筆者より 女性固有の疾病等があります。殆どが実話に近いのでご容赦ください
順風満帆に美奈子と付き合いを深めてきたので話が なぜ衝撃のラスト
になるのか?大体検討がつくと思うのですがその予想が当たるかどうか・・・?
この頃 美奈子の親と結んだ年棒性を利用して、つまり一日拘束を理由に
撮影は簡単なものにして昼間会う事ができた。
「ここに、住むので・・いろいろ必要なものは美奈の気に入ったもので良いよ」
やっと、新しいマンションを紹介することができた。最上階でエレベーターを
降りると 1フロアが全部我が家、建築写真を写した時に気に入ってしまい
ここは高いんですかー的なところからはじまり、大幅値引きと住む予定が特になく
当面販売のためのモデルルームに使う事などを条件に手に入れたもので、その後
2年間の賃貸として貸していた。家賃は月50万。仕事がこけたら、収入減に
なるかもなんて軽いノリで買ったものでした。で退去した後は販売会社が
全部リフォームし直してくれましたので、まぁ綺麗だと思うけれど。
「えー、こんなに広いの、あールーフバルコニーから海が見えるー」
「えっと、これ隠し財産です。」(あと残り少ないので強制的に省きます筆者)
それと 私と母が住む家をちらっと案内して、あちこち買い物にいって・・。
あっという間に一日が終わった。私は撮影があるので美奈子は
電車で帰路に就いた。
撮影は例の外資系の処で行ったが、1カットだけだった。
なんだかんだ言って幸せ自慢したいだけじゃんと思うかもしれないけれど、
確かにここまでは はっきり言って幸せでした。 自分がまさか家庭をもてる
なんて考えていなかった。それは意固地な信念といってもよく、そこにあの手
この手で風を吹き込んでくれたのが美奈子だった。でも、仕事を優先する
為に変則的な時間にしか会えなかったし、口では文句は言われたがちゃんと
我慢してついてきてくれたので、それだけでもありがたいことだった。
「仕事と私とどっちが大事なの」なんて言われても仕方がないのにそういう
ことも言わなかった。でも、おかげで私も世帯をそして子供をもてるというか
人並みの幸せを形にできるんだと思うとうれしかったしありがたかったのだ。
いろいろな意味で感謝をしたし、サラリーマン的発想を教えてくれたのも
美奈であった。ただ、あのお父さんはクライアントとしては、様々な恩恵を
してくれたのだが、私生活ではあまりお会いしたくないタイプだなーと
いうのが素直なところである。でも結婚したら二人だけで生活すると
宣言しておいたので、それはあまり問題ではないのだが。美奈子と昼間
会ってから 2週間位経った時の深夜に美奈子の母親 から電話がきた。
この電話が ことのはじまりだった。
「嶌田さん 娘は・・知らせないでといっていましたが、検査中で
、ごめんなさい。あの・・腹痛がおさまらなくて・・救急外来なんです。」
相当パニックになっていたので
病院の名前を聞いて車でかっとんだ。車中で電話を繋いで状況を聞いていた。
気のせいか赤信号ばかりに引っかかるので、無視できる処は無視していった。電話を繋い
だままにしてもらっていたが、どうやら子宮筋腫で全摘をしなければならず
正式な検査をしないと断言できないが、どうも転移がありそうなので
悪性の場合を考えておく事、また、命を考えれば手術に踏み切りたいが、
開いてみて転移があるとしたら再発のリスク、それ以前に命にかかわる
状態だという状態だから、家族で相談して
なるべく早期に結論をだして欲しいこと、意識はあるので取りあえず数日間は
待つが 状態の急変などがあれば即手術する事に同意して欲しいなどなど・・
なぜこんなになるまで放置していたのか?と言われていること等が聞き取れた。
とりあえずは、点滴で痛みと抗生剤などでしのぐが、
本人にそれを説明するかどうかを考えておかないと精神的なショックが
大きい事や子供は当然諦めることなどを医師から告げられていた。
私も聞いていて「嘘だ」と言いたくなることばかりだった。
というところで、やっと着いた。医師の言葉ひとつひとつが耳を疑う事ばかりで
美奈は母親と病院にいっているから大丈夫だといっていたはずなのになんで!
子供ができたみたいだよといっていたのに。説明を聞いた美奈子の両親が部屋から
出てきた。「で美奈子はいまどこですか」「あと一つ検査をして・・とりあえず
入院だそうだ、実は・・美奈子は・・」とお父さんが話を始めた。
内容は電話で聞いたことを伝えても話をやめない。
「嶌田君、生涯子供はできないそうだ。」はぁ?だから何?とイラついた。
「子供がどうのこうのよりなによりも美奈が、いや美奈子さんが元気になれば
それで充分です」
場所をわきまえず少し感情的になってしまった。「あ、済みませんでした」
それは私より娘を気遣う親の思いを踏みにじった私の考えが幼すぎたと気づいた。
「それよりも、本人はまだ知らないんですよね」
と確認して、「方針が決まるまではとりあえず盲腸だから・・・手術をするか
薬で散らすかという事にしましょう。どうですか?お辛いとは思いますが話を
合わせておいた方が美奈子さんの為だから」その時通りがかりの看護婦さんに、
「検査をしている鈴木美奈子さんは検査後は?ICUですか?それとも・・・」と
聞いたもらったところ、ICUではないとのことだったので個室で
空いているところがあればそこにと伝えた。程なくして美奈子が
ストレッチャーに寝せられて点滴を何本も付けてでてきた。
医師の言葉が嘘のように思えた。「僕は後から部屋に行きます」
一刻でも早く会いたかったが、やはり両親との時間が必要だと
思ったからである。
やっぱり吐いたあの時に強引に医者に連れて行けば良かった・・・
とひたすら自分の馬鹿さ加減が悔しく心に刺さった。 しかし
初診であれだけのことをずけずけというものだろうか?
それに、なぜICUではなかったのか?誤診?
それとも・・もう・・その先は考えたくなかった。しばらくして、電話をいれて
もうすぐ私が着くと言って欲しいことを伝え、途中で改めてあって様子を聞いた。
ようやく面会謝絶というカードが下げられた美奈の部屋に入った。もしかしたら
寝ているかもしれない時間だが、点滴を交換するために起きていた。
「ママなの?」「違うし医師でもないけれどよろしいですか」と言いながら
美奈のベッドの横に座った。「あれ?どうしたの・・ママが言ったの?」
「いや、たまたま時間があったんで電話していたけどでないし・・・。
というか嘘はつかないと約束しているのでいうけれど、電話でないので
かけ直したら母上がでてさぁー、お腹が痛かったんでしょ、そういう時は
救急車呼ぶのが一番だ。」
「ごめんね、心配かけて・・・。ママが言ってたんだけど盲腸で
痛かったらしい」
「そうかぁ~痛いって聞いたことがあるよ。それよりも、いらない臓器
だからオペでとってもらう?その方が退院は早くできるけれど・・
多分薬で散らしていくみたい」
「そうなんだ、今痛くないよ。」
「そうか、って、点滴に痛み止めがあるし。ともかく
早く元気にならないとね。疲れただろう・・。眠たいなら寝て良いよ。僕の大事な
お嫁さん、さん」「うわぁ~、うれしいぃ~よー美奈幸せぇ~じゃあ私の大事な
愛おしい旦那様」「なんで、旦那さんやねん、お婿さんにしてよ、」
「そうだね」
「美奈子、お前に会えてというかアプローチしてくれなかったら、俺は多分生涯
ぷーさんだろうと思っていたから、会った時に心臓がドキントしたけど、俺からは
何も言えなかったと思うんだ。だから・・うれしかったんよ。だけど、特別な人
だと思っていたから逆に最初はなんもいえなかった。」「何言ってるの?なんだか
それじゃぁ~お別れみたいだよぅ」しまった、と思ったこういう時に何をいって
いるんだか・・。「ねぇそれよりさー、いっその事切ってもらってというのは?」
「切ったら跡が残るから・・なんかやだ・・ビキニ履けないのは嫌なの」
「あのそういえば 俺泳げないっていったけ。スキューバは小学生の頃から
やってたけど潜るのができてでも泳げないのだ」
「かっこ悪いなー、でも別に泳ぐわけではなからいいけど。」
「ついでに言えば俺には運動神経がないみたい。サッカーのボールも
空振りするので・・・。」「あまり笑わせないで、お腹にひびくから痛くなる」
「そうだった。とりあえずは元気で安心したので俺帰るよ。なんか邪魔しに来た
みたいだ・・。先生の話を聞いて、ちゃんと食べて寝てはやくてもゆっくりでも
良いから、体を大事にして、へんな我慢しないように。あぁもう5時だ、、お休み
だかおはようだか微妙な時間だけど、あ、それとお母さまは多分入院の際に必要な
ものを揃えていると思うので、たぶんもうすぐ来るかも。僕は仕事の途中で来たので
お会いできないけれどよろしくお伝えください。」「はぁいわかりました。」
「んじゃぁね」「ありがとう、いつもの・・は」「あの・・たばこ吸いどおしで
きたのでかなり・・じゃぁ息を吸わないように。ほっぺたに」そういえば個室だから
まして病院だから 結構臭いが残りそうなことに改めて気づき部屋からあわてて
でたけれど多分相当タバコの臭いが残ったかもしれない・。
知らない不安と知る不安どうしたらよいのか、朝の光が眩しかったので
いつもの 濃いサングラスをかけたのだがレンズが汚れているのか、ぼやけて
見えた。ったく・・・とグラサンを外して拭こうと下をみたら、涙がレンズの
上に落ちた。意気地なしーぃー!自分が情けなくてしかたがなかった。
まだ、何も決まったわけではないし、決めつけてはいけない事だ。救命救急
ならばー即ち命に関わるならばオペもすぐに行うだろうし、あるいはICUで
経過を観察という運びになると思う。それと、得てして最悪の結論を話して
おくというのもよく聞く話だ。最悪といえば絶命だがそれ以下はないので
これは、訴訟社会に日本も舵を切り始めたための防衛策なのだろう。
ただ、私の家系はがんの発病率が多い家系で、危篤の時に見覚えがない
直属の人の最後に立ち会わされた事があった。あの電気ショックで蘇生を試みる
場面にも出くわしたことがあった。私はあんなに人間の体がはねる光景だけは
記憶していた。仮に蘇生したとしても、また苦しい闘病生活が待っているのだと
思ったのだ。なので 現在も臓器提供カードをもっているが、生きたいと頑張る人に
もし自分が脳死になったらすぐに必要な臓器を使ってもらえればありがたいと
思う。勿論年齢は違うが、がんの場合はかなり痩せる。今日の美奈子は2週間前と
比べても激やせなどはなかった。そもそも私は神羅万象を悲観的に考えることは
少なかったのだ。むしろ、仕事においても攻めの姿勢で臨んで来た訳で、今の
忙しさに結実していることになる。ただ、今日のドクターの話の内容を信じる
事などできなかった。よしんば信じるにたることだとしたら緊急手術をしない
のも説明と矛盾している。開腹してともかく腫瘍の部位は摘出して、後の事は
後で解決方法を探ればよいのでは?とも思ったのである。
仕事があったのでおんぼろスタジオに戻った時に、そういえば地元の医師会会長の
写真を写したこと、確か産婦人科医だった事を思い出した。電話でいきさつを
話してみて、どうすれば良いのかとかそんなにいきなり宣告をするものかとか
また、そういう病院は信じられるのかなどを聞いてみた。先生の答えは
「君の気持はわかった。しかし残念ながら、女性ならではの臓器疾患については
理解が足りないということを理解しなさい。ただひとついえることは、
悪性で他の臓器にも浸潤しているという可能性が大きいならば、
私も緊急でオペをしないということだよ。オペによる本人の身体的負担は
相当なものだ。さらに、場合によっては全身麻酔 (全麻)ではない可能性も
あり、そうすると患者本人は当然医師の声は聞こえるので、そこでつまり
術中に自分の病気を知る可能性がある。これは、とても
酷なことだということはわかるね。だから、その部位にどれだけ浸潤して
いるのかや生理学的な所見、検査をしてもし切らなければならないならば、
全麻で行うほうがよいということだ。と同時にメンタル面のサポートも
必要になる。現時点では、クランケ(患者)は知らないのならば
まずはそのまま検査を続けてもらい、同時に
根治可能か、或いは・・という面を考えていく。私だとしても、家族には相応の
リスクの周知、これは医師として辛いことだが、オブラートに包んでおくよりも
家族には早めに説明すると思う。勿論疾病をあらゆる手段で取り除くことを考えるが」
とのことだった。「そうですか、そうですね」としか答えられなかった。
「桶は桶屋ということだから。医師会の歴代の会長の写真を君に頼んで久しいと
思うが、プロの仕事と同じだということ。プロはプロたる所以がある。だから、
それはいろいろな世界で同じだということ。いいかぃ、ともかく、プロの仕事を
信用することが大事だから、君がそんなに弱音を吐くには相応の理由があることは
わかる、よくわかる、しかしね、そんな状態ならば、クランケに会っては駄目だ。
合わないほうが良い。言葉に出さなくても伝わってしまう。やめなさい。」
「やめられない・・・です。」「だろうね、ならば、心を強く持ってまず医師の
説明を信じること。それは私が医師だからではない。信じることと受け入れることは
別な問題だ。その中で試行錯誤していくのは仕方がない。それが人間であり
そして疾病である。ともかく、苦しいのは患者(クランケ)次に家族達、そして
医師も然りだと是非理解して欲しいと思う。カンサー(ガン)だと決められたら
また 電話をくれるかい?そのクランケを君は心底愛しているんだろう。
またその相手も同じだと思うのだが どうだろうか」「はい、結婚します」
「だったら尚のこと、君が動揺すればすぐにわかってしまうものだ。いいね」
「ありがとうございました」と電話をきった。
そうだよなぁ~ まだ正式には何も決まっていないのだから、平常心で
いかなきゃならないのだ。そう心のスイッチが切り替わった。
しかも、救命救急という部署であり、現時点ではオペも集中治療室での
治療はない。命にかかわる場合は有無を言わさずにオペをするはずで
それはまぬがれている。ということは、即ち即命に関わる状態ではないと
考えても間違いではないのかもしれない。
それに子供ができなければできないで構わない。あえて作らない人達も
いるわけだし、ただ、正直にいえば30歳を目前にした時に、ある意味
愛するという封印していた感情が美奈子と付き合い初めて芽生えた
余りにも遅まきの青春ではあるが、大事な女性を万が一にでも失うと
考えたらその先はどうなるのか考えも及ばない位に美奈子に惚れている
自分に改めて気が付いた。