のんのん太陽の下で

初めての一人暮らしが「住民がいるんだ・・・」と思ったラスベガス。
初めての会社勤めが「夢を売る」ショービジネス。

安らかに

2006-10-13 | KA
 舞台が空中を一回りし、その後その中でひとつのシーンを待っていなければならないとき、隣の山男役がちょっかいを出してきました。反応の悪さに
「どうしたの?元気ないね。」
「・・・だって亡くなった人がいるじゃない・・・」
「ああ、彼は昼間働いていたみたいだから僕はあまり知らないけど、知っているの?」
「だってプロップスの人だもの・・・」
「そうか、ごめん。」
 そう言って彼は離れていきました。
 笑うことはできなくても口元には笑みを浮かべて普通を装っていようと思ったのに彼と話して、そのあとプロップスのジョンがいつものように下にいるのが見えて涙が目に溢れました。いつものように、と歌を歌い出したら涙声。静かに涙が頬を伝います。
 この訃報が緊急のミーティングで知らされ、今日は彼のためにショーをしましょうとカンパニーマネージャーが言いました。私は思わずうなずきました。
 ショーはいつも通りに進んでいきます。大多数のアーティストは彼のことをあまり知らないのがわかります。もしくは私が思いを込めすぎていたのか・・・
 プロップスの人に会うたびにハグをして悲しみを分かち合いました。そして自分の気持ちコントロールして表の舞台に立たなくてはいけない自分が少し悲しくなりました。でも今ここで私が唯一出来ることは、やはり彼のためにしっかりとショーをすることしかないのです。
 彼のことを思い出しながら、そしてプロップスの人たちが見守ってくれているのを感じながら踊りました。いつも見える“星”のひとつを今日はしっかり見つめて。