「さとりのお化け」 小国町昔話集 2 ネットより
むかしあったけど。
炭焼おやじ、夜、山で退屈なもんだし、このような風に、ただいても、もったいないと思って、
『カンジキ曲げ』しったど。―カンジキって知ってござんべ―。
そして一生懸命曲げてたば、旅人ぁ来たずもな。
「こんばんわ」て来たなだ。
(こんな山の中さな、なんだべまず。何かの化けたものには相違ないな)
と、こう思ったど。
「ほう、なんだ、おやじ、おれば何かに化けたんだと思ったべ」
と、こういうずもの。
(いよいよもって、これは化けもんだ)
そう思ったど。
「いや、やっぱり、いよいよもって、化けもんだと思ったな」
こう言うずものな。
そのうちにおやじも恐っかなくなって来たもんだから、ちと太めのカンジキ曲げっだな、
手はずして、ピンと跳ねたずも。そうすっど、その旅人どこさ、太っとい方飛んで行って、
その鼻柱のあたりビンとはじいてしまったど。
そうしたば、キャーッと逃げて行ったど。
鼻血たらしたらし…。
まぁそうする気でないぐしたもんだから、悟れねぇがったそうだ。
そうして夜明けてから、
「やれやれ、ええがった」
と思って、血たらした後たどってみたど。
そしたば雪の上さポタポタと垂(た)ってだ血辿(たど)って行ってみたら、穴あったど。
そして村の衆頼んで行って掘ってみたば、古ぼけたムジナであったど。
それする気でなくしたもんだから、ふいに急所やらっで、うなっていたどこ、捕(と)らっだけど。
むかしとーびん。
〈話者 川崎みさを〉
むかしあったけど。
炭焼おやじ、夜、山で退屈なもんだし、このような風に、ただいても、もったいないと思って、
『カンジキ曲げ』しったど。―カンジキって知ってござんべ―。
そして一生懸命曲げてたば、旅人ぁ来たずもな。
「こんばんわ」て来たなだ。
(こんな山の中さな、なんだべまず。何かの化けたものには相違ないな)
と、こう思ったど。
「ほう、なんだ、おやじ、おれば何かに化けたんだと思ったべ」
と、こういうずもの。
(いよいよもって、これは化けもんだ)
そう思ったど。
「いや、やっぱり、いよいよもって、化けもんだと思ったな」
こう言うずものな。
そのうちにおやじも恐っかなくなって来たもんだから、ちと太めのカンジキ曲げっだな、
手はずして、ピンと跳ねたずも。そうすっど、その旅人どこさ、太っとい方飛んで行って、
その鼻柱のあたりビンとはじいてしまったど。
そうしたば、キャーッと逃げて行ったど。
鼻血たらしたらし…。
まぁそうする気でないぐしたもんだから、悟れねぇがったそうだ。
そうして夜明けてから、
「やれやれ、ええがった」
と思って、血たらした後たどってみたど。
そしたば雪の上さポタポタと垂(た)ってだ血辿(たど)って行ってみたら、穴あったど。
そして村の衆頼んで行って掘ってみたば、古ぼけたムジナであったど。
それする気でなくしたもんだから、ふいに急所やらっで、うなっていたどこ、捕(と)らっだけど。
むかしとーびん。
〈話者 川崎みさを〉