「悟りの怪」(さとりの化け物) 「会津百話」より 「昔話の旅 語りの旅」 野村 純一
山の小屋に、じいさまがひとりでいやったど。
そうしたら、へたな奴が寄って来て、マンダリマンダリしていると。
そうしたら、気味(きんび)が悪(わり)くなって、囲炉裏(ゆるり)さ燃していた。
燃えほたを取って、叩(はた)くべぇとすると、
「にしゃ、その燃えほたでおれを叩(はた)くべぇと思う気持ちだなあ」
火箸を掴むと、
「にしゃ、その火箸でおれを叩(はた)くべぇと思う気持ちだなあ」
そう言(ゆ)ったけど、何を掴んでも、じっき悟られてしまうもんだから、
じいさまは仕方がねぇもんだから、黙って曲げ物を始めやったど。
そうしたら、曲げ物が手がらターンとはずれて、ぶっ飛んで、
へたな奴の額(ひてい)にパチーンとぶっかったど。
そうしたら、へたな奴は、たまげて逃げて行ってしまったど。
それは悟りと言(ゆ)うものだったと。
山の小屋に、じいさまがひとりでいやったど。
そうしたら、へたな奴が寄って来て、マンダリマンダリしていると。
そうしたら、気味(きんび)が悪(わり)くなって、囲炉裏(ゆるり)さ燃していた。
燃えほたを取って、叩(はた)くべぇとすると、
「にしゃ、その燃えほたでおれを叩(はた)くべぇと思う気持ちだなあ」
火箸を掴むと、
「にしゃ、その火箸でおれを叩(はた)くべぇと思う気持ちだなあ」
そう言(ゆ)ったけど、何を掴んでも、じっき悟られてしまうもんだから、
じいさまは仕方がねぇもんだから、黙って曲げ物を始めやったど。
そうしたら、曲げ物が手がらターンとはずれて、ぶっ飛んで、
へたな奴の額(ひてい)にパチーンとぶっかったど。
そうしたら、へたな奴は、たまげて逃げて行ってしまったど。
それは悟りと言(ゆ)うものだったと。