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「山姥と桶屋」(さとりの化け物) 関 敬吾

2013年06月22日 00時36分27秒 | 民話(昔話)
 「山姥と桶屋」(さとりの化け物)  日本昔話集成 第二部 本格昔話 3 所載   関 敬吾

兵庫県城崎郡三橋村

 昔、男があったげな。
山の奥へ炭焼きに行って、薪を集めて来て、炭を焼いておった。
親爺は深い山の中で自分一人だけなので、気味が悪くなって来て、
(恐いもんが出なけりゃよいが)と、思っていた。
そうすると、どこからか、「恐いもんが出なけりゃよいが」・・・という声がして、天狗が出て来た。
親爺は天狗が出て来たんで、恐ろしうて恐ろしうて、(どないして逃げらええか)と、思っとると、
天狗はまた「どないして逃げたらええか」と言って、親爺の思っとることを皆言い当てる。
そいで、親爺はもうぼんやりしてしもうた。
その折、親爺の持っとった牛の鼻づる木が弾けて、火をとばして天狗にかかった。
天狗は人間とは思わぬことをするものだと言い残して向こうへ行ってしまった。  

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岩手県岩手郡渋沢村

 彦太郎という男が山奥で箕の輪曲げをしていると、山姥が来て火にあたる。
男は火炭をかけてやろう、これはことだ、鉈(なた)で斬ってやろう、怪物に食われる、と、
それぞれ考えたことを山姥がいちいち言い当てる。
男はあきれて輪を曲げて火にあぶっていると弾けて怪物に火灰がかかる。
山姥は不覚をしたと言って逃げ、笹原に倒れている。              

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秋田県雲沢村

 樏作(かんじきつくり)が樏(かんじき)を曲げていると、
毎晩、(たぬき)が来て、炉端で睾丸を炙(あぶ)る。
炙っていた輪がはじけ睾丸に当たる。
狸はさとりそこねたと言って逃げる。                        

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山梨県上九一色村

 炭焼きが炭竈(かまど)の傍(はた)で、火を燃やしていると、さとりが来て焚き火にあたる。
樵夫(きこり)が怖い、ぐずぐずしていると取って食われる。
逃げるだけ逃げようと思うと、おもいがそれを言い当てる。
どうなろうと諦めようと思うと、それも当てる。
仕方なく木を伐っていると、食おうと狙っていたが、銊(のこぎり?)が木瘤に当たって、
おもいの目に当たる。
おもいは思うことより思わぬことの方が恐いと言って逃げる。           

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新潟県南蒲原郡葛巻村

 炭焼きが山でカンジキの竹を炙って曲げていると、天狗が来て傍に寝る。
炭焼きがおっかないヤツが来たもんだ、何とかして斧で不意打ちにして殺さないと、
自分が取り殺されると思うと、天狗にみな言い当てられる。
その時、竹が弾けて天狗に熱灰がかかる。
人間というヤツは思わんことをするさかい油断はならぬと言って逃げる。    

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長野県北安曇

 炭焼きが山で仕事をしていると美女が来て蕎麦を拵えてやろうと木の切り株でのし始める。
恐ろしいな斧で打ち殺してやろうと思うと、すぐ当てる。
縄で縛ろうと思うと、女を縛るなんかむごいことをするものではないと言う。
炭焼きはカンジキを作ろうとぢしゃの木を火にあぶると片手がはづれ火が飛び散る。
女はの尻尾を出して逃げる。                           

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徳島県某地

 桶屋が雪の朝、仕事をしていると、一つ目一本足の怪物が来る。
桶屋はこれが山父というものかと思うと、その通りに言い当てる。
人の思うことよく知っているなと思うと、その通りに言う。
桶屋は手が震え、輪竹を弾き出すと竹が不意に化け物の顔に当たる。
思わぬことをする、ここにおればどんな目にあわされるか知れぬと逃げる。        

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熊本県天草郡

 猟師が山で焚き火をしていると妙なヤツが来る。
これが話に聞いた山わらだろうと思うと、それを言い当てる。
早く帰ればよいがと思うと、それも言い当てる。
困って、薪をくべようとして膝小僧で折ると木片が山わらの目玉に飛び込む。
人間は思わぬことをする野郎だと言って逃げる。