リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

東京オリンピックの中止・簡素化を阻んだ「米テレビ局への違約金」とは何なのか

2021-07-16 | 一般
国内の感染者数が急増するなか、来週、東京オリンピックの幕が開く。中止論は直前まで根強かったが、IOC(国際オリンピック委員会)は断固として認めなかった。無観客でも開催すれば、開催国は赤字でもIOCには巨額の放映権料が入る。それがゼロになる中止はIOCにとっては受け入れられないもので、早くから「緊急事態宣言のもとでも五輪はできる」とまで断言していた。(中止の場合の保険にははいっているというが、さすがに収入補填はないのだろう。だが開催都市契約第9条では、外部からの「収益の喪失」の補償の訴えは日本がかぶることになっている。IOCやJOCがはいっている保険(開催都市契約の第60条で言及)の内容についても精査が必要だ。)
だがIOCは中止はおろか、五輪の簡素化にも放映権をたてに反対していた。森喜朗会長(当時)が、五輪の閉会式とパラリンピックの開会式を取りやめ、オリパラ合同の開閉会式にするという簡素化を提案したところ、IOCは多額の放映権料を支払う米テレビ局との契約をちらつかせ「違約金を払えるのか」と迫ったという。入場行進する選手を大幅に減らす提案も、IOCは拒否した。(朝日新聞2021-7-16

オリンピック閉会式とパラリンピック開会式を一緒にすることで米テレビ局から請求される違約金とは何なのだろう。どういう場面を提供するからいくらの放映権料、などと細かく規定されているのだろうか。仮にその一部がなくなった場合、その分の放映権料が払われないというだけではなく、違約金まで払わなければならないのだろうか。その違約金というのはどれくらいの額なのだろうか。そもそも、そうした金額まで含めた具体的な情報は、JOCや組織委に共有されているのだろうか(仮に共有されていないとしたら、IOCのどんなブラフでもまかり通ってしまう)。こうしたことについて、もっと情報をオープンにして議論すべきだ。(日本のテレビ局から情報は得られないだろうか?)

そして仮にそうした違約金がIOCとテレビ局との契約から逃れられないものだったとして、それを日本側で負担する義務はあるのだろうか。
開催都市契約(東京都)の第9条はたしかに、IOCが被る損害や支出(放送機関などを含む第三者に支払うべきすべての費用、収益の喪失および損害賠償を含む)を開催都市、JOC、組織委がカバーすることを規定している(中止の場合は66条)。そうした損害や支出は「以下の事項に起因」するものと限定されているが、「以下の事項」には、開催都市、JOC、組織委の「すべての作為および不作為」がある。
なので、簡素化によってどこかのテレビ局から損害賠償を請求されたら、たしかに日本側が矢面に立つ必要はあるだろう。(言いなりに払わなければならないという意味ではない。開催都市契約はあくまでもIOCを免責しているだけで、そのような損害賠償を払わなければならないかどうかは別問題だ。コロナ禍でやむを得なかったという主張もできるだろうし、そもそもそんな反社会的な損害賠償を請求するテレビ局がもしあれば国際世論を味方につけることもできるのではないか。)
だが、簡素化によってすら違約金を払わなければならない契約をIOCがテレビ局と結んでいたら、契約上の支払い義務は生じる。だが、その違約金を日本側がかぶるというのは納得できない。IOCとテレビ局の契約は開催都市やJOC、組織委が関知しないものであり、それに基づく違約金の支払いまで日本側がかぶるというのは理不尽ではないだろうか。
開催都市契約はたとえば第9条c)において、開催都市、JOC、組織委はIOCに対する費用請求ができないと規定しているようだ。だが、「この補償と権利放棄は、 IOC に故意または重過失があった場合は適用されない。」というただし書きがある。「コロナ禍なのに中止や簡素化をしない」ことがIOCの「故意または重過失」であると主張することは法的にできないのだろうか。そのような主張が認められれば、必要な費用をIOCにもたせることができる。

私は法律の専門家ではないから契約書の解釈について確たることを言える立場にはないことはお断りしておく必要がある。だが上記のことも含め、「IOCは契約で免責されている」とあきらめず、開催都市契約、テレビ局との契約、保険契約を専門家に精査してもらう必要があるのではないか。
国内の感染状況は急激に悪化し続けており、オリンピックの途中でも中止する必要が生じるかもしれない(朝日新聞2021-7-16)。そんな日のためにきちんと理論武装しておくべきだろう。

追記:「IOCを止める唯一の方法 具体的方法と費用」は、開催都市契約は所詮は民間組織との商業的契約でしかなく、「契約不履行」を選ぶことにより五輪を中止できると指摘している。その場合、得られたはずの収益などを補償することが求められる可能性があるが、それでも「中止のコスト=最大で8914億円」と試算している。放映権料の試算が過去ブログで紹介した「米NBCからだけで7780億円」より低く見積もられており、検証は必要だが、たしかに感染拡大等の混乱による損失・出費に比べれば、負担してもいいかもと思える額だ。であればなおのこと、オリパラ合同の閉開会式採用による「違約金」などは微々たるものだったのではないかと思えてくる。IOCと米テレビ局との契約はどの程度の違約金を定めているのか、はたしてそれは合理的な内容なのか(どうせ開催国にかぶせるつもりでIOCが法外な契約を結んでいないか)、検証が必要だ。なお、同サイトを作成した任意団体「わたしたち」は「東京五輪の本年開催を中止」するべきとして署名を集めているが、私は「延期」は絶対ありえないと思っている(過去ブログ)から賛同していない。


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