わかったように経済を論じて事情を知らない国民を誤誘導する方が異常だと思います。
それに、自社の経営もうまくやれず、資本金41.5億を1億円に減資して中小企業に転落した毎日新聞が、世論調査を誘導して国家の経営に口を挟もうとすること自体、何を勘違いしているのかと言わざるをえません。それこそ「自社の経営もうまくできない素人が政治や経済に口をはさんではいけない」のです。
メディアの金融引き締め論は国民をローン地獄に落とす
また、質問自体、毎日新聞が素人の域を出ていない証拠だと思います。金融緩和とは、市場に出回るお金の供給量を増やして経済を活発化させ、景気回復を図る金融政策のことです。政策金利の引き下げ・資産の買い上げ等などで行います。しかし、金利の引き下げは無限ではありません。これ以上金利を下げることができないときに有効な施策が、金融機関の保有する国債等を買い上げる「量的緩和」があります。
これと反対側にあるのが金融の引き締めで、政策金利の引き上げ・資金の供給量の縮小等、お金を借りにくくすることでインフレを抑制しようというもので、ものすごいインフレにあるアメリカがこの政策をとっています。ちなみにアメリカにいるうちの長女が言うには、今米国で年収1000万であっても低所得者になるとのこと。
さて、話を戻して、現在、メディアが言い続けているのは「物価高になっているのは円安が原因で、物価に応じた金利ももらえない。その原因は日銀が金融緩和政策を維持しているから」という考え方です。それを真に受けると、毎日新聞が誘導した大半の「金融緩和を見直すべきだ」意見に帰着し、「金融引き締め」が必要ということになります。
一見、もっともらしくは見えるのですが、金融の引き締めをしたらさらに一般国民の生活が苦しくなるという事実は見過ごされています。なぜなら、金融の引き締めとは利上げをするということであり、当たり前のですが様々な金利が上昇するということになるからです。具体的には、個人では住宅や自動車ローンの返済増、中小企業では借入金の返済増につながるのです。
例えば、住宅ローン、日々の返済金額が増加し、計算外の支出が家計を圧迫してしまうこと、利息の返済増により本来の返済年数では返済が終わらないことなどが発生します。デフレマインドの浸透により、僅かな値上げすら許容できない訳ですから、想定外の大幅な支出増に阿鼻叫喚することでしょう。これは自動車ローンなども同様です。
それよりも景気に大きな影響を与えるのは企業の返済増と将来への投資減です。中小企業の長期借入金も、多くの企業が想定していない金利上昇による返済金額増加によって、各企業の財務を悪化させ、倒産する企業も増加することでしょう。また、優良企業であっても借入金利の上昇は新規投資の減少をもたらすことでしょう。
借入金の返済増というマイナスの増加と、将来の利益のための投資減は企業の成長の妨げとなり、景気が好調とはいえない状況下で行うべきではありません。
大企業であっても明確な景気上昇が見えない中で、金利を上昇させれば設備投資などを控えることになり、企業規模が大きい分、より強く景気を下押しすることになるでしょう。また、設備投資などを控え、支出を抑えるようになれば新規採用人数を減少し、リストラが発生することも予見されます。
円安を悪とする風潮はやめて最大のチャンスととらえる
皮肉なことに経済の本質を分からず、ただ利上げをすべきと論じている人はむしろその利上げによる悪影響を受けてしまうのです。このように景気が上向いていないタイミングでの利上げは経済面では、企業の業績悪化、それに伴う雇用の減少、賃金減少をもたらしてしまいます。そのような状況でローンなどの支出が増加し、雇用は安定せず賃金も増えるどころか減少圧力に晒されるわけですから、個人から企業、経済に至るまで大きなダメージを負うことになります。
ヤフコメ欄で以下のコメントがありました。正しい考え方だと思います。
金融緩和とはすなわち生活を支援するものですから、それを引き締めれば生活が更に苦しくなる訳です。生活が苦しいのであれば絶対に認めてはいけません。どうしてもやるというのであれば極端な減税をして生活支援をする確約が無くてはいけません。
減税が無いならば金融緩和は続ける、金融引き締めをするのであれば極端な減税をする、この二択しか選択肢はありません。もしも金融引き締めをした上で極端な減税が無ければ日本経済は大打撃を受け、失業者が溢れ生活支援雇用創出で数兆円という莫大なお金が必要になり、防衛費用増額分など簡単に上回るお金が必要になります。
結局、メディアの考え方は、利上げをすれば物価高騰要因となっている円安は収まるだろうということなのでしょう。でもそうすると、ますます景気は悪化するわけで、メディアの広告収入も減るということには気が付いていません。これ、メディアの自殺願望ではないでしょうか。
そもそも、円安が悪だとする昨今のメディアの誘導は間違っていますし、円安からなぜ利上げの話題になるのかもおかしな話です。
しかし、円安は、ものづくり日本の再生のチャンスとなります。高度経済成長期は円安でした。日本全体がインフレを前提とした企業経営に生まれ変われば、物価と賃金が上がるという普通の経済が、30年ぶりに実現するかもしれないのです。
メディアのいうことと常に反対側を考えることこそ、正しい生き方に思えてなりません。
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