自民一強を支える小選挙区制。選挙区で過半数の票を取った一人だけが当選するから、強者が議席を独占しやすい。死票が多くなるなど弊害は明らかで、反対論も根強かった(ウィキペディアによれば1980年代後半に海部内閣が導入しようとしたが、自民党内にも強い反発が出て見送られた)。それがどういういきさつで導入されたのだろう。小選挙区だと勢いのある党になだれのように議席が集中するので政権交代が起きやすい。野党がその魅力に飛びついたのかとも思ったが、導入された1994年は非自民の細川内閣の時代だから、そういうわけではない。
と疑問に思ったまま調べずに放置していたのだが、元自民党総裁の河野洋平氏がインタビュー(朝日新聞2019-3-5)で振り返っていた。ウィキペディアの記事で背景を補いながら紹介する。
細川氏は中選挙区が持論で、河野氏も定数3の100選挙区がいいと思っており、どちらも小選挙区にこだわっていたわけではないようだ。だが自民党長期政権下での金権政治に対する批判が非自民の細川政権成立につながったという経緯があり、政治改革は細川内閣の最大の課題だった。イギリス式の腐敗防止法で政治腐敗をなくすとの考えもあったものの、「それでは世論が収まらないと小選挙区制に進まざるを得なかった」とのこと。カネに関わる腐敗は選挙にお金がかかることが一因であり、選挙区を小さくすれば選挙にかかる費用が減って汚職も減る、というつもりだったようだ。
だが小選挙区制は自民党による議席の独占を生んだだけではなかった。自民党の内部でも、それまでは多くの派閥が勢力を争い、自民党政権下での「疑似政権交代」があったのに、小選挙区制により党中央の力が強くなった。定数1の選挙区の候補者公認を得られなければ政治生命が絶たれるので、中央に逆らうことができなくなってしまったのだ(河野氏いわく、「候補者が有権者から支持をもらうよりも、党幹部から公認をもらうことの方が難しくなった」)。結局、党の多様性が失われてしまった。ただ、河野氏はその「欠陥」は当時からわかっていて、だからこそ比例代表並立制にしたという。ただ、その比例代表も今や、「復活当選」が認められたおかげで小選挙区の保険のように使われるようになってしまっている。
結局、「小選挙区だと金がかからない」ということに世論がだまされてしまったということだろうか。
しかも、「金のかかる政治」から脱却するために公金を使って「政党助成金」が導入された。それと引き換えに汚職の温床となる企業献金を全廃するはずだったのが、いまだ続いている。河野氏はこの点は「内心忸怩たるものがあります」と語っている。
小選挙区制の唯一のメリットは「政権交代が起こりやすい」ということだろう。自民党に対する社会党という対抗軸がまがりなりにもあった時代には小選挙区制はある程度の意義はあったのかもしれない。だが、それにしても「風」頼みの政治になりやすいという問題もある。ウィキペディアの上記記事は「候補者は理念や政策が異なっても当選するために大政党の公認を受け、万人受けするばらまき政策を掲げる。」(田村善一郎氏)という指摘を引用している。
自民党が自党に有利な今の制度を変えるとは思えない。結局、対抗軸となる野党を育てて「風」を待つしかないのだろうか。
と疑問に思ったまま調べずに放置していたのだが、元自民党総裁の河野洋平氏がインタビュー(朝日新聞2019-3-5)で振り返っていた。ウィキペディアの記事で背景を補いながら紹介する。
細川氏は中選挙区が持論で、河野氏も定数3の100選挙区がいいと思っており、どちらも小選挙区にこだわっていたわけではないようだ。だが自民党長期政権下での金権政治に対する批判が非自民の細川政権成立につながったという経緯があり、政治改革は細川内閣の最大の課題だった。イギリス式の腐敗防止法で政治腐敗をなくすとの考えもあったものの、「それでは世論が収まらないと小選挙区制に進まざるを得なかった」とのこと。カネに関わる腐敗は選挙にお金がかかることが一因であり、選挙区を小さくすれば選挙にかかる費用が減って汚職も減る、というつもりだったようだ。
だが小選挙区制は自民党による議席の独占を生んだだけではなかった。自民党の内部でも、それまでは多くの派閥が勢力を争い、自民党政権下での「疑似政権交代」があったのに、小選挙区制により党中央の力が強くなった。定数1の選挙区の候補者公認を得られなければ政治生命が絶たれるので、中央に逆らうことができなくなってしまったのだ(河野氏いわく、「候補者が有権者から支持をもらうよりも、党幹部から公認をもらうことの方が難しくなった」)。結局、党の多様性が失われてしまった。ただ、河野氏はその「欠陥」は当時からわかっていて、だからこそ比例代表並立制にしたという。ただ、その比例代表も今や、「復活当選」が認められたおかげで小選挙区の保険のように使われるようになってしまっている。
結局、「小選挙区だと金がかからない」ということに世論がだまされてしまったということだろうか。
しかも、「金のかかる政治」から脱却するために公金を使って「政党助成金」が導入された。それと引き換えに汚職の温床となる企業献金を全廃するはずだったのが、いまだ続いている。河野氏はこの点は「内心忸怩たるものがあります」と語っている。
小選挙区制の唯一のメリットは「政権交代が起こりやすい」ということだろう。自民党に対する社会党という対抗軸がまがりなりにもあった時代には小選挙区制はある程度の意義はあったのかもしれない。だが、それにしても「風」頼みの政治になりやすいという問題もある。ウィキペディアの上記記事は「候補者は理念や政策が異なっても当選するために大政党の公認を受け、万人受けするばらまき政策を掲げる。」(田村善一郎氏)という指摘を引用している。
自民党が自党に有利な今の制度を変えるとは思えない。結局、対抗軸となる野党を育てて「風」を待つしかないのだろうか。