黒の系譜というもののほかに 通勤列車のすし詰め状態を列車を模して
椅子とつり革 だけで スペースを区切り男も女も全員ヌードで写して
これをライフワークの一つにしたかった。これは結構前から温めていた
企画であくまでもアートとしてである。
「人間は服を着るからほかの動物を見下す。或いはその服1枚だけで文明だと
思い込む馬鹿らしさ」という風刺と、もしそれが芸術作品として認めないなら
わざと「権力が猥褻物だと」認めない部分をモザイクで隠す。
そうするとモザイクだらけになる訳で、それはそれで「隠そうとする馬鹿らしさ」が
浮き彫りになるのではないかと考えていた。
モデル4~50人を使って様々なシュチエーションを写すことができればと
思っていた。かっこをつけて言えば「人間の日常を本来の姿を藝術として
昇華させた」だけだと、それで金銭的な事、機材、人脈がやっと揃った
ところでいよいよ現実味が出てきた時に 自分の体が動かなくなった。
言葉で説明するとわかりにくいかもしれないし、わからなくてもいいのだが
本当に これを世に問うたらどんな反応があるのか?猥褻という危うい定義を
ぶっ壊したかったし、さらにいえば、同じ位置で扇子で隠すとか、立ち方を
変えて国家が攻められないようにぎりぎりのところでほかの人が隠すように
立たせることも考えていた。結局頓挫したままで、こんなことを考える人は
いるかもしれないが、当局との軋轢をきらい多分日本ではまだ誰もいないと
思う。