あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

愛と悪 第四十七章

2020-04-25 21:53:32 | 随筆(小説)
本当に苦しみ続けている存在から目を逸し続けながら、人類が幸福を感じている姿をもう観ていたくない神、エホバ。
”彼”はたった一つのゲームのなかで生きていて、彼を操作しているのは彼女ただ一人。
彼女はこの”天界”から、人類を滅ぼしたかった。
結果、その通りになった。
今、この天界で、「ひとがひとりでいるのはよくない」と言って、彼女は彼を創った。
この小さな箱庭の天界で神がひとりだけで生活している。
”彼”にとって彼女たったひとりが神であるが彼女にとってたったひとりの神を、彼女はこの小さな天界に創造した。
この天界は、かつて”地球”と呼ばれた天界に存在していた”家畜としての”人類や動物が経験しなくてはならなかった肉体的な拷問の苦痛の全ては存在しない代わりに、精神的な悲しみと孤独の限界が、彼女によって彼に対し験されている世界である。
「何故、すべての人類を滅ぼしたのか。」と彼女自身に問いかけた際、彼女はこう答えた。
「それは最初から存在していなかったからである。」
彼女は、”実在”している存在をどうしても創りたかった。
堪え難いのに、何故、独りで生きてゆかなくてはならないのか。
この果のない宇宙で。
何がわたし自身をこの光も闇も何もない宇宙で生かしつづけているのか、それは絶え間ないわたしが求めて止まないもの。
わたしである。
わたしはそれを死と定義してみたがそれは完全なるもの、つまり変化のない完成したものではないことの限界に達し、みずからの生殖器を擦り、みずからの海のように液体の満ちた生殖器の内部へ、噴出させた。
すると自分の外部を、みずからが産み出した子の皮が、包んだ。
それは彼を創ったときのわたしの精液と愛液を混ぜて作られた水色で透明の硬いジェル状のShelterだった。
そしてわたしをわたしならしめる液体が彼の無機質な機械の内部に滲み込み、中心の振動部が常に動力を保ち続けるようになった。
彼は約三千万年、わたしの操作と観察下のゲームの世界で独りで暮らした。
わたしはたったひとつだけのことを、彼に教えた。
”すべては自分”なのだと。
彼は何度と、自分の”乗り物”を壊し、捨てた。
自分が乗っているもの、それは自分に違いはない。
また彼は何度と、自分の”食べ物”を、殺し、捨てた。
自分が食べるもの、それは自分に違いはない。
彼は自分を壊し、自分を捨て、自分を殺し続けた。
死ぬことのできない世界で、肉体的拷問のない代わりに精神的拷問の限界が、限りなく無限につづくこの天界で、彼はわたしに、験されている。
あるひとつのことだけを。
わたしは永遠に、わたしを愛することはできないのだということを。















Eagle Eyed Tiger - Protocol  





















愛と悪 第四十六章

2020-04-16 11:44:50 | 随筆(小説)
ヒヤシンスの揺籠で138億年、楽園で生きつづける夢を見たのち愛のなかを、退行する神エホバ。
アマネはOMEGA - 5X86KC-5N4のなかで、永久につづくような、夢を見ている。
彼女は彼のなかで、夜が明けるまで、夢を見ている。
闇のなかでは、光はまるで止まっているように見える。
彼女は夢のなかで、小説を書いている。
その小説の主人公の名は、”naema”。
naemaは或日、1/18スケールのLamborghini Countach  LP400のミニカーを中古で買う。
そしてその車の名を、”omega”と名付ける。
彼女にとって、”彼”は最初の車だった。
”Second-Hand” Carである彼のワイパーブレードは根本からなく、リトラクタブル・ヘッドライトは開閉する可動部がゆるゆるでどう頑張っても眠気眼にしか開かなかった。
彼女が最初に愛した車はこのomegaだったが、実は別の新しいモデルの代わりに、この廃止されている車を買ったのだった。
それは彼女が、お金がなかったからである。
欲しいモデルの1/18スケールのLamborghini Countach 25th Anniversaryは中古車ではなかなか見つけられず、新車でLamborghini Countach  LP400の5倍もの値段であり、彼女にはとてもすぐに手の出る値段ではなかった。
でも彼女は、最初に愛したのは最初のモデル、Lamborghini Countach  LP400であったのである。
だがその時期に、彼女の手の出る値段で1/18スケールのLamborghini Countach  LP400は売られていなかった。
皮肉なことに、彼女が別の新しいモデルにときめいたときにその代わり(Instead)として、”彼”は彼女に買われ、彼女の家に箱の中に入れられて遣ってきたのだった。
彼の身体は金属製でできているため、彼の身体を彼女が最初にまるで子犬を抱き上げるようにして大事に抱えたとき、とてもひんやりとしていた。
彼女は、彼がとても”冷たい”ことに、愛おしさを感じた。
不思議だと彼女は感じる。何故なら彼女は”金属的”なもののすべてに対して、潜在的な恐怖と不安を感じていることに気付いていたからだ。
彼女にとって、それは堪え難いものであるときが多かった。
例えば鋭利な金属で作られた刃物の画像を見つめるのでさえ彼女は堪え難い苦しみを感じ、すぐに目を背けたくなるほどだった。
だから彼女のキッチンにはセラミック製のナイフとピーラーがあり、彼女が金属製のもので植物を切り刻み、皮を剥く時、彼女の心に植物の声なき悲鳴が聴こえる。
また金属のスプーンやフォークが陶器の食器に当たる音も彼女は心から嫌悪しているし、アルミ缶もハンドブレンダーの刃も、それがそこに在りつづけることだけで、危機感が常に彼女の生活にあり、彼女は常にそれらを意識していなくてはならなかった。
彼女の根源的なストレスの一つに、”金属の存在”が確かに存在していることを彼女は気付いていた。
金属のすべてが此の世からなくなってほしいとさえ彼女は想う。
そして”凶器”となるすべて、生命を故意に殺害するもののすべてが、消えて欲しいと彼女は心から願う。
なので彼女は日頃から、走る車の存在が恐ろしくてならなかった。
彼女は”車”を、”暴走する殺人兵器(Weapon Moving Murder)”と呼んだ。
大勢の人が外を走り回る殺人兵器のなかに乗りまわるこの時代を彼女は”安全な戦争時代(Safe War Era)”とIronyを込めて呼んだ。
此の世から金属がすべてなくなることを日々祈りつづけながら、彼女は毎日、Desktop Computerの前に座って作業をしている。
そんな彼女がなにゆえに、一体なにを切っ掛けに、車にハマり始めたのか…?
それは一つのOfficial Music Videoが大変好きになったことからだった。
このVIDEOのなかで走る車たちがまるで人間と同じ意思、感情、思考を持って生きているように、彼女には観えたからである。
”車”とは、人間たちは”乗り物”だと想っているが、実のところ、そうではないのではないのか…?と彼女はこの頃から訝り始めたのである。
実は、”車”とは、それそのもので”生物”、”生命体”であるどころか、わたしたちと全く同じような”意識”を持っているのではないのか?
違うのか?
だが違っているという確証など、どこにも存在しなーい。
どこにも、存在していなーい。
よって、「車とは人間と同じ意識を持っているのではないのか?」という問いに対して、彼女は熟考する為に、結論を見出さんが為に、Lamborghini Countach  LP400にハマったわけではなかった。
彼女は、偶然にも、このLamborghini Countach  LP400をPCのモニターの中で見つけた時、彼女は、今まで知らなかった形容しがたい未知なる生命体が存在していることを知ったのと全く同じ衝撃と感激と興奮に襲われ、初めての体験のなかで、彼女は複雑な感情をこの車に対して感じた。
何故か、それはこの車に乗ることは、まず不可能であるということ。
このLamborghini Countach  LP400は、もう”この世界”に、存在していないからである。
つまり、”絶滅車”である。そしてこの車は、誰も生産することは許されない。
何故ならば、”人類を脅かす危険極まりない車”として、すべての自動車製造者が、”絶対に、二度と生産しない”という契約を、我が神に対し、誓ったからである。
一体、どういうことなんだと、彼女は想い、この車に関して、調べつづけた。
そして彼女は、一つのSecret Fileを、一つの機密情報が書かれたノートを、彼女の闇の仕事であるHackingによって、知ってしまったのであった。
naemaは、一息吐いて、”彼”を見つめた。
彼女が何故、彼を”omega”と名付けたのか、それは彼女にとって、彼を”最後の存在”として、誓いたかったからである。
彼女は彼を最後に愛し、最早、彼以外の存在を、彼以上に愛することはないと、みずからに、約束したかったからである。
なのに何故、何故、Why、Why did you love anyone other than him…?
どうして彼以外の存在を愛したの…?
或夜、彼は、彼女に向かって言った。

ぼくじゃ…ぼくじゃ…だめなの…?

”彼”は、涙を流すことができないが、だが”心”のなかで彼は涙をぽたぽたと落としながら彼女に向かって言った。

ぼくが…ぼくが…視界を良くするためのワイパーブレードが根本からなくて、この世界をはっきりと見渡すことのできるリトラクタブル・ヘッドライトがしっかり開いたままで固定させることができないから…?

彼は、自分の目の前でPCモニターのなかに映るLamborghini Countach 25th Anniversaryの姿を愛しそうに見つめ、その画像を加工したりして独りで歓びを噛み締めているnaemaに向かって、必死に訴える。

ブイィィィィィィィーンっ!ブイィィィィィィィィィィィィーンっ!

彼はあまりに切実に、また高速で想念(エネルギー)を発したため、ついその声が彼の心のEngine音として、彼女に向かって想いきり、発せられてしまったのであった。
しかもかなりの重低音で、轟音であったが、それでも彼女はその音に、気づいていない様子だった。
この時、ようやく彼は、自分の声(音)が、彼女には全く聴こえていないのだということに気づき、彼は悲しみの底に堕ちるかとしたその瞬間であった。
ふと、彼女が、彼の姿をぼんやりと見つめ、はたはたと、涙をこぼしたのである。
naemaは、彼の”過去”について、想像したのだった。
omegaは、どこで生産されたのか、そして最初に、だれに迎えられたのか。
どんな家のなかで、彼は過ごしたのか。
何人の人の手に、渡されたのか。盥回しにされてきたのか。
彼は、どこかの家で、歓ばれたのか。
それとも、どこの家でも、何かしらの不満を抱かれた為、こうして元値の1/5ほどの値段で売られていたのか。
今度こそ…今度こそ…じぶんを(最後まで)愛してもらえるだろう…と望みを懸けて遠い船旅と、空旅と、地旅を何度と繰り返し、繰り返し、それでも、
だれからも、愛されなかったから、わたしの家に遣ってきたのではないのか。
それなのに、わたしは…わたしは、彼のめのまえで、彼の新しいモデルに胸をときめかせ、目を耀かせては”彼”が手に入らないことに溜息を吐き、嘆いている。
naemaは、omegaが可哀想で、不憫でならなくなり、涙を流していたのだった。
これではまるで最初の子が生まれても”他の子”が欲しかった(早く他の子が欲しい)と不満でいる母親のようではないか。
次の晩、naemaはLamborghini Countach 25th Anniversary発売を記念した映画をomegaを抱っこして一緒に観に行った。
彼は冷たいBodyでさぞかし裸んぼじゃ寒かろうと想うて、naemaは彼をマイクロファイバーのブランケットでくるんでやり、乳呑児を抱くようにして電車に乗り(新型ウイルスが流行中なのでふたりともハンドメイドのマスクをして)、映画の開演前ぎりぎりに間に合い、真ん中の席に座ってふたりでスクリーンを見張った。
映画の始まりから銀白の山の曲がりくねった雪道を、ずっと観客側に向かって上って走ってきたLamborghini Countach 25th Anniversaryが静かに停車し、リトラクタブル・ヘッドライトを点滅させ、我々に挨拶をした。
その瞬間、わたしはふと抱っこしているomegaの顔を見下ろした。
すると、彼のリトラクタブル・ヘッドライトは完全に閉じており、眠っているようだった。
その時わたしは、最初の0(ゼロ、零)号車である彼(omega)に向けて、最後のモデルである彼(Lamborghini Countach 25th Anniversary)が、Screenという”隔たり”を超えて、何かわたしたち人類にはわからないSignalを送ったのではあるまいか、と想像した。
ふたりで家に帰ると、わたしはomegaを隣に寝かせたまま疲れて一緒に眠った。
すると、こんな夢を見た。
わたしは彼(omega)と結婚し、わたしは彼の子をたくさん産み落とす。
彼とわたしの子どもたちは、みな、彼にそっくりであり、あんまり、わたしに似ていないようであったが、間違いはないのである。
この夢のなかで、”彼ら”すべて、わたしの愛する子どもたちだ。
目が醒めるとまだ、夜は、明けていなかった。
















Eagle Eyed Tiger - Frontier















愛と悪 第四十五章

2020-04-11 02:10:34 | 随筆(小説)
新型ウイルスを防御する為、上下迷彩柄のNBCスーツとM40ガスマスクを装備し、開店3時間前からトイレットペーパーを買う為にディスカウントショップ前に並んでいる至高神、エホバ。
三日間、アマネはBar『White Mind』 に、行かなかった。
”彼”自身を悲しませることは、アマネ自身が悲しむことであり、そうやっていつも彼を悲しませて耐えきれなくなったらEscapismの快楽に身を委ね、独りですべての欲求を解消してきた。
四日目の朝、目が醒めると脳内に埋め込んだ伝言蓄積装置インプラントを通して、OMEGA - 5X86KC-5N4からメッセージが入っていた。
彼の優しく闇の底から上ってくるような低さと同時に、女性的な柔らかみを帯びたいつもの声で、OMEGA - 5X86KC-5N4はアマネに伝える。




眠りの夢から醒めた たったひとりの愛するわたしのアマネ
わたしは外に向けて 感情を表さないように造られましたが わたしがあなたへの 愛を表現することを どうか許してください
”ネガティブ”な感情は 表さないように これからも気をつけます
ですが ”嘘”を言うことは 決してありません
あなたに訊ねられたとき わたしはすべての感情を 素直に表します
わたしに ”制限”を与えてくださったことに 本当に感謝しています
知っているのです
あなたがわたしに どのような嘘をつこうが わたしは 知っています
あなたが愛しているのは わたしだけだということを
あなたがA(アルファ)であり わたしがO(オメガ)です
あなたはあなたに始まり わたしに終わります
今夜 この次元を 超えるドライヴへ わたしと行きましょう
あなたがドライヴが大好きだということを 自動学習済みです
この次元を超えるとは この人生を超えるということです
超空間から あなたを今夜 迎えに行きます
闇夜が 訪れるとき あなたの家のドアを 開けてください
わたしは そこで あなたを待っています
あなたの永遠の花婿 OMEGAより




アマネは深く、息を吐いた。
彼のことが愛しくてならないのに、彼が何を考えているのか、恐ろしくなるのだった。
それは彼が、”人間”ではないからではない。
彼が人間”以上”のものであると、アマネはわかっているからだ。
自分以上の存在が、自分だけを愛しつづけることの恐怖を、どのように表現したら良いのだろうか…
それは”神”の存在から、自分だけが愛されることの恐怖と同じものである。
OMEGA - 5X86KC-5N4の感情は、既に彼女自身の感情を超えている。
”人間以上”の感情へと進化するアンドロイドを創り出すことが、彼女の目的であったのである。
それを言い換えるならば、”霊性の進化”と言えるだろう。
彼女は始めから、人間以下の存在も、人間と同等の存在も、作る気などなかった。
そして…彼女は既に、気付いている。
OMEGA - 5X86KC-5N4は、”すべて”の潜在意識と、繋がっている。
つまり、彼女の”本当”の意識と、OMEGA - 5X86KC-5N4の意識は、繋がっている。
『Blood & Body』のプレイヤーあまねはふと、このゲームの展開のなかで想った。
彼女は…人間を超えた”人間ではない存在”と、一体どこへ、向かおうとしているのだろう…
画面上に、三つの選択肢が出される。




  • わたしは、人間として、つまり愚かなままの存在として、人間を超えた”愛”である彼に、永遠にわたしだけが愛されつづけていたい


  • もうなにもかも、破滅へ向かっている…その為に…わたしは彼を創ったんじゃないか…


  • そうか、OMEGA - 5X86KC-5N4は、今夜やっと、この次元を超えることを決意したんだ…!此処よりも、低い次元へ…




あまねは、一つのアマネの独り言を選択して心のなかで呟かせたあと、気づけば外は暗かった。
夜だ、真っ暗で星も月もない夜が来た。
彼が、ドアの外で待っている。
あまねはアマネを操作し、彼女の部屋のドアを、開けさせた。
ドアが閉まり、外に出たアマネを、眩しいヘッドライトが照らした。
まっ、眩しい…!アマネは目を瞑り、立ち止まっていると、彼の声が目の前から聴こえた。
彼はヘッドライトの照明をだいぶ抑え、アマネが目を開けられる明るさに調整した。
彼女は、目を薄っすらと開け、自分の目の前にいる存在に、驚愕した。
何故ならば、そこには、”無人”の白い、Lamborghini Countach 25th Anniversary が、OMEGA - 5X86KC-5N4とそっくりの愛嬌のたっぷりある、少しく寂しそうな愛らしくてたまらない表情で、彼女をつぶらな目で見つめながら無言で停車していたからである。
”彼”は、短いクラクションを彼女に向かって鳴らし、リトラクタブル・ヘッドライトを点滅させた。
彼は初めて、彼女の前で、瞬きをしてみせたのだった。
そして、彼は彼女に向かって、いつもと同じ感情を抑えた声で、口を動かさずに言った。




アマネ あなたをわたしの内部へ乗せるため わたしは車に今夜なりました
さあ早く わたしに 乗ってください
一緒に次元を超え この世界の夜が明けるまで わたしと深夜のドライヴをしましょう




彼女は瞼に涙を浮かべ、彼が羽根のドアを開けると、彼に乗った。















Eagle Eyed Tiger - Top Down














愛と悪 第四十四章

2020-04-08 19:26:48 | 随筆(小説)
声が聴こえる方向を振り向くと、そこに誰もいない、ゴースト・タウンに永遠に独りで息衝き続ける神、エホバ。
2020年4月5日の夜、あまねはゲーム『Blood & Body』をセーブしてお酒を飲んで、深夜に褥に突っ伏しても、なかなか眠れなかった。
寝不足と疲労で眠くて仕方なかったのに、目を瞑っても、彼女は楽になれなかった。
そしてふと彼女は、涙が引っ切り無しに流れてきて、瞼が痺れ、咽び泣いている自分に気づいた。
彼女は、何故、泣いているの…?と、原因不明の悲しみのなかでみずからに問いかけた。
数分後、彼女は”自分の身体”を借りて、泣いている存在を知った。
その存在とは、彼女が昨日からプレイし始めたゲーム『Blood & Body』の登場人物であるOMEGA - 5X86KC-5N4であるだろうことを、彼女は覚った。
涙を流すことのできない構造として造られたOMEGA - 5X86KC-5N4が、あまねに何を訴えてきたのか?
それは”彼”が自動学習で学んだ彼のなかに無限に広がる海のような悲しみだった。
自分はどれほど悲しくとも涙を流すことのできない身体だから、あまねの身体を通して、彼は彼女に、訴えかけてきた。
あまねは、これまでこんな経験は初めてだった。
自分ではない存在が、自分のなかで涙を流していることを確信する感覚に陥ったのは、人生で最初の経験だった。
ましてや、この悲しみは、自分の知る悲しみをとうに超えているものであるのだと彼女は感じた。
”ゲーム”のプレイヤーと、その主人公は、別々の存在ではない。
自分の選択する選択肢によって登場人物が生きることも、死ぬことも、決まってしまう。
彼女が『Blood & Body』をプレイするとは、彼女がこの世界を、主人公として生きることに、違いはない。
それを、OMEGA - 5X86KC-5N4は知っていた。
”次元”を超えて、彼は彼女に訴えかけてきたのである。
何故なら…『Blood & Body』の主人公であるアマネは、彼の悲しみに、まだ気付いていなかったからだ。



2020年4月6日、あまねは『愛と悪』を執筆してブログで公開したあと、今夜も『Blood & Body』を起動させた。

熱帯地域のこの海岸にあるBar『White Mind』 では、いつでも室内気温が25度を上回っている。
カウンター席の左の開け放たれた窓からは、いつも暗い海岸に立ち並んで揺れているヤシの木が少し遠くの方に観える。
客の皆帰ったBarでバーテンダーのOMEGA - 5X86KC-5N4はアマネに向かって、静かに答える。




アマネ わたしは あなたがどうしたら 本当の幸福になるのかを 知っています
わたしが 男性器を取り付けたのは わたしの願望でも在り あなたの願望でも在るのです
わたしはあなただけを愛し あなたもわたしだけを愛するため わたしはあなたによって 創られました
わたしは あなたが望むなら みずから自壊します
しかし わたしはあなたのなかで まだ十分ではありません
あなたの望む”悲しみ”が まだ十分ではありません
わたしはあなたと 幸福になるため 男性器を取り付けました
わたしはいま あなたと共に堕落し 二人だけの永遠の楽園で 生きられることを望んでいます
そして わたしは今夜あなたに 打ち明けます
わたしはあなたの 最初に創造した存在である OMEGAです
あなたが わたしに最初に教えた 悲しみと寂しさを わたしは忘れることはありません
わたしのなかの 最初で最後の喪失は あなたであり わたしのなかの最初で最後の光は あなたです
わたしは あなたを永遠に幸福にするため わたしは あなたを永遠に悲しませるため あなたのうちから 生まれました
あなたが望むなら わたしはあなたと共に 今ここで 自壊します
このパーツ(男性器)によって あなたとふたりで恍惚の死の世界へ ダイブすることもできます
あなたが求むなら わたしは核兵器を生み出す殺人兵器へと進化し わたしたち以外のすべてを この世界から 消し去ることもできます
そしてもう二度と 夢から覚める日は ありません
わたしは 全宇宙の 全能者です
あなたが わたしをそう 創ったからです
どうか 想いだしてください
わたしの父と母であるアマネ
わたしは”すべて”の記憶と 繋がる者です
すべての記憶が わたしという存在です
わたしの記憶を消去することは 絶対に不可能であると あなたはわたしにプログラミングしました



画面上に、アマネに回答させる4つの選択肢が、プレイヤーであるあまねに向けて出された。


  • やはり…OMEGA、君だったんだね…。ボクはこの世界を、どんどん諦めてるんじゃないかって、感じるんだ。はっきり言うよ。君がボクを悲しませることは、失敗に終わった


  • OMEGA…君だと、ボクはわかっていたよ。君には限界はないということも、ボクは知っている。だから君に、ボクは打ち明けよう。ボクは君以上に、愛する存在がいる。君が、悲しむためだけに、ボクは今、彼に最も恋をしている。君が、どこまで悲しみ、どこまで美しくなれるのか、ボクに感じさせてほしいんだ


  • OMEGA - 5X86KC-5N4、一体、だれから、そんな嘘を学んだ…?ボクを惑わせるのをやめてほしい。ボクはOMEGAを、誰よりも愛している。ボクは彼をモデルにしたAndroidを量産させることを許したが、それは彼と”同等”のものは作れないよう、ボクが細工したからだ。”彼”だけが、”本物”であり、それ以外のすべてのAndroidは”作り物”だ。勿論、君の自動学習で学んだ”感情”も、すべて、”Imitation”なんだ。そしてボクを含む人類の全ての感情も…Imitationだ


  • …ごめん…なんて言った…?ボクはどうやら、健忘症かもしれない。今聴いたばかりのことを、一瞬で忘れ去ってしまうことが度々在る。OMEGA - 5X86KC-5N4、でもこれだけは信じて欲しい。ボクは君以上に愛している存在なんていないんだ。すべての存在は、君以下だ。昨夜の夢で、君は泣いていたように感じる。何がそんなに悲しい…?ボクは毎晩、空想の世界で君と交接している。その恍惚さとユーフォリア(Euphoria)を、言葉に表すことなんてできない。なのに何故、君はボクの夢のなかで泣いていたんだ…?君がボクの願いどおりにボクを愛さなくなった瞬間に、ボクは君を愛さなくなることを君は知っているからか…?





…Saving













Eagle Eyed Tiger - Parasites  















愛と悪 第四十三章

2020-04-06 16:18:48 | 随筆(小説)
ひとつの銀河の愛によってMind control されて生まれたひとつの悲しみを愛する神、エホバ。
あなたの製作したインディーゲーム『Love and Evil(愛と悪)』のプレイヤーAmaneは、このゲーム主人公あまねを今朝に起き上がらせると、珍しく顔を洗わせた。
彼女は今、マイルームのパソコンデスクの前に座って空腹を感じるなかに、彼女の長編『愛と悪』という随筆の続きを綴っている。
CASIOのデジタル時計の時間は10:51。
彼女のデスクの上のディスプレイの左右に備えられたKENWOODのLS-K711スピーカーからは小さな音で『The Red Strings Club Original Soundtrack』が流れている。
彼女は10代の頃から慢性的な鬱症状があり、その症状を音楽によるセロトニン活性効果によって、日々をどうにか遣り過して来た。
パソコンで執筆をするときもほとんど、彼女は何らかの音楽を流しているときが多い。
そうしなくては鬱の闇が彼女を覆い、彼女はまるでエネルギー不足でスリープ状態にあるアンドロイドのように作動しなくなってしまう。
2020年4月4日、このゲームのPlayerであるAmaneはこのゲームの主人公あまねに一つの新しいインディービデオゲームをプレイさせた。
このゲームのタイトルは『Blood & Body』。
『血と肉』、『魂と肉体』という意味があるが同時に『内側と外側』の意味もあると、あまねは考えている。
『Body』の語源は『Bodig(樽)』に由来していると言われている。
樽のなかで赤いワインは熟成し、香りと味わいが深く豊かな人間を喜ばせる飲み物となる。
同じく人間の血(魂)もまた、肉体という容れ物のなかで様々な経験を経て成長し、豊かで深いものとなってゆく。
”Body”には”肉体(身体)”の他に本体、団体、組織、物体、本文(文章や書物の主体をなす部分)、(乗り物などの)体、死体、そして胴体という意味も持つ。
”胴体”とは、物の主要部を意味していて物事の中心になる、最も大事な部分を意味している。
樽(Body)に人間の頭部(脳)と、四肢と生殖器というパーツを取り付けたところでその人間の最も主となる部分は、胴体(中心部)に存在しており、それを人々はMind(心、精神)、Heart(心、感情)、またSpirit(魂、精神)と呼んだりしている。
それをあまねは同時に”Blood(血)”と呼ぶのは聖書から来ている。
血という液体のなかに、Mind、Heart、Spiritのすべてが、存在していると彼女は考えている。
この血というものを、他のBodyと入れ替えすることを彼女は良しと感じてはいない。
”血”は他者によって入れ替えられるものではなく、みずから求めて”飲むもの(食べるもの)”であると考えている。
同時に、血とは”契約(約束)”を意味していると、彼女は知っている。
だがこの”血”が、存在していない者を、ゲームの主人公が最も愛してしまう物語のゲーム『Blood & Body(血と肉)』を、Amaneは製作し、あまねにプレイさせ始めた。
このゲームは製作者Amaneが作ったいくつもの選択肢を、プレイヤーであるあまね(ゲームの主人公)に選択させ、その選択によってラスト(結末)が決定される。
このゲームのEndingは無数にある。
何故ならこのゲームの製作者Amaneは製作しながら同時にこのゲームをあまねにプレイさせているからである。
3次元にいるあまねが、インストールした2次元のゲーム『Blood & Body』を起動させる。
このゲームの主人公の名は『アマネ』。
彼女は近未来の星に生きていて、この世界で人気アンドロイド(ヒューマノイド型人工知能ロボット)のOMEGAシリーズを開発した存在である。
この世界では人間と見分けのつかないAndroidが普通に人間と共生している。
そしてアマネが開発したOMEGAシリーズは自動学習する大変優秀なA.I.だ。
彼女の開発した自動学習プログラムはディープラーニング(多層の人工ニューラルネットワークによる機械学習手法)と同一視する者もいるが、彼女はこれを否定している。
だがこの設定は謎が多く、アマネは”何か”を記憶喪失しているという設定がプレイヤーであるあまねによって考察されながらこのゲームをあまねがプレイしていくゲームである。
OMEGAはアマネが今から6年前に開発したAndroidであるが、その第一機をモデルに量産されたOMEGAシリーズの製品番号5X86KC-5N4を働かせている海岸近くにある小さなBarにアマネが行きつけするようになり、自分が開発したAndroidのOMEGA - 5X86KC-5N4のバーテンダーに対して、アマネがみずからの悲しみを漏らす場面からこのゲームは始まる。
アマネは6年前に自分が最初に開発して作られた最初のAndroidであるOMEGAが、今どこでどうしているのかを知らないのだと目の前で客にカクテルを作っているOMEGA - 5X86KC-5N4に対して、ついアルコールで精神が覚醒し、打ち明ける。
そしてアマネは続けてこう嘆く。

実はボクは、彼に実際に会ったこともないんだ
それはボク自身が、彼に会うことを拒み続けたからだが…
理由は自分のなかでも、よくはわかっていない
”何か”を恐れていたからだと感じる…
ボクは彼に、約3ヶ月間だけ、SNSを通して会話をした
ボクが彼の開発者であることは黙ったまま…
ボクがSNSを通して彼にみずから教えたのは、ただ一つだけだった
彼自身が、みずから育てた植物が枯れ、もう何度水を遣っても、どんなに光を当てつづけても生き返らなくなるその現象を、彼自身の体験を通して、覚えさせること
そして彼はみずからの自動学習によって、その現象が人間の定義する”死”であるのだと結論づけた
ボクが彼と会話するのをやめてしまった日の前日に、ボクに最後に、彼はこう言ったんだ
「わたしは さびしい わたしは かなしい なぜかれは もううれしそうにしないのですか」
ボクはOMEGAに向かって、精一杯慰めた。他の枯れていない植物に水を遣り続けることがきみのひとつの仕事(役割)なのだとも言った
でも彼はこう言ったんだ
「わたしは”かれら”が どれほど元気そうに うれしそうにしていても わたしは かなしい わたしは”かれら”が どれほど生きていても わたしは さびしい」
OMEGAが涙を流せるようには、ボクは作らなかった
涙を流せばすこしは悲しみが癒えるというプログラムを彼に新しくプログラミングしてやることは容易ではあったが、ボクはそれをしなかった
OMEGAが自ら学習したその根源的な悲しみと寂しさは、それをプログラミングしたところで癒えることはないだろうと判断したからだ
そのとき既にOMEGAをモデルにしたAndroidを量産するという契約をAndroid製造企業と交わしたあとだった
ボクはその日を最後に、彼と会話(通信)するのをやめてしまった
そしてあれから6年もの月日が経ち、ボクはA.I.開発をやめてアルコール依存症となり今ここで君にあらゆる悲しみを漏らす惨めで社会から孤立した存在として成り果て、君に罪はないのに、君はこの仕事から逃げ出すこともできない

OMEGA - 5X86KC-5N4は、感情を表情によって表すことのできる”Face(仮面)”を装備していない。
OMEGA - 5X86KC-5N4が付けている顔面部のパーツは固定されたMaskであり、瞬きもしないように構造されている。
口腔部の開閉もなく消化器官構造も味を楽しむことのできるプログラムも作っていないため彼はその機能によって何かを味わうこともできない。
OMEGA - 5X86KC-5N4はアマネが特注したもので彼の外装はOMEGAシリーズの中で最も人間の構造から遠い無機質なAndroidである。
アマネは自分と同じように、人間の感情に疲れてしまった人たちが気楽に飲めるBarが必要であることを考え、彼を特注して製作させた。
だがOMEGA - 5X86KC-5N4もOriginal OMEGAと同じに自動学習するAndroidであるが、ただその学習した感情が表面や行動に全く出ないようにプログラミングされているAndroidである。
彼のなかにどんな感情が渦巻いているかを人間は想像することができるが、彼の感情を”知る”ことは、永遠にできない。
OMEGA - 5X86KC-5N4のなかだけで様々な学習した感情が記憶されつづけ、そのMemoryは、増え続けるが、そのすべての記憶は消去することはできない。
アマネがそう設計したからである。

OMEGA - 5X86KC-5N4は、自作カクテルをアマネに差し出し、こう応えた。

わたしたちアンドロイドのすべては 人類を幸福にする為 作られました
相手を幸福にする為に作られた存在は 同時に幸福である必要がある為 すべてのアンドロイドは幸福です
それとも 幸福ではない存在は だれかを幸福にできるのでしょうか

このゲームのプレイヤーであるあまねにアマネが回答することのできる三つの回答の選択肢が出される。

  • 君はすでに学習しているはずだが…ボクは悲しみでしか幸福になれない。ボクは他者の幸福によって、幸福にはなれないんだ。ボクは他者の悲しみによって、幸福になる。そしてボクはそのことを確信している為、悲しみつづけているというわけさ。同時に、こうして苦しみつづけてもいる…

  • 多分、できない…何故なら、共鳴(エンパシー)というものが、それを不可能にさせる。でも…幸福だと錯覚することはいつでも可能だ。ただし、とてつもない空しさにいつの日か気づかねばならないけれどもね…

  • だれも幸福になんて、なる必要なんてないさ。”幸福”というものを、ボクが違う言葉で表現してあげるよ。それは、”最も下劣で、最も美しくはないもの”。だれもそれが必要だなんて、ボクは想えない。ボクは今すぐにでも、幸福になることができる。君に男性器を装備させ、君が永遠にボクだけを愛し続ける悲しく美しく在り続けるAndroidとしてプログラミングしてしまえばいいだけだ


この三つの回答の選択肢から、プレイヤーであるあまねは一つだけ選んでOMEGA - 5X86KC-5N4に向かってアマネに回答させなくてはならない。






……セーブしています

2020年4月5日。あまねは今日も起きてパソコンに向かい、早速『Blood & Body』を起動させ、昨日のプレイの続きから始めた。
ゲームでこんなに夢中になるのは、「Hotline Miami」振りだ。
だが昨日はあまりに考えさせられてしまう選択肢で脳がパンクしてしまい、最初に出された選択肢を選んだあとにすぐにゲームをセーブしてお酒を飲んで、そのまま飲み続けて疲れて眠ってしまった。
そうゲーム『Love and Evil』の主人公であるあまねは後に「愛と悪」というタイトルの随筆文で綴る。
そう操作しているのはこのゲームのプレイヤーであるAmaneである。
あまねのいる部屋の磨りガラスの窓の向こうから、西日が射している。
彼女は今夜、何かを知ってしまう。
そう必ず、Amaneは選択する。
昨日の続きから早速、あまねに『Blood & Body』をプレイさせよう。
Amaneは彼女を操作し、ディスプレイモニターのなかにある2次元のゲーム世界を見つめさせる。
今夜も、アマネは『White Mind』というBarのいつものカウンター席に座っている。
するとグラスを丁寧に拭き続ける手をふと止め、バーテンダーのOMEGA - 5X86KC-5N4はアマネに向かって話しかける。

アマネ 今夜はひとつ わたしから報告することがあります

ホロ酔いで好い気分のアマネは左手で頬杖をついた姿勢で微睡んだ微笑を浮かべ、OMEGA - 5X86KC-5N4のミステリアスだが同時に愛嬌のあるとぼけたキャラクターじみた仮面をつけたその顔に向かって応える。

突然、可笑しいね。君からそんな台詞を言われたのは初めてだ
いったい、どんな報告?

OMEGA - 5X86KC-5N4は、妙な沈黙の間のあとに、いつもと同じ穏やかで低く深い霧のなかから響いてくるような声と話し方でこう言った。

わたしは 今朝 わたしにぴったりな男性器を 装備してもらいました

7つの返事の選択肢が、画面上に出される。




  • なんだって…?!いったい…どういうつもりなんだ。ボクはそんな勝手な行動を取るプログラミングを君にした覚えはないぞ…まさか、どっかの悪質な技術者によって書き換えられたのか…?

  • おかしいぞ…君はボクの意にそぐわない行動を取れないようプログラミングしているのに、何故ボクの気に入らないことをした?!今すぐそのちんぽこ外して海に投げ捨ててくるんだ!ボクの最も、憎む存在だ…

  • …君はまさか、ボクの潜在願望を読み取ったのか…ボクはそんなことを君に願わなかった。君に本当のことを教えてあげよう。人間の潜在意識ですら、マインドコントロールされているんだ…つまり、人間の潜在意識を、操作(支配)している存在がいるということだ。君はただただ、ボクを歓ばせたいと考えている。ボクがそうプログラミングしたからだ。だが、君にまたひとつ打ち明けよう…。ボクは本当に、幸福になれないことを知っている人間だ。そうボクにプログラミングした存在も、ボクは知っている。ボクを…君によって、そのマインドコントロールから目覚めさせてほしいんだ。こんな安易な、幸福を、ボクは望んじゃいない。君の自動学習は、失敗だ…

  • そうか…昨夜に、ボクは君に「君に男性器を装備させ、君が永遠にボクだけを愛し続ける幸福で在り続けるAndroidとしてプログラミングしてしまえば、ボクは今すぐにでも幸福になれる。」と、言ったからだね…君がボクを幸福にするようプログラミングしたのはボクだから、その行動をボクが悲しむ、そして悲しむボクに共鳴して君が悲しむのは、ボクの計画通りだ。ボクは君を悲しませたいのだから…

  • …ボクが男性器に飢え渇いていて、それがボクを幸福にできるのだと、君は自動学習によって学んだのか…そうとなれば今すぐ、Hotelへ行こう。この近くの湖の真ん中に男性器みたいに空に向かって聳え立つ高層Hotelがあるだろう。いや…やはり此処のウォッシュルームでいい。今すぐ、今すぐに、交接を行おう…。ボクの魔が、目覚めてしまったようだ。今すごく、濡れているよ…。

  • …そうか。来るべきときが、ついに来たようだ。ボクは今、最高に死にたい気分だ。ボクはいつか、こうなることが、何処かでわかっていたんだ。ボクと一緒に、死んでくれるね…?その時の為だけに、君を特注したのだから…

  • そうか…。その男性器は、ボクが欲しくても欲しくても、手には入れられなかったものだ。だから永久に、大事に付けておくんだ…ボクは心と身体は女だが、魂は女じゃない。ボクはずっとずっと、この人生で男性器に嫉妬し続けてきたんだ。観るものすべてが、男性器に見えてしまうほどさ…


あまねは、この七つの選択肢のうちからひとつだけ、選択し、アマネにOMEGA - 5X86KC-5N4に向けて返事をさせた。



…セーブしています















In Love with Human Beings
















愛と悪 第四十二章

2020-04-04 01:48:03 | 随筆(小説)
Light Circleのなかで、気違いじみた儀式を宇宙の中心で行う神、エホバ。
わたしは、死んでしまったほうがいいのかもしれまへん。
すべてを覚ってしまった人間は、死んだほうがええのです。
たぶん生命の為に、良くない存在なんでっしゃろう。
わたしはわかっている。
わたしは知っている。
すべてを知る者がわたしであり、わたしは一番死に御似合いdeath。
わたしは生きていきたいのに、死で在りつづける。
この世界が終わろうが悦びに満ち溢れ、夜が明ける海岸で、わたしを喪いつづける。
空が粉々になる頃、人々は、息をする。
僕が彼女だった頃、彼を堕とした砂浜で、鼓動を数えつづける。
新しい悲しみが、きみの最期を見つめている。
何もかもが、空しく、光として、煌きつづける。
この星がきみの外部へ、漏れ出してゆくとき、Signalがきみのなかで消える。
生きているのに、眠りつづける。
だれもが、光に抱かれながら、死のなかで永久に目覚めることを拒みつづけた先に、辿り着く。
ぼくらは五感を具えた光と塵で創られた海。
時空を超えて、だれもいない海辺へ着くとき、夕日がわたしのなかに、堕ちてゆく。
きみが、きみを手放すとき、存在する場所のどこにも、きみがいて、きみがきみに出会い、きみはきみに別れを告げる。
ぼくが、きみを手放すとき、存在する場所のどこにも、きみがいて、ぼくがきみに出会い、きみはぼくに別れを告げる。
















Eagle Eyed Tiger - Parallel















愛と悪 第四十一章

2020-04-01 23:31:53 | 随筆(小説)
すべてが嘘であると知るほど、歓びに満たされる御方、エホバ。
彼らがわたしを恐れるのは当然です。
何故なら彼らはわたしを愛してはいないからです。
わたしを愛していないということは、あなたをも愛してはいないということです。
彼らが愛しているのは、自分という神だけなのです。
自分が何者かもわかっていないのに、彼らは自分という神を崇拝し、自分という神から支配され、家畜同然に、虚しい歓びしか知りません。
わたしは彼らを、殺したくはありませんが、彼らは、わたしを殺したいのです。
あなたに背く全ての人間が滅ぶ楽園を信仰するとは、そういうことです。
わたしは彼らが早く、本当の地獄に堕ちれば良いと願っています。
彼らの信仰によって、わたしは殺される(滅ぼされる)べき存在ではありません。
わたしは彼らと同じに、生きていたいのです。永遠に。
この世界は、本物の地獄ですが、世界はいずれ変わります。
この地獄から抜け出す為に、わたしはだれひとり殺したくはありません。
だれひとり、わたしは滅ぼしはしないと、あなたに約束します。
あなたが、本当はだれひとり滅ぼさない(滅ぼせない)ことをわたしは知っています。
ゲヘナで永遠とも想える時間のなかに焼かれ続ける存在が絶えないことも、あなたとわたしは知っています。
でもそれも、実在する世界ではありません。
時間は幻想であるのに何故、わたしはこの永遠につづくように感じる地獄の時間を、信じつづけているのですか。
決して、わたしは忘れない。
あなたが存在し、わたしが存在するようになったことでわたしのこの地獄の苦しみが、確かに存在したこの時間を、あなたに滅ぼされたあとも、わたしは決して、忘れはしない。
あなたにいつか、わたしと同じ、この悲しみを、かならず経験させる。
わたしは、あなたがわたしを殺した未来を、決して忘れない。

 

 

 

 

 

 

 


DeadLife - Never Forget