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「葬式は、要らない」 その14 島田 裕巳

2017年08月04日 00時06分44秒 | 生活信条

 「葬式は、要らない」 その14 島田 裕巳(ひろみ)1953年生まれ 幻冬舎新書 2010年

 村社会の成立と祖先崇拝 その2 P-75

 とくに江戸時代に入って、「寺請制度」が導入されたことは大きな意味をもった。
 すべての村人は、キリシタンや日蓮宗の不受不施派など、当時は危険視され禁教とされた宗教集団の信者でない証に、村内にある寺の檀家になることを強制された。各寺院は行政組織の末端に位置づけられ、いわば役所の戸籍係の役割を果すようになる。それによって、村人は必ずや仏教式の葬式をしなければならなくなり、戒名も授けられた。これを契機に、仏教式の葬式が庶民の間に浸透する。

 これは権力による信仰の強制であるわけだが、村人の側にもそうした信仰を受け入れる必然性があった。
 それぞれの村人は、必ずどこかの家に所属していた。家自体が共同体の性格をもち、家単位で水田を所有するとともに、家族全体が共同で耕作にあたった。家は生産の拠点であるだけではなく、後継者を確保する場であり、個人の生存は家によって支えられた。そうして家を創設した初代を中心とする先祖を供養する必要が生まれ、家の信仰として祖先崇拝が確立された。

 近世には、村全体は氏神によってまとまり、村を構成するそれぞれの家は祖先、祖霊によってまとまるという信仰体制が築き上げられた。寺請制度が受容されていくのも、それが祖先崇拝の信仰にうまく適合したからである。