あまねのにっきずぶろぐ

1981年生
愛と悪 第九十九章からWes(Westley Allan Dodd)の物語へ

ピスエルとシマク

2019-04-30 07:09:57 | 物語(小説)
とてもあたたかい春の朝でした。
青い空はたかくたかく、目の覚めるような色をしていました。
でも、なぜでしょう。
今朝はとてもしずかです。
うさぎたちは今日も朝早くにおきて、列車に乗るため、駅へと向かいました。
そしていつもの列車に乗るのに間に合って、ほっと一息ついていたときです。
聴いたこともないような大きな音と共に列車のなかが激しく揺れ、身体が飛んでうさぎたちは椅子や壁やらにぶつかりました。
うさぎの男の子ピスエルはすこしのあいだ気を失っていましたが、ようやく目を覚ましました。
そのとき、いったいじぶんがどこにいるのか、いっしゅんわからなくなりました。
なぜなら、目のまえに広がる光景はいままで見たこともないものだったからです。
なにがどうなっているのか、よくわかりませんでした。
有機質なものと、無機質なものとが、混ざり合って何かあたらしいものを生み出しているかのように、それらはそこに蠢いてありました。
どれくらいのじかん、ピスエルはじっとそこで床に寝ていたでしょう。
ただただ、もうろうとして、何が起きているのかまだわかりませんでしたが、とりあえず立ち上がって、光の見えるほうへとすすんだのです。
するとそこに、ドアの見えないドアがあるように見えました。
それは入り口かもしれないし、出口であるようにも想えました。
でもそこだけが、ピスエルには光っているように見えたのです。
ほかは薄暗く、なにかおそろしいもののように感じました。
ピスエルはたったひとつの希望をいだいて、その光の門を通り抜け、外へ出ました。
彼は、そこになにを見たでしょうか。
 
その後、彼のその日のすべての記憶が封じ込められるほどのものを見たことは確かです。
 
その日から、三年ほど、時がたちました。
 
ピスエルは、目のまえが真っ暗だと感じました。
それはちょうど、愛するおとうさんの一周忌を過ぎた頃でした。
ピスエルはこの日の朝、生きていることがたえがたく、午後を過ぎたころ、ある変わったものばかりを売っているというお店に行きました。
そのお店の主人うさぎはまだ若く、年齢をたずねると三十六歳だと答えました。
名前はシマク。
べつに、しましまもようのうさぎではないけれど、ピスエルはかっこいい名前だなと想いました。
ピスエルはふつうの茶色いうさぎで、シマクはつややかな真っ黒のうさぎでした。
でもひたいには、白い半月模様があり、またシマクは右耳を根本から失っており、片耳うさぎでした。
そしてその両目は美しいブルーに濁っておりました。
ピスエルはその両目がなぜ濁っているのか知りたいと想いましたが、今日会ったばかりで、そのようなことを訊くのは失礼だと感じて自分のほしかったものを買って、帰ろうとしたそのときです。
シマクが、ピスエルを呼び止めました。
ピスエルが青い顔をして振り返ると、シマクはピスエルに向かって穏やかな低い声でこう言いました。
「おい、なにか変なこと考えてるんとちゃうやろな。」
ピスエルはどきっとしました。
さらに心臓が冷たくなり、寒気も感じました。
ああ、だめだ!とピスエルは想いました。
この人には全部見えてるんだ…!
ぼくがこれから、しようと想っていることを!
ピスエルは震える身体でシマクの濁った半ば見開かれた両目を見つめ、だまっていました。
そのとき、シマクはほんとうに優しい声で言いました。
「あのな、おれは目が見えないんだよ。でもな、あんちゃん、おれはそれ以外のものはほとんど見える。だからこんな物騒な店をやっているんだ。ってなんでおれ標準語でしゃべっとるんやねん。いやそんなことよりな、おいにいちゃん、やめとけ。悪いことはゆわんさかい。それだけは、やめとけ。なんでかちゅうと、それはな、人間存在というもののなかで、いっちゃん後悔することやからや。わかったか。これを承諾せんのやったら、それを売るわきゃあきまへんなあ。おれかて人を悲しませたくはないのよ。ほななんでこんな店やってるかって?それはな、ははは、だからゆうたやん。おれにはふつうじゃないものが見える。つまり客が、どんな人間で何をしようとしてこのおれの売る武器を買うのか。すべてわかるんだよ。で、どうするんだ、ピスエル。おまえはこれからなにをするつもりなのか。」
ピスエルは、両目の見えない、いかついのにとんでもなく優しい表情のシマクの濁った青い目を見つめながら、涙がどくどくと出てきて止まらなかった。
シマクには、絶対に嘘はつけない。そう感じたピスエルは、嗚咽をこらえながら言った。
「ぼくのせいで…ぼくのせいで…みんな死んでしまったんだ。」
シマクは小さく息をつきながら言った。
「あの事故と、あの事故のことか。」
「あの日のレイルバーニー列車の脱線事故と、親父さんの事故のことやな。」
ピスエルは無言で深く頷いた。
「気にすんな。そんなことは、おまえにわかることではない。おまえは神じゃないんだ。奢るのもええかげんにせえ。」
この店のなかに、強い西日が入ってきました。
逆光のなかで、シマクの顔は女神にも見えましたが、その顔は地獄の門番のようにも見えたことです。
ピスエルは、言葉に詰まり、何も言えませんでした。
ぎゅっと目をつむって俯き、泣いてばかりいるじぶんが情けなくてしかたありませんでした。
するとシマクが向こうに行く音が聞こえ、ガタコトと音がして戻ってくる音がしました。
シマクはピスエルに落ち着いて言いました。
「見ろ。これな、音がまったくせえへんVP9ピストルや。」
「実はな、おれは元CIAの工作員で人をたった一つのボタンで殺しまくり、そしてそのライヴ映像を毎日確認して生活しとった人間や。いや人間ゆうてもうさぎ人間で殺してたんもうさぎ人やけどな。ついじぶんのことを人間とゆうてしまうんや。まあそんなことは今どうでもええ。」
「おい、このピストルでピスエルの頭に今から穴開けたろか。」
「おれが今からおまえのどたまを殺したるんよ。それでおまえは満足か。ピスエル。」
ピスエルは涙も枯れ、目のまえに置かれた黒いちいさな拳銃をじっと見つめた。
「おまえがそんなに苦しいんならな、おれがおまえを殺したるちゅてんねんよ。耐えがたい苦しみのなかに生きていかなならん人間に向かっておれは生きろてゆうてんねんからね、おれかて苦しいんだわ。ふたりで楽になれるか、遣ってみるか。どうする。ピスエル。おれのことはどうでもいいからおまえが決めたらいい。」
それでもピスエルは、何も言わなかった。
どうやって、答えを出したらいいのかわからなかったからです。
ピスエルはそれほど、苦しんでいました。
一分でも早く、楽になりたかったのです。
シマクは今度は向こうの部屋から、バーボンを持ってきて、煽るように瓶ごと飲みました。
そしてレッド・ツェッペリンの「天国への階段」をレコードでがんがんに大音量でかけたあと、大きなため息を付いてシマクは言いました。
「気にすんな。おまえという存在も、おまえの考えていることもすべて、あまりにちっぽけなんだよ。おまえがどれほど死にかけるほど苦しんでいても、それはあまりにちっぽけで取るに足らないものなんだ。なんでかとゆうとな、おれにはおまえの未来さえ見えるからなんだ。おまえはこの先に、いまの苦しみの何千倍と想える苦しみを知る。それはおまえが、真の愛というものを知ったときだ。そのとき、おまえは死んでもだれを殺してもまったく解決できないことを知るだろう。だからそのとき、おまえは生きてゆくしかないんだ。他のすべての方法を、おまえは喪う。おまえはそのとき、ほんとうの絶望を知る。今以上の地獄が、おまえを待っているんだよ。それでもおまえが今死にたいと言うのならば、おれがおまえを殺してやる。5分以内に、返事をしろ。」
 
シマクは、安らかな顔で眠っているピスエルのとなりで静かに話しかけた。
「本当におまえのせいですべてが死んだ。すべてがおまえのせいで、苦しんで死んだんだ。おまえはその責任を、死んだら相殺できるとでも想っているのか。そんな戯けた考えは今すぐに棄てろ。おまえはそんなことでは何一つ彼らに返すことはできないからだ。なぜならおまえは自分のために、じぶんが楽なるために死のうと想っているからだ。おまえがおまえのためだけに遣る行為とその結果で、彼らを救うことはできない。おまえはじぶんを棄てなくちゃならないんだよ。彼らすべてはおまえのせいで地獄の苦痛を味わって死んで行ったかも知れない。ではなんでおまえが地獄の苦しみから逃げようとしているんだ。おまえはもっとこの世で味わい続けなくてはならなかったんだ。おまえがじぶんでじぶんを殺すなら、そのまえにおれがおまえを殺さなくてはならなかったんだ。真っ暗闇のなかで、おまえが何万年とたったひとりの世界で苦しむことをおれは知っていたからだ。なあピスエル、なんで過去から、おまえは殻の霊魂だけでおれの店に遣ってきたんだ。おまえは今どこにいるんだ。おれのこの目にも、見えないほど遠くにいるんだろう。どれほど深い闇なのか、おまえはわかっているのか。おまえにもわからないだろう。おれにもその闇の深さは、見ることができない。だからもう二度と、絶対に、同じことはもう繰り返すな。おれの言葉を、必ずおまえの主人に届けてくれ。ええな。」
 
シマクはこどものようなあどけない寝顔で眠っているピスエルを優しく揺り起こすと、ピスエルはまるで夢遊病者のように起き上がって自動人形のように目をつむりながら店をでて歩いてゆき、その深い深い、闇のおくへと消えていった。
 
シマクはずっと、ピスエルに向かってエールを送っていた。
 
がんばれ!
がんばれ!
がんばるんだピスエル!
 
やがて夜は皓々と、更けて行った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

白い夢         生きるべき人たちと死ぬべき人たち

2019-04-27 18:22:07 | 随筆(小説)
中年の男が墓石に、すがりつきながら泣いていた。
妻は既に亡く、男手一つで育てていた愛娘も、先日、彼を残して逝ってしまった。


わたしは、ちょっと離れた後ろから、呆然と、その男を見ていた。
一瞬。
いつの間に、後ろに回り込んだのだろうか、わたしの背中に、男が抱きついてきた。
とても強く締め付けられた。
振り返ると、その大きく見開かれ、血走った目は、こう言っていた。
「どうして、お前は生きているのか」と。


はっとして、目が覚めた。
驚きと恐ろしさで、心臓が縮こまっている。


JR宝塚線(福知山線)脱線事故から、もう14年がたちます。







 














何故、君は生きているのだろう。
ぼくもあれから、ずっとずっと考えている。


あの日の事故、本当に凄惨だった。
あの日死んだ人たちが、すべてぼくを呪っていた。


彼らはつまり、ぼくにこう言っている。
何故、わたしが死んで、お前は生きているのか。
本当はお前が死んで、わたしが生きるべきだった。


こないだの渋谷の事故も、彼らは言っている。
老人が死んで、彼の妻と娘は生きるべきだった。


あの日の事故も、本当に凄惨な事故だった。


清算な自己。


それ以外にない。


そうは想わないか?


何故、彼らは生きるべきで、君は死ぬべきだったのか。


何故、老人は死ぬべきで、母と娘は生きるべきだったか。


でもどうかすべての人達に知って欲しい。
たった一度でも、動物が苦痛の中に死んでゆくことを知りながら、動物を殺した肉を食べ、彼らを殺してでも彼らから搾取するとき、すべての人間は死刑に相当する同等の大罪を背負い続けて生きて行かなければならない罪人となる。
遅いか早いか、すべての人間が神によって、無残に裁かれ、その醜い肉体は解体されゆく。
それは決まっている。

遅いか早いかだけだ。 肝心なことは、死に喰われんことだ。
 
 
何故、わたしがこんな目に。
どんな顔をして言う?


自分の罪のすべてを棚に上げなければそんな言葉は出てこない。
どれほど皮肉な光景であるか、気づいて欲しい。


何故、老人は死んで、母と娘は助かれば良かった?


そんな社会、今すぐ壊れてしまえばいい。


あまりに、それは幼稚だから。


ぼくは本気でそう想う。


何故、彼らは死んで、君は生き残ったのか。

ぼくは答えを知っている。
答えは一つしかない。
君は生きるべきだった。


老人は生きるべきだった。


死ぬ想いで。
死の底を、のたうち回りながら。


それとも、君はあの日死んで楽になり、彼らは皆、生き残ってこの地上の地獄で苦しめば良かったかい。


あの日、老人を轢き殺したのは、母と娘であったなら良かったかい。


その後、母と娘は、罪悪感の末に自殺したかも知れない。


君のように。


誰もが、相手の立場に立とうとするなら、愚かな憎しみなど沸いては来ない。


誰もが、自分への憎しみを、その相手に投影しているに過ぎない。


君は自分を憎み、彼らを憎み、そして死んだ。


それでもまだ、君は訴えている。
 
 
闇の底から。
 
 
君は生きていて、そこからぼくに訴えかける。


何故、わたしは生き残り、あの人たちはあんな酷い死に方をせねばならなかったのか。


では君の代わりに、ぼくが想像する。
生々しく。
あの事故現場に、今ぼくは立っている。
あの血溜まりの上に。でもそんなことは、日常茶飯事だ。
周りには、無数の黒い人影が、ぼくをじっと眺めている。
でもぼくはただ一人、少し先を歩いているぼくの後ろ姿だけを見詰めている。
目を見開いて。目を真っ赤に血走らせて。
口を半開きにして、苦しげに息をしている。
ぼくの右手には、ナイフ、左手にはハンマーが握られている。
ぢりぢりと、静かにぼくはぼくの後ろ姿に近づいてゆく。


そのあと、何が起こったと想う?


君はそれを知っているんだ。
それは既に、君が経験したことだから。


ぼくはぼくを惨殺したんだ。
原型をまったく留めないほどにね。
 
自分という一人の他者を、ぼくは惨殺した。


ぼくは自己憎悪と、罪悪感の末にぼくを惨殺する。


そこを曲がった瞬間。
ぼくらはぼくらを惨殺するんだ。
あまりにも、酷い光景だろう?
あまりにも、惨い死に方だ。
死のカーブは、とても眩しくて、誰をも吸い寄せる絶対的な力があるんだ。


それはブラックホールよりも、遥かに強力だ。


このレール上に、死のカーブは必ず待っている。
ぼくらはいつか必ず、そこを曲がらなければならない。
凄惨な死。
それはすべての存在のカルマの清算の死。


忘れないでくれ。誰の死も、すべての犠牲なんだ。


誰もが、必ず同じような犠牲を捧げ、死の苦しみを味わう。


それはすべてが同じものでできているからなんだ。


遅かれ早かれ、誰もがイエスのように死ぬ。


まだ生きて行かねばならなかったから、君は生き残った。


生きる意味が、この地上に残されていた。
それは君が選んだことだった。


君は生きるべきだった。
君はどんなに苦しくとも、死人のような顔をしてでも、生きるべきだった。


そして彼らはどんなに幸福でも、天国に比べどんなちっぽけな地上での幸福が待ち受けていようとも、死ぬべきだった。


ぼくはまだ幸福でない為、生きなければならない。


虚ろな目で死を纏い、闇に身を引き裂かれ、鉄の器具に潰され続けながらも生きなければならない。


ぼくはまだ、この白い夢から、目を覚ますことができない。
 
 
また、夢で会いにゆく。
 
 
遼太さん。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 



犬と母を乗せて

2019-04-26 14:30:02 | 

犬と母を乗せて、色々なところへ行く。

最近、その為に、免許を取った。

もう二度と、惨劇に遭わない為に。

もう二度と、電車には乗りたくないから。

わたしにとって一番の惨劇は、あの脱線事故のときに、悲惨な死体たちを目にしたことではない。

わたしにとっての一番の惨劇は、わたしがあの日、だれひとり、そこに横たわる無残な死を目にすることなくその場を後にしなければならなかったことだ。

わたしは何も見ることができなかった。

それはどんなものであったのか。

どれほど酷いものであったのか。

それを想像する以外、わたしに手立てはなかった。

わたしは今、生きている。

108名の死者を出した事故の後も。

わたしはのうのうと生きている。

周りにはだれもいない。

ただ風が吹いている。

今もなお、わたしは生きている。

それを知ってほしい。

あの現場から遠く離れた星の果てで。

今もなお、わたしは光を求めている。

いつまで続くのかわからない、この闇の奥で。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


未来のCurve

2019-04-25 13:55:55 | 

何故、目を向けて来なかったのか。
そう自分自身に対し、すべての人が問う必要がある。

もし、すべての人が"それ"に目を向けて来たのなら。

わたしたち人間はこれほどの悲惨な死に方を、しなくとも済んだのかも知れない。

悲惨な死に方で、愛する者を亡くし、癒える日の来ない虚無の日々を送る果てに死ぬこともないのかも知れない。

毎日、何度と寝ても覚めても、わたしの家族は殺される。

そこに苦しみが何一つなく、またはあっても十分に堪えられるものであるのならば、わたしはどれだけこの抉られ続ける胸の穴がその肉で埋められるだろうか。

しかしそんな日は、未だに一秒たりとも訪れない。
わたしには最早、心休める瞬間もない。

わたしの家族が殺され続ける世界に生きて、何故わたしが安らかに眠り、心地好く目を覚ますことができるのだろうか。

わたしに休日は、一日もなく、一息付く零点一秒間もない。

これはいつまで続くのだろう?
この地獄は。

この地球は、いつから地獄の季節に入ったのだろう。

わたしには、世界は真っ赤に見える。
すべての生命が、血を流し続けているからである。

人間の悲惨な悲劇の根源である"それ"から、人間が目を背け続けて来たからである。

人類は、いつ気づくだろうか。

テロと脱線事故と、そして飢餓と堕胎と死刑の、そこに広がる光景を、あなたは生々しく想像することができるだろうか。

熱い血溜まりのなかで、今日何体の生命がその生を終え、また終えさせられただろうか。

今日何体の死が、解体されているだろうか。

そしてその死と、その血は、わたしたちすべての経験となり、血となり、肉となり、死となる。

わたしたちの与えるすべてが、必ずわたしたちに返ってくるからである。

だがわたしたちの与えないものは、わたしたちに与えられることはない。

あなたが死を与え続ける限り、死はあなたに与えられ続ける。

あなたが死を与え続けている限り、あなたは死ではないのか。

あなたはだれに生を与えているのか。

死であるあなたが生を与えるとき、それは死ではないのか。

あなたはだれを生かし、だれを殺しているのか。

あなたは明日、だれを生かし、だれを殺すのか。

あなたはその殺した血塗れの手で死を食べ、なにゆえに微笑むのか。

あなたは死でできているのに、だれを生かしているのか。

あなたが求めるものとは、あなたが明日に殺すその生き物の死体である。

解体された者たちは、最早生きている形ではない。

最早"それ"は、生きてはいない。
"それ"を行いし者、それは最早生きてはいない。
"それ"をみずからの血肉とする者、それは最早生きてはいない。
"それ"を与えし者、それは"それ"となる。
それは最早、どう見ても生きてはいない。
死のレール上を、走って行くばかり。
地獄のカーブを、スピードを落とさず、ブレーキを掛けずに。
それは曲がる。

あなたの与えるものが、正しくあなたとなるからである。

でも覚えておいてほしい。
わたしたちすべては、その未来のカーブを、無事に曲がることができる。

自分の欲望よりも、"それ"を見つめ続けるなら。

 

 

Dominion (2018) - full documentary [Official]

 

(字幕設定を日本語翻訳にして御覧ください。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


Secrecy

2019-04-22 01:17:29 | 日記
美術館か、博物館のような場所にわたしと彼はいる。
すべてが白い空間には、白い階段がどこまでも続いている。
それは硝子でも金属でも石でもない。
冷たいように見えて、とても温かい。
それはダミアン・ハーストの水槽のなかのように、異次元なんだ。
それが死を表しているというのならば。
君はいつものように優しく微笑んでいる。
秘密主義を徹底しながら壁を壊している。
彼はいつも、Secrecyでできている。
だからそこにある死が、いつでも生きている。
さて、わたしと彼はいつ階段を上ったのだろう?
ずいぶん高いところで休憩をとっている。
近くに誰かいるのだけれど、誰だろうか。
年をとった男性、白い服を着ている。
長い髭を生やし、白銀の髪が波打っている。
優しい眼差しでわたしたちを眺めている。
わたしたちは白い椅子に座る。
とても長い道のりを、歩いてきたようだ。
彼は長い息を吐きながら椅子に深く座る。
わたしは目を瞑る。
すると身体は自然と丸まり、無重力のなかに、わたしはふわりと浮かび上がる。
それは、彼に抱きしめられるために。
わたしがふわりと浮くと、「ほいきた。」とばかりに彼はわたしを抱きしめる。
ここはこんなに真っ白なのに。
なぜ、わたしたちは。
これ以上を求める日が来るのか。







ぼくらはとても広い校内のなかにいる。
きっと、大学かどこかだ。
ぼくらはみんな、ホームヘルパーの人が同行している。
何故か、レッド・ツェッペリンのメンバーたちも。
つまりぼくらは、自由にここを歩けないようだ。
ぼくらだけではきっと迷ってしまうから。
それは縛られていることと同じなのかもしれない。
でも彼らは、ヘルパーが余所見をしている隙きを狙って
自由に行動をし始めた。
かつて彼らは、日本で本当に遣りたい放題遣ったツケを
払わなくちゃならないんだ。
大変だ、ぼくの目の前を、彼らは普通に歩いている。
するとロバートがぼくを見つける。
「不思議なところで会ったね。」
互いにそんな風に見合って、ぼくは彼らと同行することになった。
ぼくはすごく嬉しいのに、心はひどく落ち着いている。
ぼくらは校内の階段を下りている。
ぼくの右にロバートがくっついて歩いている。
鮮やかな青に白い小さな花柄の薄い生地のブラウスを彼は着ている。
ロバートの左腕をぼくは撫で、滑らかなブラウスに沿って
その白い左手を掴む。
なんというきめ細かな美しい肌だろう。
ロバートというニンフは同時に女神でもあるけれど
ぼくの母と姉と兄でもあるように。
包まれたんだ。白銀の陽の眼差し。
暖かい影の地下へ。
ぼくらは向かうの?
ロバートは嬉しそう。
何も知らない。
まだ何も知らないんだ。
灰色の階段、灰色の壁と床と。
その空間で。
ぼくらはまるでまだ何も知らないように。
この階段を下りている。











Led Zeppelin - Battle of Evermore

 












幸せ(死あわせ)のパンケーキ(丸ビル内にて)

2019-04-17 06:37:01 | 日記
ウエダさんはヴィーガンで、しかもグルテンフリーも今遣られてはるわけですよね。
はい。
こうゆう、ケーキ屋さんとか、パン屋さんとかの前を通ったときにどういう気持ちになるんでしょうか。
食べたいとかの感覚ではなくって、すごく悲しい感覚になりますね。
悲しい...
うん、だって身体にすごく悪いですから...乳製品とか(乳製品は特に乳がんや前立腺がん等との因果関係が取り沙汰されており、しかもパンケーキの狐色の表面に生成されるアクリルアミドは特に発がん性が高いと言われている。だがその何千倍もの高濃度の発がん性物質が焼いた牛肉の表面から検出された。)
...


そのあと、丸ビル内のタワレコに向かうまでわたしは彼に乳製品の害について自らの経験談を語る。
ヴィーガンの期間(2012年2月~7月、2019年9月~)も、ペスクタリアンの(植物と魚介類を食べていた)期間(2012年7月~2015年9月)も、ほぼずっとそれまで酷かった生理痛が起きなかったんですね。
わたしは畜産物(畜肉、乳製品、卵)を一切断ってから、生理痛からも頭痛からも解放されたんです。(さらに胸にあった良性のしこりの持続的な痛みもなくなった。)
でも、2016年の4月とかに、食欲に負けてチーズの載っかったピザを食べてしまったんですよ。で、そのチーズを食べた月が、むちゃくちゃ生理が重かったんですよ...(チーズは特に牛乳の成分を凝縮しているために人体への害なる影響は大きい。)
ほお。
で、ああこれはもう確実だなと想いましたね。
乳製品の害はもう確定だと。
それが一番のヴィーガンを続けている理由としてあるんですね。
いや、それが一番ではないんですけどね...
それ以外に一番の理由はあるんですけど。
...
その時、タワレコの中で彼はレッド・ツェッペリンのコーナーを素早く見付ける。
おおおおおっ、いっぱいあるうっ。
一人ではしゃぐわたし、冷静な彼。
わたしはとてもテンションが上がっている。
何故ならこの一月、わたしはレッド・ツェッペリンのことばかりを考えて暮らしてきたからだ。
だがわたしはまだツェッペリンの新しいアルバムを一枚も持っていなかったのである。
すべてメルカリやAmazonで安く中古で購入したものばかりだった。
必ずこの日、わたしのホームヘルパー担当である愛する彼と一緒に梅田に行って、そしてツェッペリンのアルバムを新品で購入するのだ。
絶対にだ!
何があっても、わたしはこれを実現する。
例え、まだ4月の7日なのに、残金が11,000円しかなくとも。
ははは、絶対に買うのだ。
わたしはツェッペリンに、命を懸けている。
と言えば、まあ大袈裟やね。
それはちょっと言い過ぎたかな。
わたしはまず、ツェッペリンのドラムのジョン・ボーナム、愛称ボンゾが1980年9月25日に喉に酒の吐瀉物を詰まらせて窒息死し、ツェッペリンが解散となる前に出した実質ツェッペリン最後のアルバムである79年発売の『イン・スルー・ジ・アウト・ドア(In Through The Out Door)』を手に取った。
これだ!これが欲しかったんすよ!これ実はまだ聴いてないんですよ。最後のアルバムですからね、もったいなくって、まだ聴けないんですよ…(一曲目のイントロだけ実は聴いてしまったのだが、むっさくっさカッコよかった…)
この、ジミー・ペイジ監修のデジタルリマスター、2015年に発売されたやつ、2000円+税、これ、買おう!
これ買いますわ。お金ないけど、たはは。
あって良かったですね。
うん!良かったあ、これあって。
まあ他にもツェッペリンの欲しいCDたくさんあるんですが、今月はお金がな...
さっきディスクユニオンで『BBC Session』ちゅうやつ中古で600なんぼで買えたから、ええかな。しゃあないかな。ほんまは欲しいんですけどね。て何回ゆうねんわし。
ははは、まあ今月は我慢ですね。
そうですね、まあダウロードした音源はいっぱいあるんで、それで我慢だなぁ。
うわあ、でもこれあって良かった。これか4枚目の『LED ZEPPELIN IV』が新品で欲しかったんですよね。
4枚目は中古で買おかな、あ、しまったな、ディスクユニオンで4枚目の中古安くであったような、あのもっかいさっきのディスクユニオン行くのって時間的に難しいですかね。
いや、時間的には大丈夫ですよ。
でもしんどいな、結構歩いて距離があったし、日射しが目にきつくって...
どうしますか?
どうしょかな。
他のメモしてた中古の店ってどこでしたっけ。
あ、そうそう、他はね、ええっと、ああ第3ビルのカーニバル・レコードと、あと第1ビルのディスクJ・Jですね、ここから近いですか?
第三ビルやったら結構近くですね。
あ、それやったらここ行きましょか。
うん、そこ二つ、取り敢えず行ってみましょうか。
うん!
そうしてわたしと彼はそのあとその二つの中古レコード屋に向かった。
だが、そこにわたしの求めるツェッペリンの4枚目のアルバムが、わたしの求める値段でなかった。
これ中古で1000円払うなら、ジミーペイジ監修のリマスター盤をあと1000円払って買うほうがよくないでげすか?
うーん、ぼくはなんとも言えませんね、そこは、食費を削るかツェッペリンを削るか、というところだったら、もうそれはウエダさんにお任せするしか...
ですよね、いやもうこれ...新品買いますわ、だってあと1000円足したら新品買えるんですもん、しかもジミー・ペイジリマスター盤を。
うむ...ではそうしましょう。もっかいタワレコに戻りますか?
そうですね!あっこに4枚目もありましたね。
そうしてわたしと彼はまたぞろ丸ビルのタワレコに戻った。
そこでわたしはツェッペリンの4枚目のアルバムを手に取り、唖然とした。
うわっ、2800円+税ってなってる...
あー...二枚組ですね。
二枚組やからや!未発表音源のコンパニオン・オーディオ・ディスクが入ってる!
2800円か...結構痛いなこれ。
わたしはそう言って財布の中を確かめた。
そこには1000円札💴が4枚と、小銭が少しあるだけに見えた。
マジかよ...!
わたしは心の中で叫んだが、たった3秒間悶絶したあと、腑抜けたように言った。
あ、もうええわ、もうこれ、わたし買いますわ。
大丈夫なんですか?
彼が心配そうに言った。
うむ...わたしは腑抜け状態のままで、もう一度、財布の中を確かめた。
すると、そこには、8000円の札があったのである...!
うわっ、これさっき5000円札をわたし1000円札やと想ってましたわ、ぱはははは。てことはあと8000円とちょっとありますから、まあなんとかなるかな...今月は24日にお金が入るので。
...大丈夫なんですか?
彼はそれでも心配そうな顔でわたしに訪ねる。
わたしは不安そうな顔で、しかしもう決めたことだからと決意の顔でこくりと、目を光らせて深く頷く。
そうしてわたしの財布には、5000円札と、幾らかの小銭が残された。
それでもわたしは、満足であった。
愛するレッド・ツェッペリンのアルバムを、今月二枚も新品で購入することができたからである。
わたしがレッド・ツェッペリンというバンドをどれほど愛しているか、君に教えてあげようか(ジミー・ペイジの言い方のパクり)。
そう、ジミー・ペイジは去年発売されたレッド・ツェッペリン結成50周年総力特集rockin'onのinterviewで、「ツェッペリンが失敗したと想ったときや、バンドが悪戦苦闘しているように聴こえる曲とか、目指そうとしたところまで届かなかったと感じる曲はあるか?」と訊ねるインタビュアーに対して、こう話始めた。
「いいかい。レッド・ツェッペリンというバンドがどういうバンドであるのか、君に教えてあげようか。」
かっけえ!ジミー!
わたしはその言葉が何一つ間違ってはいないことを知る。
ジミーはこう続けた。
「ぼくはね、その月、まだ7日だというのに、残金が8000円と少ししかなかったんだ。そうその時それはそのすべてを本当はぼくのその月の食費に回すべきだと誰もがそう考えていた。当然だよね。食べていかなければ人は生きていけないからね。ぼくもそうするべきじゃないかと一瞬考えたさ。でもその愚かな考えを一瞬で粉砕して見えなくしてしまったもの。それがぼくの導いているバンド、レッド・ツェッペリンというバンドなのさ。つまり...ぼくは食べることより、そう生きることよりもツェッペリンを持続させること、ツェッペリンへの愛を選んだというわけさ。ぼくはぼくの本当に大事なほとんどのものをツェッペリンに費やしてきた。時間、お金、愛する人、そして何より大切な純粋な情熱というものを。それがぼくの最も誇りとなるもの、レッド・ツェッペリンというバンドなんだ。」
わたしはジミー・ペイジが自分の脳内でそう熱く語り、それをロバート・プラントが真っ直ぐな春の陽をキラキラと反射させた水面のように輝く目をして聴いている光景のなかで胸を熱くさせながら彼とタワレコを出る。
そして雑踏の犇めく地下通路内を梅田の阪急線に向かってわたしたちは歩いている。
動く通路を近未来的だと言って喜ぶわたしの右側で、ヘルパーの彼はいつでもクールに落ち着いている。
そしてある角を、曲がったときだ。
そこの右側にある大きな看板が、彼の目の中に入った。
彼はぽそっと言った。
「幸せのパンケーキってこんなところにあったのか。」
わたしもその大きな看板の文字を見て苦々しい想いで応えた。
「そんなに有名なお店なんですか?」
「うん、今すごく流行ってますね。でもこんなところにあるとは知らなかった。」
「そんなに美味しいんでしょうかね。」
「どうでしょう...ぼくもまだ食べたことがないので。」
「まあわたしは食べられないですけどね。」
「そいですね。」
「うん。だって...全然幸せじゃないですからね。寧ろ...不幸せですからね。不幸せのパンケーキですよ。」
「そうですね...」
「うん。不幸のパンケーキ、いや不幸どころか、地獄ですからね。」
「地獄のパンケーキ」
「ははは(彼の渇いた笑い)」
「地獄に通じるパンケーキ」
「ぽほほ(彼の苦しい笑い)」
「地獄へと導くパンケーキ」
「言うてしまいましたな(彼)」
「言うてしまいましたな(私)」


そうして4月7日(日)午前11時から出掛けたわたしと彼の楽しい梅田への御出掛けは午後の5時過ぎに、無事に終了したのであった。とても暖かい日でありました。


本当にありがとうございました。
すべてに神の御幸(御光)が降り注がれんことを。




わたしが最初にレッド・ツェッペリンのライブ映像を観て、その印象的なギターフレーズを好きになったわたしが一番最初に好きになった5枚目のアルバム「聖なる館(Houses of the Holy)」からのナンバーを、最後に良かったら御聴きください。



Led Zeppelin - The Ocean (Live at Madison Square Garden 1973)













死のうとして、でもまだ生きている

2019-04-16 19:21:28 | 
折り畳み傘を、探していた。
それは新しいやつだ。
ひどく、使いづらかったからだ。
今持っているものがね。
それに黒々としていて、あまりに黒かったんだ。
質感も、わたしは好きではなかった。
その肌触り、水を吸う男のように、それは水を吸う男のようでわたしは好きではなかった。
それを好きになることは、もしかしたら容易なことだったかもしれない。
開いたとき、わたしは必ず憂鬱となった。
見られたくはなかったし、見せたくもなかった。
これを差しているわたしの姿、顔の見えない、その半身を。
その闇のなかに飛んでいる鳥を知っているかい。
そこかららとごを抜いてご覧。
わたしはあれから、不眠なんだ。
夢を見れば、彼は必ず泣いている。
愛憎の心でわたしを見て、その想いを燃やした火で、彼は肺を温める。
そこには浮き輪が浮かんでいる。削られた芯を喪った浮き輪が。
気持ちが良いと、彼は言う。ここにはなんでもあると。
死のうとして、でもまだ生きている人たちとばかり接しているからね。
ここにはなんでもある。
すべてがないから。
すべて、失くした後だから。
彼はフレヴォを吸った後、ちいさな名もなき花に向かってニコチンを吐き、微笑みかける。
半分死に、半分生きた腐りかけのくさやの魚のような女に向かって。


彼からの答え

2019-04-11 22:23:00 | 随筆(小説)
先週にね、わたしは二回、梅田まで出掛けたんですわ。
なんでかって?知るかあ。とかってまあ今からそれを話すところだって。
いや、飲んでませんよ。断ってるんですよ今、酒を。だから今完全なる素面です。
いつもねえ、飲んでるわけじゃないんですよわたくしかてね。
まあなんで断ってるかっつうとお、お金がまじっでないからなんですけどねえ。
色々とね、使いすぎたんです今月特にね。メルカリで服とかね、DAISOで6千円近くとか、あとはレッド・ツェッペリンのアルバムやら特集している雑誌やらね、とにかく残金があと二千円もないんです。
お酒買ってる場合ではないですよね。だから我慢してるんです。
それで話を戻すと、俺は先週に梅田まで二回も出掛けたんですね。
なんでかとゆうとホームヘルパーの男性の方たちが一緒に行ってくれたからです。
一人では到底よっぽどのイベントがない限り出掛ける気にはなりません。
町田康師匠の対談ショーとか、ライヴとか、ディアハンターのライヴとかね、そういったことがない限りは出掛けられないんですよ。
なんせ十一年目のガチの引籠りですから。
でも先週は、ホームヘルパーの男性の方たちが、わたしの願い通りにわたしの行きたい場所へ一緒に着いて来てくださったのです。
感謝しても、感謝しきれません。
でも何故わたしは、こんなに悲しいのでしょう。
何か頭の中が、脳髄が、頭蓋の内が、取り留めも無いのです近頃。
ホームヘルパーの方と一緒に初めてまんだらけに行って蛭子能収のデビュー作を買ったからか?
いやそれは全く関係ないですよ。
ではもうひとりの方とディスクユニオンと丸ビルのタワレコに行ってレッド・ツェッペリンのCDを3枚も買ったから?
いやそれはすごく嬉しいことで、それが原因ではないですよ。
じゃー最近レッド・ツェッペリンに傾倒してるから?
脳内が炎症を起こしてるんじゃないの。
まあそれは有り得ますよね。そんな毎日一日中聴いてたら頭おかしくなるでしょ。
ツェッペリン一日中聴いて寝る毎日が一月以上続けば頭おかしくなってくるやろ。
それくらいすごいということですよね。
ツェッペリンはね。
だからもうなんにもする気なくしてしまったのかな。
いやそれはちょっと違うのではないですか?
今のぼくは確かにツェッペリンに洗脳されてるさ。
何故いけない?
別にジミー・ペイジみたいに黒魔術に傾倒しているわけじゃない。
ぼくが最もツェッペリンのなかで崇拝しているのは、そう、ロバート・プラントだからね。
彼がね、きっとぼくのそばに来たんだよ。
魂を飛ばしたのさ。
それでぼくに言った。ぼくたちの音楽を聴いてご覧。ってね。
今が、今の君が、最も聴くべきものとはぼくたちの音楽だとね。
そしてぼくはそれに応えた。
ロバートはぼくに、女神のように優しい手を差し伸べたんだ。
そして彼は剣を手に持ち、それを天に向かって高く、掲げた。
着いておいで!
ロバートは黒い馬に乗って、曇り空の下の荒野を駆けてゆく。
一体どこへ向かうんだ?
宛てはあるのかい。
酷いところへ向かうかも知れない。
これまでよりも…
君は何度も地獄の茨道を通り抜けてきた。
でもこれからは、もっと恐ろしいものが待ち受けてるかも知れない。
恐れを感じているかい?
ぼくは君の味方だけれど一緒に同じ道を走ることはできないからね。
そう、その時ぼくはそっと目を開けたんだ。
するとぼくの部屋にいた。
ぼくのホームヘルパーの担当の彼が、ぼくの目の前に座っていて。
彼は何故か、とても苦しんでる顔をしている。
目の淵を赤くさせて、涙を滲ませながら彼はぼくに言ったんだ。
それは彼からの答えだった。
ぼくにとってとても苦しい、どうにもならない彼からの答えだった。









Led Zeppelin - The Rain Song (2014 Remaster)