リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

何でも無償化はいいことなのか?(その2)~医療費無償化の場合

2018-02-21 | 政治
子供医療の無償化が広がっているという(asahi.com).それに関し,「賛成」「反対」両派の意見が新聞で紹介されていた(朝日新聞2018年2月21日).
私もかつては教育や医療が無料の社会主義国にあこがれたことがあった.かつて健康保険の本人負担割合が引き上げられたときは(内心)反対だった.だが,今では,「無料なら」という気持ちから不要不急の利用が増えるのは社会の効率の点でよくないと思っている.

安易に受診する保護者は多くはないと反論もあるかもしれない.今日の記事でも,無料拡大の賛成派の大阪府摂津市長は,無料化の後でも「子どものレセプト件数は急増しておらず,安易な受診が増えているとは言い切れません」と言っている.「レセプト件数」で数えることが適切なのか,子供の人口の増減を考慮する必要はないのか,など私にはわからない.もう少し幅広いデータがほしいところだ.
一方,今日の記事の反対派は,無料だと「念のため」として放射線検査や超音波検査が不必要に行なわれている可能性を指摘している.やはり一定額の課金はあったほうが,医者も適切なアドバイスをしやすいのではないか..
もちろん貧しい人が必要な医療を受けられないようでは困る.反対派も「就学前の幼児の医療費無料化で,貧困家庭の受診控えを防いだり,診察を通じて育児を指導したりすることはあっていい」と言っており,「子供医療無料」の妥当な線引ではないだろうか.

今の日本では国も自治体も財政に余裕はない.政治家の人気取りのために「無償」を利用しないでほしい――と決まり文句で締めたくなるが,ことはもう少しやっかいだ.無料拡大賛成派が指摘するのは,自治体間の競争だ.近隣自治体に後れを取っては子育て世代が流出してしまうという危機感がある.反対派の医師もこの点は認識していて,「一度広げた無料化を見直すのは政治的に難しい」ことも理解している.

こうしてみると,子供医療の賛成派も反対派も差はそれほど大きくないことがわかる.難しいのは少子化が進む日本で自治体間の競争を,なりふりかまわず争奪戦ではなく,健全な競争にするにはどうすればいいかということだ.無償化ではないが,自治体間での保育士の奪い合いもある.また,ふるさと納税がらみでは本質を忘れた返礼品合戦に陥ってしまっているという苦々しい状況もある.今日の記事の摂津市長は,財政を健全化した上で無償化を進めたと主張しているので,そのとおりであるなら,その点の問題はない.

私は以前,幼児教育無償化について,自治体間の競争に任せてはどうかと書いたことがある(2017-12-09).無償化については当面,自治体間の競争に委ねて,野放図な財政に走らないかどうかだけは厳しく監視するような方向にしてはどうだろうか.不必要な受診・検査については,保護者や医師の啓発活動を進めていくことくらいしか思いつかない.国政選挙もそうなのだが,やはり国民・住民の意識が高まらなければ健全な方向に向かうことは難しい.

関連記事:
何でも「無償化」はいいことなのか? (幼児教育無償化の場合)

この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「ネット世論」は少人数で操... | トップ | AIに取って代わられる仕事は... »
最新の画像もっと見る

政治」カテゴリの最新記事