※ネタバレ含む
推理モノで一番退屈するシーンは、実は「謎解き」シーンである、なんてことを言う方もおられるようです。
まあ確かに、探偵が話しているだけで動きがない。聴いているだけなので画が止まってしまう。だから案外退屈してしまう。ということなのかな?
まあ、感想は人それぞれですが、少なくとも本作に関しては退屈はないでしょう。
松子夫人(大竹しのぶ)と佐清(金子大地)との対面という、ある意味最大のクライマックスを、謎解きの真ん中に置くことで、退屈な謎解きを最大級に盛り上がる場面に変えた。
この場面の大竹しのぶさんの演技が本当に本当に、本当~~~に、
素晴らしい!!
金子大地(『鎌倉殿の13人』の源頼家役)の演技もまた、良かったし、あれは泣くよ!泣く。
さらには、謎解きの最中に青沼静馬の例の遺体が発見されるという、今までになかった展開を入れ込むことで、金田一耕助(吉岡秀隆)の無念がより強調されるという、ある意味とても無慈悲な展開に、思わず唸ってしまった。
金田一さん、悔しいだろうね。
吉岡秀隆演じる金田一耕助は、悲惨な事件に哀しみを感じながらも、謎解きをしている場面ではどこか喜々としているようにも見える、謎解きが楽しくて仕方がないというような、それでいてそんな自分の本音にある種の「申し訳なさ」を抱いているかのような、そんな「病的」なものを感じさせる演技で、飄々としているようで、どこかウソ寒さを感じさせる人になってる。
こういう金田一耕助像、吉岡秀隆ならではのもの。面白いですねえ。
この金田一さんの「病気」が、最後の最後で事件の核心を突いてくる。
上に挙げた感動の名場面を根底からひっくり返してしまう、事件の本当の核心。
でも、いまさらそこを突いたところで、もう遅い。事件は終わった。
金田一さんは思う、「僕はまた、何もできなかった…」
金田一耕助は、事件を未然に防いだことがない。事件がすべて終わった後に、事件の「解説」をするだけなんです。そういう意味では
「名探偵」ではない。
今回の金田一さんは、誰よりもそれを自覚しているし、この事件では、その自覚をさらに強める結果になってる。
残酷だよね、金田一さん、遣り切れないよね。
なんだか、金田一さんが可哀そうでしたよ。
こんな、人の業の恐ろしさばかりが強調された物語の中で、唯一といっていい救いは、野々宮珠世(古川琴音)の真っすぐな純愛。金田一さんもまた、ここに救いを感じてる。
珠世さんには幸せになってほしい、けど
けど…。
ある意味バッド・エンド。でも深い余韻の残るドラマではありました。
なんといっても大竹しのぶの演技!それと吉岡秀隆という存在!
これにつきる。
この映画も観ておけば良かった!
吉岡秀隆さん、好きな俳優です。
もうお一人、名前は分からないが好きな俳優さん?
いてます。
上野樹里ちゃんと夫婦役でバスクリンか何かのCMに出ておられる。
頼りな~いけど、植物さんにお水あげたり、樹里ちゃんを戦隊モノのコスプレして守ろうとしたり、
可愛げある男の子です。
横溝先生の作品は随分私も読みましたね。特に好きだったのが『悪魔の手毬唄』。市川崑監督による映画版も良かった!特に若山富三郎さん演じる磯川警部が素晴らしい!若山さんと言えば、強面な演技の印象が強いですが、磯川警部みたいな、チャーミングで哀愁漂う中年オヤジを演じさせてもメチャメチャ上手い!
大好きでした。