リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

元首長個人への賠償請求は慎重に

2017-08-08 | 政治

豊洲


東京都が購入した豊洲市場の用地の土壌汚染に関し,都民が都に対し,石原慎太郎元都知事に対して損害賠償請求するよう求めた住民訴訟があるという.このたび都の弁護団は,小池知事の意向もあって,購入を決めたのは石原氏就任前とする文書の性格を「中間的な合意」に格下げし,証拠としては取り下げたという(朝日新聞朝刊2017-8-8).
(8月10日の朝刊で訂正があった.文書を証拠として取り下げたわけではなく,「証拠文書に法的拘束力があったとする主張を撤回」とのこと.)
たしかに汚染のある用地購入の経緯はうさんくさく,裁判で真相が明らかになるのならそれは悪くないとは思う.つい「住民の請求どおりに元都知事に賠償請求を!」とも言いたくなってしまう.だが,ここはやはり立ち止まって考えたい.
知事(政治家)はいろいろな政策を遂行する.場合によっては思わぬ損害が発生することもあるはずだ.だがその損害の賠償が政治家個人に求められるとしたら,政治家は思い切った政策は何もできなくなってしまう.しかも,今回のように知事が代わると弁護団が態度を変えるというのも気持ち悪い(今回の証拠取り下げそのものの是非はよくわからないが,一般論として).
政治家個人への賠償請求はよほど悪質な場合に限られるべきだ.どのくらいが「よほど悪質」かは私には判断できないが,裁判を見守る我々も,党派的な立場は捨てて,冷静に考えたい.

国立


首長個人への賠償責任が裁判で確定したケースとして,東京都国立市の元市長,上原公子氏の事例がある(東京新聞).高層マンション建設に市民が反対したのを受け,高さを制限する条例を定めたが,業者に訴えられて市が賠償を命じられた.ところが一部住民から,支払った賠償金を上原氏個人に請求するよう市が訴えられて裁判で認められ,次の次の市長が控訴を取り下げたことで支払い命令が確定し,支払いを求める裁判が続いていたのだという.
これを不当とする人たちが「元市長ひとりに賠償金は払わせない。くにたちの景観はオール市民で守ったのだから。」を合言葉にクラウドファンディングで資金を集めているという(くにたち上原景観基金1万人の会FACTA ONLINE).

今回は個々の事案の是非についての論評は控えたいが,弱い者いじめのような訴訟は「スラップ訴訟」といっていろいろ問題になっている.自治体の活動による損害を元首長個人に負わせるのは,党派的な立場からではなく,十分慎重に考えたい.党派的なスラップ訴訟を石原元都知事に対して起こしたりすると,同じことは小池知事に対しても,誰に対してもされかねない.韓国では政権交代のたびに前政権の関係者が訴追されることが多いと聞く.そんな世にはならないようにしたい.
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