
★逸翁美術館 サイト
『わびとサビはどう違う?』 ※9月6日(日)まで ※7月13日(月)~22日(水)展示替え休館
☆マスク着用、入館料の支払いはキャッシュレス決済を推奨
新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言の発令の影響で、当初の予定より7週間遅れての開催。
「侘び寂び(わびサビ)」は茶道を習っていると、必ず耳にするコトバ。
珠光から紹鴎、利休へと引き継がれた茶の湯は「侘茶(わびちゃ)」とも称される。
「わび」と「さび(サビ)」は厳密には違うんだろうなぁと思ってはいるとけれど、突き詰めて考えたことはなかった。
今回は今更ながら両者の違いについて、考える機会を与えてくれる展覧会。
逸翁美術館のホームページ(およびチラシ)に書かれている紹介文によると
余白の多い簡略な筆遣いの絵。割れてヒビが入った茶碗。不完全な物。Incomplete。
けれども他の物に無い固有の姿に、かえって面白さが感じられる。それが「わび」。
燻し銀。煤けた古竹。時を経て色味や肌合いが変質した素材。無常。Impermanent。
けれども新品ピカピカの物には無い、落ち着いた味わいが感じられる。それが「さび」。
いずれも本来ネガティヴな評価であったものに対し、ポジティヴに楽しむ心を働かせています。
そんな逆転の発想が共通することから「わびさび」として一緒に使われることになったのでしょう。
↑以上、抜粋
「なるほどなぁ」と思った。
展示は「わび」のものと「サビ」のものが交互に並ぶ。
まず、わび。
(伝)牧谿の蓮根図はシンプルな印象。平安時代の土器花入は古いだけあって原始的。
南蛮手付茶入「いも」(宗旦による銘)と南蛮芋頭水指は見立て遣いだけあって、確かに茶道具としては不完全ともいえる。
宋胡録の歪平茶碗も同じ。
サビ。
(伝)西行の落葉切。まぁ、鎌倉時代というか、平安時代末期だから確かに「古き良き」もの。
古銅王子形水瓶。まぁ、唐時代のものだからねぇ。 高麗青銅水瓶も11世紀だしなぁ。
鎌倉時代の細長春日卓に、桃山時代の大きな菊蒔絵丸鏡巣など、茶道具にどう用いられたかもわからない古いもののあれこれにクラクラした。
角を曲がれば江戸時代の「わび」。ちょっとホッとした。
コーナーの紹介に「ゆがみはゆかい」(歪みは愉快)「荒れは渋い」。 なーるほど。(でも、余計に解釈が難しく感じた)
呉春の茄子図に和む。
斗々屋平茶碗(←全然平たくない)に柿の蔕茶碗(深山路)、信楽の掛花入に灰器、備前の花入に緋襷水指。確かにここらへんは私も納得できる侘び茶の道具。
伊賀の丸水指 藤村庸軒銘「雪の朝」 姥口のとこがかわいい。
黄瀬戸の伯庵茶碗。たしかに侘びているけど、五島美術館やサンリツ服部美術館の伯庵茶碗の印象がつよく、「伯庵ぽくない」と思ってしまう。
(伯庵の定義がいまいちわからない)
信楽流釉花入は渋くて、ユニーク。
丹波の黒釉へこみ徳利。黒光りしてる。凹んだところが富士山の宝永噴火でできた陥没したところみたい。
備前茶碗「瀞」は光悦ぽい形。
伊賀胴締水指、尾形光琳作の白楽茶碗「大堰川」(器底に「光悦」の彫名あり)
信楽の沓茶碗、信楽大やぶれ手鉢。古唐津石はぜ茶碗。
池田綱政(絵)と池田光政(賛)による画賛「月燕図」←展示リストでは後期展示だけど、期間がずれたことで季節を考慮して前期展示に変更か?
「此春もふるすをたづねて山がつの やどをわすれぬつばくろめ哉」
※綱政は備前岡山藩の2代目藩主、光政は綱政の父で播磨姫路藩の3代目藩主。慶長から寛永にかけての時代
朝鮮唐津耳付花入「わびすけ」。片耳は焼成の際にとれてしまったらしい。
朝鮮唐津耳付茶入「解脱」。迫力ある~
赤筒茶碗「こがらし」 本阿弥光甫作 薄い赤
備前緋襷の瓢箪形振出。振出にしては大きい。
備前建水はお茶碗でも使えそう。
松平不昧公による手造面箱香合。ごつい印象。玉造で焼かれたらしい。でも、赤楽みたいな印象も受ける。
粉引雨漏茶碗 遠州銘「時雨」
逆側の展示エリアで移動すると「さび」のコーナー。「剥げは温和」「あせ(褪せ)は枯淡」 ムズカシイ
茶釜が数点。
古天命新形霰松竹文窯。
面取筒釜(辻与次郎作)、四方雲龍釜。ともに小さい。煎茶用か。 形も雅。
四方雲龍釜も小さいねぇ。
大西清雪の道庵風炉、奥平了保の刷毛目姥口釜。二人は兄弟だけあって、いい取り合わせ。
根来塗の道具の数々。(サビなんだぁ。これ)
蒔絵棗の数々、竹花入、唐物の籐組の花入や炭斗、竹茶杓。
最後は二畳の茶室の展示室。(わびの趣向)
大燈国師の墨蹟、長次郎の黒楽茶碗
だんだん、何が「わび」なのか、「サビ」なのか混乱してきて、最後はただお道具を見て「渋いなぁ」「侘びてるなぁ」と思っていた。
最後に解説パネルの前にいって、読んだ。
「わび」とは、物の不足や不自由を肯定し、簡素な暮らしを積極的に楽しんで心の充足を見出す。
という一文にストンをナットクできるものがあった。
なんか、今の「新しい生活様式」みたい。
姿形が整っていないのを「足らない」と感じるのではなく、むしろポジティブシンキングで個性的なものとして愛でる感覚だね。
私自身の生活もそう。
不足もあるし、不自由さもある。やっていることは極めて簡素で質素だ。(てか、地味だ)
だけど、そんな環境でさえ、いつのまにかポジティブに楽しんでいる自分がいて、満足はしてないけど充足した心持ちにはなっている。
対して「サビ」とは閑寂な境地や枯淡な趣き、古びた味わい。 うーむムズカシイ。
だけど、たとえで妙にナットク。「デニム加工」
あ、そうか。デニムをわざと汚したり、キズをつけてビンテージな風合いを出す、アレかぁ。めっちゃ、わかる。
ということで、面白かった。
ちなみに、この美術館は美術館にしては珍しくキャッシュレス決済を推奨している。
「どれだけアプリが使えるのか」と思いつつ、受付に立ったら、あちこちに利用可能なアプリの案内が貼ってあって、目移り。
自分が使っているアプリのシールがすぐにわかなくて、仕方なく交通系のICカードで支払った。(さすがは鉄道系の阪急の美術館!とか思いつつ)
会計が済んだあとで、ふいに探していたアプリの読み取りコードを発見。
あ~あっ!
帰りがけにグッズを買った。このときは○○payのアプリを利用。
推奨するだけあって、よくよく見るとほとんどのキャッシュレス決済には対応しているみたい。
さすがは阪急グループ。やることがカンペキ。
(でも、種類が多すぎてわかりづらいのが玉に瑕)
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