営業はしたことがないのです。
誰だか知らない人に話をするのは 億劫で苦手でした。
もし営業ができたらなぁとも思ったこともあるけれど カメラマンボウの初期の段階では
大学の友人達が仕事を持ち込んでくれることもありました。
大磯プリンスホテルに近接する、昭和初期のドイツ人が建てた建物を
取り壊すので、全てを写真に写して保存したい。これは友人の関係者の依頼でした
海を見下ろす絶景の丘に建てられた、多分外国人が想像したであろう日本が
凝縮されていて、それは即ち日本人から見れば、滑稽なものでもありますが
和洋折衷という言葉そのものの建物で、ある意味驚きの連続でした。
ガラズも建てた時のそのままのもので、昔のガラスは実はかなり歪んでいるのですが
それがなんとも良い風情をかもしだしていましたし、客間の天井にはすべて正方形の
枠に絵がかかれていました。壊してしまうのには勿体無いなぁーと、担当者と話を
しながら、ここだけは絶対に残したいところをききました。
撮影は あえて自然光 つまり西湘の光を、活かすために、畳ほどのレフ板で
光を補いながら撮影。予定では1軒の家ですが5日間毎日6時間程度の撮影と
組みましたが、写していくと新たな発見があり、実質1周間は通いました
最後に全景を写したのですが、この時はもう邪魔枝は切っておいてもらいました。
苦労したのはやはり 天井の絵を一枚ずつ写していく時で、これは根気の勝負で
この時はすでに68とシノゴを使っていましたのですが、500カット位になってしまいました
なので予算もありシノゴを使う分は私の自腹で写しました。
滅多にない撮影となりましたが、聞けば宣教師の家だったそうです。
人が歩くところはすり減った廊下などのディテールも再現できたので、利益はないけれど
記憶に残った撮影でした。