ある超大手有名企業の商品撮影をロケで行っていた事がある。
物撮りに関しては基本的にアシスタントは使わなかった。私の癖というか、自分以外の人間が
セッティング等も含めて同じ空間にいると邪魔だったからだ。
ただ機材が膨大な量になるので、これを運ぶだけでかなり大変だったが。
この企業は会議室を一部屋キープしてくれていたので、朝から晩までそこで撮影をしていたが、
どうしても別の撮影とリンクしてしまうことがあり、そういう時は機材は置きっぱなしで、2日間で、、、、
となることもあった。そういうことも在る程の忙しさであったが、撮影機材が増える理由は、こういう時に
、一度引き上げなくても良いのが助かるので致し方がない。
この企業との付き合いは長くてこういう便宜をはかってくれたのだ。物撮り以外にも社長や専務などの
ポートレート等もしていたので、時たま撮影現場を見に来たりしていた。
「なるほどすごくたいへんなのだね」などといって、「じゃぁ私はこれで。」と言って帰って行くこともしばし。
2ヶ月に一度は、こういう物撮り(商品撮影)の仕事をくれていたし、ギャランティもなかなか良かった。
確か冬頃だったと思う。「いきなりで失礼だが君はまだ独身なのかな」と社長に聞かれた事がある。
仕事の話というよりも、そういう話は仕事が終わってからにしてくれ~~」と思っていたが、
「はいそうですが」と返事をした。家人に話したら「見学したいというのだが、どうだろうか」との仰せ。
嫌ですと言える訳もなく、次回の撮影の時に撮影風景を見に来ることになった。
見てどうするのかな?とは思ったが、見られて困る話ではないしクライアント様さまなので、約束の通り
見学に来た。秘書とは違う女性が一緒であった。まさか愛人・・・。にしては幾らなんでも年が若そうだし
なんて思っていると「私の三女で◯☓だ。どうしても、写真を仕事にしたいと言ってきかんのだよ」
「◯☓です、こんにちは。専属のカメラマンさんですね少し見学していていいですか」といわれた。
専属????ではないんですが・・・・とは言わないかったけれど、「機材がすごいですねっ」から始まり
結局三〇分ほどいろんな説明をした。いくら世間の常識がない私でもやはり社長の子供に非礼はできぬ
「こういう撮影はいつも一人でされるのですか」と聞かれたので、たまにはアシスタントを使いますよ。
と答えたら「私では駄目ですか?」と言われた。ほんとうに写真が好きなようではあったが、
「機材重たいですよ」「時間がかかることもありますし・・終わるのが深夜とかになるのです」
「愛想は言いませんし、と言うよりこういう撮影の時は殆どしゃべりません」「ギャラ安いですよ」などと
防衛にでたが、「君はとてもよく仕事をしてくれている。何よりも真面目で真摯だから、期間は短くても
良いので、少し厳しい世界だということを解らせたいのだ、どうだろうか」といわれれば、これは
断れないじゃん。という強引な方法でアシスタントとして使う事になったのだが、多分1~2回で辞めると
言い出す事を期待していた。
ところが、なかなか知識もあり、明るい性格で、世間ずれしていないし、一生懸命にフォローをしてくれた
とても良い子であった。後から聞いた話(専務曰く)社長は娘さんを君の生涯のアシスタントにしたいらしい
とういうことだったそうだ。写真をやめざるをえなくなったので巻き込まなくてで良かったと思う。