不埒な天国 ~Il paradiso irragionevole

道理だけでは進めない世界で、じたばたした生き様を晒すのも一興

Il dubbio sul piccolo Crocifisso

2009-01-27 13:31:02 | アート・文化

41センチのキリスト磔刑像。
2008年12月23日から
ローマのMontecitorio(下院議会)に展示され
約1ヶ月で20000人以上の入場者数を記録した小さな作品は
若きミケランジェロの作品といわれています。

ミケランジェロの作品で最も最近落札されたのは
26センチ×16,4センチの
「Addolorata(嘆きの聖母)」の習作デッサンで
2001年にサザビーズで1020万ユーロで売買されました。
それに対して今回イタリア国家が購入した
ミケランジェロ作の彫刻はたったの325万ユーロ。

この破格値の裏に潜む「疑惑」。

このお買い得品の出所はフィレンツェのとある一族。
匿名で売買の話を持ちかけた先が
フィレンツェの古物商Sandro Morelli(サンドロ・モレッリ)。
彼がさらにトリノの古物商
Giancarlo Gallino(ジャンカルロ・ガッリーノ)に転売。
このトリノの古物商がミケランジェロ作と認定して
イタリア国家に売っています。
このGallino氏はこれまでも同じような経歴を持っており
トリノの市立博物館には彼が認定し販売した
Giambologna(ジャンボローニャ)のキリスト磔刑像があり、
フィレンツェには彼がAntonello da Messina
(アントネッロ・ダ・メッシーナ)作と鑑定した板絵が2枚あります。

専門家の間では
今回のキリスト磔刑像をミケランジェロ作と鑑定したことに
反対する人も多いのですが
賛成派にはAntonio Paolucci、Cristina Acidini、
Giancarlo Gentilini、Luciano Bellosi、Umberto Baldiniなどの
イタリアを代表する著名な美術研究家の名が連なっているため
おおっぴらに反対できずにいるというのが現状。

反対派の多くはこの作品はSansovinoのものだという人が多く
それはそれで、それなりの価値があるものではあります。
しかしもしサンソヴィーノ作だったとすれば
売値は高くても60万ユーロ、
もし名もない作家のものだったとすればその価値は
最高でも12万ユーロ程度まで落ちるといわれています。

ミケランジェロの作品は
非常によく古文書に記録が残されていることもあり
本気になって調査・研究をすれば結果はでると思うのですが
既に大金を支払って、後に引けなくなっているイタリア政府が
どこまで本気でこの調査に乗り出すかは疑問の残るところ。