民話 語り手と聞き手が紡ぎあげる世界

語り手のわたしと聞き手のあなたが
一緒の時間、空間を過ごす。まさに一期一会。

「さとりの化け物」 リメイクby akira  

2013年06月24日 00時15分23秒 | 民話(昔話)
 「さとりの化け物」リメイクby akira  福島県南会津郡 「日本昔話百選」所載  稲田浩二・和子  

 じゃ、今日は 「さとりの化け物」ってハナシ やっか。

 おれが ちっちゃい時、ばあちゃんから聞いたハナシだ。
ほんとかうそか わかんねぇハナシだけど ほんとのことだと思って 聞かなきゃ なんね。

 ざっと むかし あったと。

 ある 雪の降る 夜のことだったと。
山ん中の小屋で、じぃさまがひとり 火に当たって いらしたと。

 すっと、なんか 得体の知れない化け物が 音も立てずに やってきて、
じぃさまの前に どっかと すわりこんだと。

 じぇ!じぃさまは驚いて、
(なんだ、こいつ、得体の知れねえ化け物(もん)だな。・・・おれのこと 取って食うつもりか)
って、思っていると、
その化け物が「おめぇ!『なんだ、こいつ、得体の知れねえ化け物だな。・・・
おれのこと 取って食うつもりか』って、思っているな」って、言ったんだと。

 じぇじぇ!じぃさまは 自分の 思っていることを 言い当てられたんで、たまげて、
(なんだ、こいつ、人の思ってることが わかんのか。・・・こいつが 悟りの化け物っていうヤツか)
って、思っていると、
その化け物が「おめぇ!『なんだ、こいつ、人の思ってることが わかんのか。
・・・こいつが 悟りの化け物っていうヤツか』って、思っているな」って、言ったんだと。

 じぇじぇじぇ!じぃさまは また 思っていることを 言い当てられたんで、たんまげて、
(なんだ、こいつ、うす気味の悪い化け物だな、早く どっか行って くんねぇかな)って、思っていると、
その化け物が「おめぇ!『なんだ、こいつ、うす気味の悪い化け物だな、
早く どっか行って くんねぇかな』って、思っているな」って、言いやがったんだと。

 じぇじぇじぇじぇ!じぃさまは またまた 思ってることを 言い当てられたんで、おったまげて、
(うーーっ、なにも考えないようにしなくっちゃ、うーーっ、あー、ダメだ、できね、・・・どうすっぺ。
まっ、しょうがねえ、火ぃでも燃(も)して 暖(あ)ったかくしてやっか。
暖(あ)ったかくなれば、出てっくかもしんねぇ)ってんで、薪(まき)を くべてやっと、

 その化け物が「おめぇ!・・・」って、言った時に、
「パチッ」って、火がはぜて、その化け物の 鼻ッ柱あたりを「ピシッ」って、はじいたと。

 すっと、その化け物は、
「アチッ、アチチチ・・・いやぁ、人間てのは、思ってもいないことをしやがる。
あー、おっかねぇ、おっかねぇ」って、言いながら、こそこそと 山の方へ 逃げて行ったと。

 こんじぇ ひとっつ さけえ もうした。