人を創り、人を愛し、人に背かれる神エホバ。
僕達は白い悲しみが人に付き纏い盲目の檻に偽りの宿を開けることを知っている。
或る人はその檻のなかで、人を殺し、動物を殺し、自分を殺す。
或る人はその宿に辿り着き、彼女の良心をずたずたに切り裂く。
人は心構えも忘れ、自由の抜け殻に針を差し込み蔦を絡ませる。
編み上がった虹彩に自分が出られなくする為に。
それを知られないようにしてる。自分だけには。
僕達は苦しみの木靴が人の踵を打ち砕き独りで紅い港へ向かい決して戻らないことを知っている。
或る者は花の香が噎せ返る海岸で最も愛する人を道連れにする。
或る者は母親の収縮する宮から流れ落ちた夜から月を見上げる。
人々は猿から森へ進化し号泣の雨を地下から突き上げる。
乾涸びた巣で彼女は妊娠し、スープ状の庭に子を埋める。
月の眼光は子守役、液体の子ども達を今夜も掻き交ぜる。
その子どもたちときたら、寿司をポン酢で煮たような顔。
三者揃っても虫の息、真っ直ぐ縮んで渦状に伸びる支柱。
君だけは失わせたくないものだけに囲まれて生きてくれ。
3万年過ぎても時間を回収できなかった世界に生まれて。
君だけが喪われたものばかりに愛されては死につつある。
僕達は人の綻びが見える。その穴が何よりも好きなんだ。
人を超えた人が選んだ時間を生きてゆく僕は一つの空間。
花が燃えて水は砂とセックスする世界に生まれ死を待つ。
君にもし本当に此処に居場所がないのならば。
僕達はそろそろ出航する時がそこに来ている。
そこには喪われた人が喪われた状態のまま喪われた世界に独りでいて、
今、何より、だれより深い愛で見つめている。
在ることを心から信じている、何処にもいない僕達を。
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