長谷川平蔵(松本幸四郎)
時の流れは人を変えることもある…。
前作『でくの十蔵』で捕らえられた盗賊、小房の粂八(和田聰宏)は、密かに師と仰ぐ盗賊、血頭の丹兵衛(古田新太)の兇行を聴き狼狽します。
粂八の知る丹兵衛は「殺さず、女を犯さず、貧しき者からは盗らず」の三原則をしっかりと守った、盗賊の鑑でした。
その丹兵衛一味が、押し入った先で家人を皆殺しにする「外道働き」を繰り返している。
丹兵衛お頭がそのようなマネをするはずがない。そいつは偽物だ!そう信じた粂八は、長谷川平蔵(松本幸四郎)に、その偽物丹兵衛を探索させてくれるよう、嘆願します。
粂八の中にある「真心」を見抜いた平蔵は、これを許可するのでした。
小房の粂八(和田聰宏)
鬼平犯科帳屈指の人気エピソード。ファンならばその内容を当然知っているので、いまさらネタバレもなにもない気もしますが(笑)。
大体最近の人はネタバレを気にし過ぎなんです。本当に面白い話は内容を知っていても、何度でも繰り返し観たくなるもの。鬼平犯科帳とは、そんな本当に面白い物語なのだよ。
それはともかく
人というのは良くも悪くも変わるもの。鬼平さんだって若い頃は、「本所の銕」と恐れられた悪童だった。きっかけさえあれば、人は善にも悪にも振れる。
闇に堕ちた丹兵衛と、闇から這い上がった平蔵と、二人の間で揺れる粂八の苦悩と決断。
粂八を演じた和田聰宏さん、良かったですね。粂八の苦悩、悲しみ、怒りをよく演じてくれていました。
そしてなんといっても古田新太さん。出番は少ないですが、背中になにか、「黒いもの」が見えるような闇落ち観がよかった!
粂八と再会したときに見せた「コワイ」笑顔、あれは凄いですよ。
古田新太って、良い役者です。
血頭の丹兵衛(古田新太)
第1シーズンはこれで終わり。全4話を通して1本の物語のような構成になっているのが面白かったですね。鬼平ファンにとってはワクワクな展開だったのではないかと思う。
私が個人的に気に入っているのは、浅利陽介演じる木村忠吾ですねえ。浅利忠吾は遊び好きで軽いところはあるけれど、お役目に関しては生真面目なところがあって、結構真っ直ぐな奴なんですね。
前回で自害した小野十蔵(柄本時生)への同情心をずっと抱えていて、その十蔵を死に追いやった野鎚の弥兵衛一味の生き残りでもある粂八に対しては、ずっと敵愾心を持っているんです。
そんな忠吾が、お役目をしっかりと果たした粂八を睨みつける。
少しだけ粂八を認めながらも、いやまだだ、俺は十蔵さんのこと忘れないぞ!という想いと、なんかね、そんな忠吾の錯綜した感情が見えるようで、浅利陽介上手いなあと、思わせていただきました。
木村忠吾(浅利陽介)
松本幸四郎版『鬼平犯科帳』第1シーズン。良かったですね。スタッフ、キャストの皆さんの意気込み、時代劇を後世に伝えて行こうという決意が見えた。そんなシーズンだったように思う。
これは第2シーズンが
楽しみだ。
時代劇の灯を消すな!
※ここで印象的だったセリフを一つ。
鬼平さんが粂八に言います。
「忘れるな。本物か偽物かを決めるのは向こうではない。お前だ」
例え血頭の丹兵衛が、粂八の知る丹兵衛から変わってしまっていたとしても、それを偽物とするか本物とするかは向こうではない。お前自身が本物か偽物かを決めるのだ。
昔々、某日本のロック・バンドが、「俺たちこそが本物のロック・バンドだ!」と宣っていると知って、シラケた気持ちになったことがあります。
「本物か偽物かを決めるのはアンタたちじゃない。我々ファンの側、音楽を聴く側が決めるのだ!私が本物だと思ったら、誰が何と言おうとほんものなのだよ」私はそう信じておりましたのでね。ああコイツら、何もわかってねえ。自分で本物を宣言するなんて
ダセえんだよ!
と思ったものです。
忘れないでください。本物か偽物かを決めるのは、向こうじゃない。
あなた自身が決めるのですよ。
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