赤峰和彦の 『 日本と国際社会の真相 』

すでに生起して戻ることのできない変化、重大な影響力をもつ変化でありながら一般には認識されていない変化について分析します。

③中国のロビー活動の実態——釧路と苫小牧は目をつけられている

2024-12-07 00:00:00 | 政治見解
③中国のロビー活動の実態
——釧路と苫小牧は目をつけられている





(続きです——本講演録は、特別に許可を頂いて公表いたしております。)


釧路と苫小牧は中国に目をつけられている

中国海運最大手、中国海洋運輸集団、COSCOグループというのがあるんですけれども、これは日本にもよく来ています。

そこの会長が中国がワシントンでのロビー活動を活発化させた頃、北京の中米投資協力フォーラムに集まった中国人経営者らを前に、「アメリカで事業を成功させようと思ったら、現地の商習慣と法律を理解する必要がある。我が社はアメリカで2社のロビー企業と契約を結んでいる」と、この手の内を明かしているんですね。明かすというよりも、先に述べたアメリカ国内のロビー活動公開法により、そしてこの外国代理人登録法により衆目の知るところになっておって、今さら隠す必要もなかったためだと思われます。

このCOSCOグループは、日本だと北海道の釧路と苫小牧に目をつけているから、これは実は大変なことなのです。なぜ大変かというと、中国が進める巨大経済圏構想、一帯一 路というのがありますね。One Belt One Way。この東の拠点とするためんなんですね。

最近ではこの一帯一路、高利貸しのように途上国を借金漬けにして、重要インフラ、港湾 とか道路、電力施設、こういったものを債務のかたに取るなどして、この評判の悪さから もう一帯一路を使おうとしないんですね。

中国のネットで検索しても。これを隠しているわけですけれども、釧路と苫小牧を一帯一路の拠点、北極圏に抜ける氷上のシルクロード 中国側は行ってるんですが、そこの重要拠点として、中国共産党の先兵としてCOSCO グループを使って租界化を図っているんです。

実際のところ。どれだけ在京の中国大使館、札幌領事館は釧路市長以下、そして苫小牧市長以下、面会に来てあれしろこれしろ言っていることか、ここではちよつと話が逸れるので深入りしませんけれども、これは大変なことなんです。

津軽海峡というのは狭いんですけれども、あそこは公海になっていまして、そこを北朝鮮の清津、羅津という、長期借りきっている北朝鮮の港から、中国は津軽海峡を抜けて苫小牧、釧路で一服していろいろ燃料なりを取り込んで、北極海に抜けていくと。そうすればマラッカ海峡とか南ルートよりもチョークポイントを超えなくて済みますし、3分の1ぐらいの距離で金も4分の1ぐらいに抑えられるというので、北極ルート、氷上のシルクロー ドと彼らは言っているんですけれども、非常に有効活用できるということから、この COSCOグループを使って釧路と苫小牧が狙われているというのは、そういうことなんですね。


Kストリート

話が若干逸れましたけれども、アメリカのロビー会社が集まるホワイトハウスの北側 に、Kストリートというのがあるんですね。この中でも最大手として一目置かれているの が、パットンボックス社です。ワシントンは東西に走る通りにはアルファベットの名前が つけられていまして、東から12ストリート、13、14ストリートとなっていて、アルファベッ卜のほうは下のほうからABCDEFGとなっていくんですね。斜めに走る通りというのは、 日本大使館などがひしめき合うマサチューセッツ通りとか、コネチカット通りとか、州の名前がつけられているんですね。1回覚えてしまうと覚えやすい町なのでございます。 

話は本題から逸れますけれども、ワシントン特派員として私がいたナショナルプレスクラブというのがあるんですけれども、ナショナルプレス・ビルディング、これは40KFストリートと言って、タクシーに乗る時は「40KF Please」でそこへ連れていってもらえるという、非常に便利な住所になっています。

東西に走るKストリート、ホワイトハウスのやや北側にある所です。パットン・ボッグス社。中国のロビー。ちなみに、パックスストラテジーズ社というのが台湾系なんですね。この2つはF16戦闘機の台湾への売却をめぐって火 花を散らすわけですけれども、このパットン・ボッグス社、Webサイトの顧客リストには 在米中国大使館や中国商務省、国務院、新聞弁公室などが並んでおります。

アメリカの司法省の公開資料によりますと、中国大使館はパットン社に月額3万5,000ドル、約540万 円、月額ですよ。こういった顧問料を支払っていることが分かっております。

このパットン・ボッグス社は中国金属、鉱物、化学商会にサービスを提供し、アメリカ の上院と下院の合同税務委員会に食い込むとともに、中国機械、電子製品、輸出入商会は 2010年に税務委員会のほか、上院の財政委員会で影響力を行使していることが分かっております。

中国は長らく冷戦時代などの国際情勢もあって、ワシントン独特の風習であるロビー活動と距離を置いてきたんですね。だから本格化したのが2010年というわけなんですけれども。議会や政府のOBが退職後にロビー会社に就職しまして、人脈を生かして古い友人らに働きかけるという人脈文化。

これは中国共産党政権も同じなんですけれども、先の大戦中の中国国民政府から現在の台湾政府のようなロビー活動の経験も、中国共産党政権にはございません。ロビー会社を契約を結んで顧問料を払って、堂々と圧力をかけてもらうという、そういう文化になじまなかったことも背景にあるんですね。

これに対して台湾当局は、早くからロビーの重要性に気づき、Kストリートの9社以上の 顧問契約を結んでいます。

中国がロビー活動に積極的に乗り出すきっかけとなったのは、 アメリカの台湾への武器売却問題です。これは先ほど申し上げたF16戦闘機の関係です ね。まさに私が特派員としてワシントンにいて、アメリカと中国のG2などと浮かれていた オバマ政権時代、この台湾に最先端の戦闘機F16を売るかどうかの判断を迫られて、オバ マ政権というのはフラフラと煮え切らない態度を取り続けるんですね。結局売らないことで決着している。

何をやってるんだと、私は思いました。売らないというこの決断に至るまでの半年の間、中国ロビーと台湾ロビーの水面下の戦いというのが、激しく繰り広げられたわけなんですね。

中国の軍拡で中台両岸の軍事力がバランスを欠いて、これが台湾併呑という中国の野心を播き立てかねないということから、最新の改良型F16戦闘機を売却すべきだという台湾の主張に対しまして、中国側は「台湾問題は中国の内政問題であり、台湾へのF16売却は まかりならん」という強硬姿勢を取り続けました。

中台を下支えしていたのが、中国側が先のパットン・ボッグス社やホーガンロベルズという会社、そして台湾側がオリオンストラテジ一社、パークストラテジー社の2社が中心になるわけです。台湾ロビーの先頭に立ったのは、ダマト元上院議員が率いるロビー会社 でパークストラテジ一社です。

私自身、守備範囲のホワイトハウスのほか、国防総省というアメリカ政府を主に取材しておりましたので、こういったロビイストの活動については 正直、手が回らなかったので、このF16をめぐるロビー活動に詳しい日経新聞の記事を抜粋しながら紹介します。

ダマト氏というのは、かつての同僚に手紙を書いて、大使館に相当するんですけれども、台北経済文化代表処という、事実上の台湾のアメリカ大使館が企画する台湾施設ツアーに参加することを促していたということです。台湾に行ってくれ、 ぜひ台湾を見てほしいということですね。

このダマト氏が日系のダニエル・イノウエ氏、これは亡くなってしまいましたけれど も、昔の日系人部隊ですね。先の大戦の時のイタリア戦線で大活躍しました。この上院議員に宛てた手紙の内容なんですけれども、「上院議員時代、あなたは」、あなたというのは、ダニエル・イノウエ氏ですね。「あなたは、私のもっとも親愛なる友人の一人だった。 もしこの視察ツアーに参加していただければ、非常に私は恩義に感じるだろう」というものだったそうです。

台湾と足並みを揃えてF16の購入や売却を訴えたのは、戦闘機の製造元であるロッキー ド・マーチン社のロビイストです。さらにF16の工場があるテキサス州選出の上下両院の 議員らも加わって、コーニン上院議員というのは新型F16を台湾に売れば、テキサスに2 万3,000人の雇用を生み出すと訴えました。この「雇用が増える」というのは、アメリカ ではいろいろな局面で、かなりの殺し文句になってくるんですね。

台湾ロビーはあわせて181人の下院議員、45人の上院議員、ほぼ半数ですね。この署名を集めてオバマ大統領に届けております。高額のロビー活動費に見合う活動だったといえるでしょう。オバマさんはうんと言いませんでしたけどもね。

これに対して、中国ロビーのパットン・ボッグス社。これは米中関係の重要性と、売却 が実現した際の米中経済に与える悪影響について、説いて回ったということです。これ、米中経済関係だけじゃないですね。政治もおかしくなりますよね。

(つづく)
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