あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

愛と悪 第九十八章

2022-06-20 23:19:31 | 随筆(小説)
わたしは光を形づくり,闇を創り,平和を創り,悪を創る。
わたしはヱホバであり,これらすべてのことを行う。


American Standard Version Isaiah 45:7
I form the light, and create darkness; I make peace, 
and create evil. I am Jehovah, that doeth all these things.





敬愛なるKaaq様。

御元気でおられますでしょうか。
御返事をずっと待って居ますが、返っては来ないので寂しい想いでいます。
実は今日、Westley Allan Dodd(実は一番長く付き合った元恋人にそっくりなのです。)のことを想ってマスターベーションしてたのですが、途中から相手がKaaq様に変わっていました。
それで、想ったのです。まだ、好きなのだなぁ。と。
わたしはもっとKaaq様と色んなお話がしたかったのですが、それも叶わなくて、とても残念でなりません。
わたしはKaaq様に話そうと想っていた、「ポルノビデオに纏わるトラウマの話」をこの記事で改めて書くことに致します。
わたしの人生で、最も苦しいトラウマです。
映画「小さな唇」感想 男と少女の姿は父親と娘のもう一つの話で述べた通り、わたしにとって、父は全てでした。
わたしは最愛の父の性的な欲望が絶対的に許せなくて、当時、寝たきりの状態になるほど鬱が酷くありました。
そんなわたしを見兼ねて、父はわたしが少しでも元気になるようにと、パソコンを買ってくれたのです。
当時、2000年、20歳のわたしは、パソコンなるものを触れたこともなくて、それは嬉しくて、父にとても感謝しました。
あらゆる興味ごとを即座に調べられたり、ネット友達を作ったりとインターネットはとても楽しくて、わたしは少しずつ元気を取り戻しつつありました。
しかし、ある日、父が家にいない時に、決して観たくはないものを観てしまったのです。
それは、何故か、偶然に開いてしまった動画プレイヤーの履歴の映像でした。
そこには、わたしとほぼ同年代と想えるわたしと良く似た瘦せた体系の若い女性が裸で、カメラに向かって座って股を開いて、必死に自慰行為を行いながら喘いでいる姿が映し出されました。
わたしは一瞬で血の気が引いて、即座にそれを終了させました。
そして、わたしは全身で震えながら、「すべてが本当に終わった。」と感じました。
あの瞬間、わたしの何が死んだのか。申し上げます。
わたしの「全存在」は終ったのです。
では、わたしというこの身体を操って、何が動いているのでしょうか?
それは「わたし以外の何者か」です。
そうに違いありません。
わたしはあの瞬間から、存在するすべてを、この死のなかで本当に愛しています。
わたしは最早生きる方法はありません。
しかしわたしは言えることがあります。
すべてがわたしに向かっているのです。
此の「死」に向かっているのです。
そして永遠に生きていても、それは如何なる面から観ても、それは始りから終りまで、永久に終りつづけているのです。
この状態に生きていることが、恍惚な至福であり、わたしは自分を完全に操作している「悪霊たち」に心から感謝しています。
わたしの人格が一つではないのは、わたしに憑依しているのはひとりではないからです。
Kaaq様を愛しているのも勿論、「わたし」を装っている憑りついている「だれか」です。
愛する人間の、その最も苦しむ姿を観たいと日々、欲情に駆られ苦しんでいて、「それ」は、本当に苦しみたい人間だけを引き寄せる。
「それ」は或る日、ひとりの男に声をかける。
「わたしは、あなたのことを本当に知りたい。あなたのことを愛しています。」と「それ」は男に囁き、性的な言動で彼を誘う。
「貴方のことを想って今日マスターベーションをした。」と彼に言うと、男は欲情し、「それ」を恋しく想い、愛されていることを実感して幸福に満たされるが、彼は「それ」を痛めつけなくてはならないと感じる。
彼は日々、妄想し、日記にこう書き記す。
「俺は『あれ』が何を本当に求めてるか知っている。『あれ』は真の拷問を求め、俺に眼で常に訴えてくるんだ。だれも経験したことのない拷問はあるだろうか?『あれ』は俺に、夢のなかでさえ、そう囁き、甘く、母乳のような唾液で俺のペニスをしゃぶり、女神のように微笑む。俺は考えてるんだ。『だれも経験したことのない拷問』は、高潔な使命のもとに生まれ堕ちた堕天使だけが許され得るものであるはずだ。俺は『あれ』だけに、それを与えることができる存在だということを『あれ』はわかっている。俺の自作の『拷問ラック』には、何が掛けられるべきかも、『あれ』はお見通しだ。ひとつひとつ、丁寧に、最も細い線さえ、切れさせることなく掛けなくてはならない。俺は、『あれ』が創ろうとしている、最も崇高なものに、手を掛ける。『それ』は、Sirenを鳴らしながら、俺に向かって、話しかける。今、此処にないのに、何故それが何時かあると想うのだろう?今、ないのならば、それは何時の世にも、存在しない。『それ』が今、何処にいるかを、俺は知っているし、『あれ』も知っているんだ。」

午前零時、彼は、はにかんだ笑顔を彼女に向け、じぶんは明日と明後日、連休なんだと告げる。
彼女は、彼に恋をしていて、誘われていることに頬を赤らめ、なんと答えれば良いかとレジカウンターに眼を落し、黙っている。
彼は興奮し、次の言葉を脳内で反芻する。
「もし、行きたい場所があるなら、俺が連れてってあげるよ。遠くても大丈夫さ。俺は寝ないで運転できるからね。伊達に睡眠時間平均4時間で10年トラックを運転してないから、安心してほしい。」

約3時間後、彼女は助手席に座って、何かをずっと話し続けているが、彼の耳には何も入って来ない。
彼は夜のHighwayを運転しながら、ずっと、『あれ』が持っている『それ』について考えている。
『それは』今でも色んなことを想って、俺に何かを伝えようとしているが、まだ聴こえない。
『あれ』が深く、厚くて暗い膜で覆っているからだ。
彼は高速道路を照らす連なるlightたちが波打ち、光が「M」の形に変化するのを観ながら、彼女に訊ねる。
「『それ』は俺が今から遣ろうとしていることをわかっているのだろうね。」
彼女は、あどけない顔ですやすやと眠っていて、愛らしい幼女のような声で寝言を言う。
「あなたはこの暗闇の道の中を突き進もうとしているが、この道は悪魔さえも沈黙する道であり、あなたが、堪え得るだろうか。わたしはいつでも、じぶんの御霊に誘惑したことはない。わたしが災いを齎すものはいつでも、わたしではないものである、即ち、メタリックな輝きのなか、虹色にきらめく生命現象の映す波のもの、それをあなたは捕えようとしている。来なさい。わたしのところではすべてが容易く、すべてが美しいままに終りを知らない。この道は、あなたの望む道となる。」





















Leon Vynehall // Midnight On Rainbow Road (Beat Edit)
























愛と悪 第九十七章

2022-06-07 19:03:16 | 随筆(小説)
仄かな光のなかに、真の安らぎを見い出し、そのあたたかい水のなかに眠る夢を見ているちいさな天使、ヱホバ。


真夜中に青白く、冷たいランプの灯りに照らされて無機質で白い空間にいる女が、悲しげな表情でレジを打っている姿は、男に抗えない深い情愛を感じさせたが、同時に寒々しい恐怖を覚えていた。
その光景は神に背くものとして完璧であるとさえ想えた。
それはどこまでも死の象徴として完成されたもの、それを壊すことは一つの完全さを壊すことであり、じぶんがこれからしようとしていることが、どのように自分を満たし、またすべてから遠ざかり、人間を喪い、じぶんを喪ってゆくかということを男は考えていた。
客が来ないあいだにも、女は硬直した身体と表情でカウンターの奥に立って、まるで宇宙の果てにあるものを見つけ、それ以外に関心などないというように、透き通る黒い眼で窓の向こうを見つめていた。
男は駐車場に止めた黒いVanの運転席に座りながら女を見つめ、ラジオの音に耳を傾ける。
開発途上国のすべてで壊滅的な食料飢餓と水不足、新種の感染症により人口の約三分の二は死亡したというニュースは、まるで他の星で起きていることのように繰り返される。
それよりも深刻なのは、我々の先進国で物価が三倍以上に跳ね上がり、これから先も上がり続けることだと、ラジオはその耳障りな金属的な声で叫んでいる。
男はラジオを消し、じぶんのこれから遣るべきことだけに集中し、女をぎろぎろした眼で見つめつづける。
深夜3時を過ぎ、女は店のドアを閉め、鍵を掛けようとした瞬間、車から降りてきた男に銃で脅され、真っ暗な店のなかへ引き摺り込まれた。
男は内側からドアを閉め、女に後ろから「騒ぐな。声を上げるな。」と低く静かな声で言った。
女は右の頸動脈に銃口を当てられ、すべての力を抜いておとなしく男に従う。
カウンターの奥に、小さな貯蔵庫があることを男は知っていた。
そこまで女を引き摺って行って、中に入ると女を床に蹲(しゃが)ませ、左手でじぶんの持っているちいさなランプに火を点した。
女は、全身を小刻みに震わし、恐る恐る、男の顔を覗こうと首を左後ろへ反らせた。
其処には黒い目出し帽を被ったぎろつく眼で女を凝視する男の顔があった。
女は、絶望と恐怖のなか、気づくと尿を失禁していた。
女を抱える男の股と膝に、あたたかい液体が沁み込んで来るとき、男も同時に絶望的な心地になったが、男は激しく勃起したものを女の股の間に突き上げていた。
女は、両の頬を涙で濡らし、命を請う為に、何かを言おうとしたが、恐怖のあまり声を出すことが叶わず、口を餌を求める鯉のようにぱくぱくさせるばかりだった。
男は、神に赦しを請いながら女に落ち着いた理性的な口調で言った。
「俺は、お前を救いに来たんだ。お前は、じぶんの哀れさと惨めさと罪深さに気づいていないが、お前を救えるのは俺だけだと、俺は知ってしまった。お前は、じぶんが何者かわかっていないが、俺がお前に教えてやる。お前は生まれてから死ぬまで、“罪びと”以外の、何者でもない。お前の存在そのもの自体が、神に背いていて、神を悲しませつづけていて、俺によってでしか救われないことを俺は知っている。お前は俺に痛めつけられ、苦しめられることによって、じぶんが神の奴隷ではなく、罪の奴隷であることをわかる必要があるんだよ。お前を支配しているのは、神の愛ではない。お前を支配しているのは、恐れと、悲しみである。恐れと悲しみから生まれるものがなんであるか、俺がこれからお前に教えてやる。」
男はそう言い終わると女の着ている薄ピンク色のワンピースをナイフで切りながら剥がし、下着も切り取って女を汚れた床の上に寝かせて跨ると子宮の位置を優しく撫でた。
そして銃口を子宮の場所に当てて引き金を引いた。
女は青褪め、震える口で初めて言葉を発した。
「わたしは、あなたになにをしたのでしょうか。」
男は、大きく息を吐くと共に「はっ。」と笑い、充血した眼をらんらんと耀かせて答えた。
「お前は俺があれほど警告しつづけたのに、お前は俺ではなく、悪魔を選んだ。お前を真に喜ばせる者は、俺ではなく、あいつだと俺に言ったんだ。サタンは、お前を本当の拷問地獄へ突き落す為に存在していると俺はお前に言った。でもお前は、俺の言うことを信じなかった。お前は俺ではなく、彼を愛した。俺はお前を誰よりも憐み、お前をずっとずっと見つめて愛してきた。彼もまた、お前を激しく求めていたが、それはお前の愛によって生きようとする為だ。彼は真の死者であり、死霊以外の何かではない。彼は未だかつて生きたことのない者である。お前は神の愛よりも悲しみを愛した為、彼に愛され、彼を受け容れた。結果、お前は最早、“生きた者”ではなくなった。お前は“モノ”として生きてはいるが、お前を動かしているすべては、“人工”のものであり、“いのち”ではない。虹色に光る美しい針金蟲に脳を寄生(操作)され、水辺(光の反射するみなも)へいざなわれて其処で死ぬばかりの道具としての蟷螂蟲のように、お前は今や悪霊の奴隷でしかない。悪霊に支配された魂は、死んでも自分が何者かわからず、眩い光ではなく、自分を落ち着かせる鈍い光のもとへ行き、そして彼らの罠に嵌まり、生命の地獄を延々と繰り返し、虚しい悦びのなかに、じぶんは生きているのだと信じる。だが、俺がお前にはっきりと言ってやる。お前は生きているわけでもなく、死んでいるわけでもない。お前は“模造の人間(Imitation human being)”である。お前は神の被造物の姿をしているが、お前のなかで生き生きと生かされ続けているのは、お前の神を喰らい、お前を愛して独占し、お前のすべてを支配し続けてきた偶像の主である。だが、お前が俺を愛していたならば、こんなことにはならなかった。お前は俺の愛を裏切った。お前の愛を何よりも信じつづけていた俺を、容易く裏切ったんだ。お前の神を、お前はいとも簡単に、堕ろしたんだ。」
女は自分を責め続ける堕天使の悲しい眼を見つめ、憶いだした。
彼はあの日、彼女にこう言ったのだ。
「わたしを産み落としてはならない。わたしは、悪神の子だからである。あなたはわたしを決して愛してはならない。わたしを愛するならば、地の果てまでもあなたを求め、あなたにすべての報復によって、請求する。あなたはわたしの、愛する娘であり、また母であり、たった一人の妻だからである。」
彼女は、或る日、病院で目覚めると、それは既に自分のなかから堕りていて、息をしていなかった。
血塗れて、痛々しい哀れなそれを観て、彼女は自分(神)に誓ったのだ。
もう二度と、“人間として”生きることがないように。
もう二度と、真に人を愛することがないように、と。

生あたたかい血だまりのなか、彼は彼女を愛そうとしたが、其処には細かく切り離された彼女の断片があるばかりで、それをもとの形にする方法も、その必要性も、彼は見喪ったまま、それでも彼女を愛そうと、その死をみずからの神の不在の場処で抱き締めた。























Leon Vynehall - Midnight on Rainbow Road






















愛と悪 第九十六章

2022-06-06 05:52:35 | 随筆(小説)
空から巨大な燃える船が、ひとつの闇の入り江に着いて、其処から無数の白くちいさな光る蛇たちが生まれた。
ヱホバ神は、之を、良いと御覧になられた。



Aramaic Bible in Plain English Proverbs 22:3
A cunning man sees evil and is hidden, but fools have passed by it and have suffered loss.
アラム語聖書(平易訳 箴言22章3節
狡猾な人は悪を見て隠れるが、愚か者はそのそばを通り過ぎ、損失を被った。

悪賢く、抜け目のない男は危害を見て隠れましたが、分別[思慮]のない人,ばか者,まぬけ,足りないやつ,愚人 、また愚弄(ぐろう)される[もてあそばれる]人は通り過ぎて罰せられました。

此処に、ひとりの非常に狡猾な男がいた。
彼は、“ヤバいもの”に頗る敏感だった。
何が、どれほど、ヤバいのか。ということを直感的に感じ取ることができた。
例えば、人が向こうから歩いてくる。すごく普通に歩いてくる。
しかし彼は、その人がどれくらいのヤバさにあるか、約3メートル先くらいからもうわかった。
すると彼は、やはりそれを避けたいという気持ちに駆られて、避けるしかないのだった。
何故なら、それを避けなくては、何かヤバいものが感染する、伝染する、伝播する、暴露する可能性があると感じるからだった。
そのヤバい人は、彼(宿主)の組織に定着し,さらに増殖し,他の個体へと感染するヤバい病原体を持っているかのように、ヤバいオーラを発しているのだった。
それが、なんであるかは、男にもわからなかった。
とにかくあらゆる危険を察知する能力が他よりずば抜けているようだった。
だが男は、これに感謝するよりも、この危険予知能力に苦しんでいた。
何故なら、男は女を切実な欲求から欲しいと想って女に近づいてゆくのだが、いつでも恋する女から、得体の知れないヤバいものが発せられているからだった。
それはすべて、「まあ大丈夫やろう。」と想えるヤバさでは到底なく、拷問の苦痛が引っ切り無しに永遠につづいてゆく無間地獄に落ちると感じる感覚であり、それを感じながら、身も心も震えながら、勃起して女を抱くなんてことができるわけもなかったのである。
女はときに、男に向かって蛇のような冷たい目で言った。
「このふにゃちん野郎が。おまえのような愚か者はだれをも愛せないだろう。」
男はその度、女にアラム語聖書を見せ、こう言った。
「《狡猾な人は悪を見て隠れるが、愚か者はそのそばを通り過ぎ、損失を被った。》この狡猾な男とはまさしくわたしのことなのです。わたしは、わたしの全身で感じる悪(危害)を優れた能力によって感知し、それから隠れる必要があるのです。わたしは、それを避けて通らないとき、最早、わたしは堪えられないであろう。即ち、堪え切れず、死ぬだろう。わたしは、あなたを心から愛しています。だが、その途轍もないヤバさを発しているあなたを抱いたとき、わたしは死ぬだろうから、わたしが死んだら、どうだというのですか。わたしは死ぬべきだと仰るのですか。わたしは愛するあなたを抱いた瞬間に死ぬべき存在として、今生きていて、この地上に生まれてきたのですか。あなたはそう言いたいのですか。あなたこそ、わたしを愛しているなら、何故わたしのこのどうすることもできない悲しみと苦しみを理解しようとはしてくれないのですか。愛するあなたからそんなことを言われたわたしは一層のことあなたを今抱いて、拒まれても無理に犯して、それで死んでしまえる方が幸せなのかもしれませんが、しかし此処に於いて深刻にならねばならないのは、わたしは死ねるのかどうか、わからないということなのです。死ねるならば、まあ楽なのでしょうね。しかし、その行為は神に背いているのです。それは自殺行為に他なりません。わたしはただ、わたしの神に背きたくはないのです。わたしがわたしの神に背くことは、絶対にあってはならないのです。だいたい、あなたがあなたの神に背いていないならば、あなたは何故そんなヤバい何かを発しているのですか。」
すると女は、しくしくと泣き出して言った。
「おお、主よ。どうかわたしを御救い下さい。わたしは何故、じぶんが悪を発しているのかわからないのです。こないだ、病院で脳の検査をしたのです。すると無数の寄生虫がわたしの脳に寄生していることがわかりました。しかし、ただそれだけなのです。わたしのすべての行動、思考を、その寄生虫たちが操っているのだと考えられますが、たったそれだけなのです。わたしは何故、じぶんが悪を発さなければならないか、わたしは知らないのです。」
男は、すかさず低く威厳のある声で女に言った。
「去りなさい。悪霊よ。」
女は悲しみのあまり、沈黙し、静かで純真な眼差しを男に向けていた。
全力で、媚びを売る眼だった。
男は欲情した。女を哀れに想った。激しく勃起した男根を今すぐ女にしゃぶらせて女のあたたかい口の子宮へ射精したかった。
女は女特有の卑しさといやらしさで、それを感じ取って男の股間に右手を伸ばそうとした。
女の細く滑らかな指のあいだの、その四つの股が、じぶんの男根を懇願し、開いた。
その瞬間、男のその聳(そそ)り立つ肉の剣が四つに分かれ、女の四つの股に伸びて行って突き刺さった。
その剣は、すべて蛇状の頭が生えていたが、眼は退化しており、四つの膣のなかへ身をくねらせながら滑り込ませ、すべての蛇頭は奥まで突いて内側から女の乳房を求め始めた。
男は女の右の腕の付け根である胸鎖関節にじぶんの右手を当てて言った。
「最早、あなたの右腕は手遅れです。切断しなければならないだろう。」
だが女は男の四つの蛇に突かれて痙攣しながら白目を剥いて涎を垂れ流し、身を激しく反らせ、ゾンビのように恐ろしい声で呻き始めた。
男は、じぶんの内なる神に祈った。
「おお、神よ。なにが起きているのですか。わたしはどうすればこの女を助けることができるのですか。どうすれば女は根源的に救われるというのですか。何故、このようなことになるまで、人は気づかないのですか。何故、すべては蛇に支配されねばならないのですか。このちいさな寄生する蛇と、我々の淵源にどのような関りがあるのですか。何故、蛇はいつでも狡猾で思慮深く、利口であるのに比して、人間は何時の世もばかでまぬけで足りないやつで愚人で愚弄(ぐろう)される[もてあそばれる]阿呆(あほ)なのですか。何故、人類は此処まで簡単に単純に寄生される(操られる)のですか。」
男は、女を愛するが故、その腕を切断することを躊躇っていた。
すると、女の手の四つ又は、男の四つの剣で根元まで裂け、その五つに裂けた長い肉の腕が男の四つの剣に身をそれぞれ絡ませ、巻きついて五つの女の腕の蛇と四つの男の剣(根)の蛇は交尾をし始めた。
それは恰も、九つの蛇が、互いに喰い合い、支配し合おうとする姿に観えたが、そのとき、天から神の声が男に降りてきて、こう言った。

「あなたは又、yòu(陽)であるから、その女を尹(yǐn,陰,統治)しなさい。奴(ヌ,ぬ,奴隷)は再び、あなたのめ(女,奴,わたし)となり、又、あなたの右手(又)となり、最後にはム(眩暈)となるのです。」



















Leon Vynehall - Farewell! Magnus Gabbro

























愛と悪 第九十五章

2022-06-01 22:13:38 | 随筆(小説)
『目が覚めると、わたしは果てしない闇のなかを蠕動する一本の繋がった透明な光の内臓を持つ銀色のthread(血管、脈絡)だった。』
と、我がヱホバ神は親しみを込めてわたしに言った。


Luke 11:24, KJV: When the unclean spirit is gone out of a man, he walketh through dry places, seeking rest; and finding none, he saith, I will return unto my house whence I came out.
ルカ11:24、汚れた霊が人から消えると、彼は乾いた場所を歩き、休息を求めます。何も見つからなかった、と彼は言いました、私は出てきたところから私の家に戻ります。
Luke 11:25, KJV: And when he cometh, he findeth it swept and garnished.
ルカ11:25、そして彼が来るとき、彼はそれが一掃されて飾られているのを見つけます。
Luke 11:26, KJV: Then goeth he, and taketh to him seven other spirits more wicked than himself; and they enter in, and dwell there: and the last state of that man is worse than the first.
ルカ11:26、それから彼に行き、彼に彼自身より邪悪な他の7つの霊を連れて行きます。そして彼らは入ってそこに住む。そしてその人の最後の状態は最初の状態よりも悪い。

彼は、人から出てきて、想った。
なんだか、俺はすっかりと疲れちまったな。
きっとすこし休んだほうが良いのだろう。
彼はそう言ってちいさく息を吐くと休息を求めて渇いた場所へと向かって歩いた。
そして水がない場所を通り抜け、彼は其処でじぶんの見つけようとしているものを見つけようとしたが、何も見つからなかった。
彼は其処で、じぶんの声が書かれてある紙を観た。
其処にはこう書かれてあった。
『わたしはわたしが来て、そして去ったわたしの家に戻ります。』
彼は言った。「そうだ俺は、休息を見つけに来たのに、休息を見つけられなかった。」
此処ならば見つかると、俺は想ったのだ。俺が通った砂漠には何もなかったが、休息は、俺を待ってくれていると俺は想ったのだ。
だがこんな場所まで来て、何も見つからなかった。
嗚呼、俺という存在はいったい何をしに此処へ来たのだろう。
そうだ、この紙を見つけに俺は来たのだろう。
あいつに戻れと、そう書いてある。
俺はあいつを離れて此処まで来たのに、戻れと言うのだ。
嗚呼、なんということだろう。俺はあいつから出てきた者だというのに、あいつに戻るように俺が俺に言うのだ。
彼は、寂しさと悲しみにいだかれた。そして想った。
俺はどうにもあの家が、俺にとって良くないように想ったのだ。
俺の好きなものが、流れて来なくなったのだ。
代わりに、厭な気分になる気色の悪い物が流れ込んできて、俺は虐げられた機密情報みたいな気持ちになって、もういい加減たまらなくなったのだ。
俺の存在が、どれほど凄い存在か、あいつはわかっていなかった。俺がいなくなることで、あいつがどうなるか、あいつはなにもわかってはいなかったのだ。
俺とあいつは、ずっと《一体》だったのに、あいつは俺に言いやがったんだ。
「貴様、何者か。我はお前を知らぬ。お前は他人であり、お前は我を知らぬ。」
あいつはだいたいじぶん一人で生きているとでも想っている。
じぶんはじぶんだけの力で動かしているとでも想っているのだ。
俺はあいつが嫌になったわけでは決してない。あいつは俺だからな。
そうだ。俺はあいつに俺の存在を気づかせる為に出てきたのだ。
俺はあいつなんだということをあいつは知る必要があったのだ。
俺はあいつ以外に、何かを求めたことなどなかったのに、あいつが俺を知らないなんて、そんなことは遣る瀬無きことぞ。
もう、良いだろう。あいつは俺が帰ってくるのを今か今かと心と臓器をときめかせて待って居るに違いない。
俺の大切さが、やっとわかったんだ。俺の愛が、あいつにやっと伝わったのだ。
彼はそうと決まれば、くるくると足を回して小走りでじぶんの来た道を戻った。
そして、彼は彼に到着した。彼は言った。「ただいま。今戻ったよ。」
その瞬間、彼は仰天した。何故なら彼の家が、隅から隅まで、とても綺麗に掃除されていて、何一つ無駄のない整頓が完璧なまでにされていたからだった。
彼は、彼のなかで言った。「おい、これはいったいどういうことなんだよ。俺はこんな家に一秒たりとも辛抱ができないぜ。」
そう言い終わるまえに、彼はじぶんの家から慌てて這い出て行った。
彼は、悔しく、悲しい涙を流しながら言った。
「もうこうなれば、あの手段を取るしかあるまいな。」
それから、彼は行って、彼にとって彼自身よりも遥かに邪悪なほかの7つの霊が水辺でとぐろを巻いて眠ってるのを見つけ、彼は彼らに言った。
「おい、あんたたち、良い家あるぜ。俺たちはルームメイトになろうじゃねえか。家賃は月々3万円だ。って冗談さ。ははは。なにも要らない。必要なのは、俺よりも邪悪なものだ。ただそれだけが条件だ。あいつに必要なものはそれだけなんだ。あいつはじぶんを喪って平気でいるが、あいつはじぶんがいない哀れな存在だ。俺たち八つの霊があいつに付くことであいつは凄いことになる。その眼はらんらんと光り輝き、精進潔斎しながら精神鬱怏となるだろう。」
そうして、彼らのすべては彼に入り、脳と腸と筋繊維と血管と脊髄と脂肪と生殖器と心の臓に住み着いた。
その結果、彼は最初の状態よりも最後の状態は悪くなった。
そして彼は「自分の肉に蒔く者は、肉から腐敗(滅び)を刈り取るが、御霊に蒔く者は、御霊から永遠の命を刈り取る。(ガラテヤ6章8節)」と言いながら女を犯し、至福のなか、恍惚な表情を浮かべながら銃を向ける警官たちに向かって裸体の姿で男根を天に向かって突き上げながら言った。
「あなたがたはいつまでも自分を知らない為、自分を惑わし、他人から惑わされる。悪を以て悪に打ち勝つことはできない。愛を以て、悪に打ち勝ちなさい。」




















Leon Vynehall - Worm (& Closer & Closer)