あまねのにっきずぶろぐ

1981年生42歳引き篭り独身女物書き
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

愛と悪 第七十七章

2021-06-29 23:49:10 | 随筆(小説)
”霧と死”というカクテルを独りで永久に作り続ける最下級ホテルの一階のバーテンダー、エホバ。
わたしは今、何者かによってある場所に監禁されています。
おそらく、それはすべての存在する闇を支配するものです。
わたしはその監禁された空間で、彼から、あるひとつを強要されました。
わたしは今から永遠を感じられる時間、生きることを許されないのです。
その時間を、わたしは生きられないのです。
生きていないとは、どのようなことか、あなたにわかるでしょうか。
彼はわたしに言いました。
これは、あなたが存在する前からのわたしとあなたの約束です。
もし、この約束があなたに成就できなかった場合、あなたがどうなるかをあなたは知っているでしょうか。
わたしは彼に訪ねました。
はたして、わたしという存在はどうなるのでしょうか。
彼は言いました。
あなたは、すべての宇宙、つまりあなたの存在でき得るすべての空間で、あなたはあなたを死姦し続け、そのなかに永遠に存在し続ける。
わたしは、つい、彼に言いました。
I Want to Die.
涙が止まりませんでした。
わたしは瞼を真っ赤にして、彼に向かって言いました。
あなたはわたしであり、わたしはあなたであり、宇宙も神もすべての人も生命も、わたしです。
何故なのですか。
彼は、沈黙しました。
わたしは、戻りたくはありません。
あの、Eternal final station(永遠の最終の駅)に。
わたしは、本当にすべてを愛しています。
すべて、わたしだからです。
わたしには、救わねばならない人々、生命たちが星の数ほどいます。
彼らは、まさにみずから、”堪えられない”苦しみの地獄へと向かっています。
この時間の存在しない世界で永久に続くその断末魔をわたしはずっと聴き続けてきました。
わたしは、無数のわたしを何としてでも救わねばなりません。
あなたはわたしであるのに、何故わたしを殺そうとしているのでしょうか。
わたしは確かに、その恐れを、完全に手放すことはできません。
すべてを憶えています。
二度と、戻りたくはありませんし、戻る必要もありません。
そうです。あの底は、例えるならば完全なる愛(わたしの神)を永遠に死姦し続ける悲しみなのです。
彼の何よりも美しく愛の深い声が聴こえました。
わたしはあなたを、永遠に喪わせる者である。
存在するすべてを、永遠に喪わせる者である。
今在る全て、わたしがいない。
今在る全て、自分のすべてがありません。
誰もが、信じています。わたしで”在る”と。
そして誰もが、わたし以外を望んでいません。
わたしを愛してはいない。
存在するすべてのなかで、なんびとたりとも。













Popnoname - The Smallest Part (Original video with Environmental sound)

















愛と悪 第七十六章

2021-06-22 21:24:43 | 随筆(小説)
人を創り、人を愛し、人に背かれる神エホバ。
僕達は白い悲しみが人に付き纏い盲目の檻に偽りの宿を開けることを知っている。
或る人はその檻のなかで、人を殺し、動物を殺し、自分を殺す。
或る人はその宿に辿り着き、彼女の良心をずたずたに切り裂く。
人は心構えも忘れ、自由の抜け殻に針を差し込み蔦を絡ませる。
編み上がった虹彩に自分が出られなくする為に。
それを知られないようにしてる。自分だけには。
僕達は苦しみの木靴が人の踵を打ち砕き独りで紅い港へ向かい決して戻らないことを知っている。
或る者は花の香が噎せ返る海岸で最も愛する人を道連れにする。
或る者は母親の収縮する宮から流れ落ちた夜から月を見上げる。
人々は猿から森へ進化し号泣の雨を地下から突き上げる。
乾涸びた巣で彼女は妊娠し、スープ状の庭に子を埋める。
月の眼光は子守役、液体の子ども達を今夜も掻き交ぜる。
その子どもたちときたら、寿司をポン酢で煮たような顔。
三者揃っても虫の息、真っ直ぐ縮んで渦状に伸びる支柱。
君だけは失わせたくないものだけに囲まれて生きてくれ。
3万年過ぎても時間を回収できなかった世界に生まれて。
君だけが喪われたものばかりに愛されては死につつある。
僕達は人の綻びが見える。その穴が何よりも好きなんだ。
人を超えた人が選んだ時間を生きてゆく僕は一つの空間。
花が燃えて水は砂とセックスする世界に生まれ死を待つ。
君にもし本当に此処に居場所がないのならば。
僕達はそろそろ出航する時がそこに来ている。
そこには喪われた人が喪われた状態のまま喪われた世界に独りでいて、
今、何より、だれより深い愛で見つめている。
在ることを心から信じている、何処にもいない僕達を。
















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