リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

五輪開催で本当に医療現場は逼迫するのか

2021-05-23 | 一般
「5年間頑張ってきたアスリートの努力が無になる」として五輪開催を求める声は根強いが、5年間頑張ってきたのにコロナのため選考に参加できなかった選手がおり、このまま開催するのは不公平ではないかと先日書いた。だがコロナによって機会を奪われたのがごく一部の選手であれば、気の毒だが、そのために全体を中止にはしないという判断もあってもいいかもしれない。
ころころ考えが変わるようだが、私も迷いに迷っている。今回の軟化のきっかけは、五輪が医療崩壊につながらないかもしれないと思ったからだ。

組織委が日本看護師協会に看護師500人の派遣を要請したことに反発が広がり(asahi.com 2021-5-1など)、東京のある病院は「医療は限界 五輪やめて!」「もうカンベン オリンピックむり!」と窓に悲痛な叫びを掲げた(asahi.com 2021-5-7)。私も、ただでさえ医療現場が激務で疲弊しているのに500人の派遣などありえないと思っていた。
だが組織委によると、現在業務から離れている人を中心に依頼しており「地域医療に支障を生じない形で人材を確保していきたい」という(朝日新聞2021-5-22)。これなら問題ではないのだろうか。だが「500人派遣要請」に対してあれほど反発が強まったときになぜそうはっきり言わなかったのだろう。(追記:遅れているワクチン接種を進めるためにも職場を離れた看護師に期待している(朝日新聞2021-5-25)というから、やはり人材の取り合いにはなるようだ)

医師については、各競技団体を通じてスポーツドクターを確保しているというが、200人のボランティア募集に対して393人の応募があったと先日報道されていた(朝日新聞2021-5-16)。スポーツドクターというのはいろいろ厳しい条件がついていて、集まるかどうか懸念する記事を昨年読んだように思うが、難なくクリアーしたようだ。
医療逼迫が日々報道されているのに、そんなに余裕のある医師がいるのだろうか。
(ちなみに、1日あたり医師は最大230人程度、看護師は310人程度を想定しているというが、「最大」とあるからこれは観客を(コロナ下で想定できる)最大限入れた場合、と思っていいのだろうか。)

だが思い返してみれば、昨年あたりはコロナで受診控えが広がり、またコロナ対策により普通の感染症も減ったことで、収入が減っている医療機関が多いと読んだように思う。コロナ対応に忙殺されている医師・看護師が多いことはわかっているが、コロナで手持無沙汰な医師・看護師もいるのではないだろうか。
そんなわけで、ボランティアにより医師が確保でき、看護師は業務を離れている人から集めるということであれば、五輪によりコロナ対応の現場における医師・看護師が減ることはないと思っていいのだろうか。
だがマンパワーの問題とは別に、選手向けの病床を確保することに対する懸念もある(asahi.com 2021-5-18)。コロナ患者を受け入れておらず、余裕のある医療機関からということなら考えてもいいだろうか。(もちろん、コロナ患者を受け入れる医療機関を増やすことも課題になっているので、五輪がコロナ患者を受け入れない口実にされるのもどうかと思うのだが。)

もちろん、五輪により感染が広がればそれも医療逼迫につながる。来日する選手(15000人)については接触相手が厳密に制限されるそうなのだが、大会関係者(78000人)は条件を満たせば市中に出られるという(朝日新聞2021-5-22)。来日後3日は待機、14日までは外出先や移動に厳しい制限がつくが、その後は制限がゆるむという。その後の行動が感染を広げることにならないだろうか。(もっとも、記事のドイツ人記者が心配しているのは逆に、自分が市中で日本人から感染してウイルスをプレスセンターに持ち込むことだが。)

そんなわけで、医療現場に過度な負担を強いることなくできるのであれば、(無観客での)五輪開催は反対しないという立場に戻った。だが報道されている現場からの悲痛な声を見ると、上記は楽観論に過ぎるのではないかとも思っている。いずれにせよ、「開催ありき」ではなく、きちんと状況を検討した上で早期に結論を出すべきだ。

追記:東京オリンピック開催による感染拡大に関し、ある推計によれば、10万人程度の来日外国人による影響よりも、国内で人が集まることによる感染のほうが大きいという(朝日新聞2021-5-25)。だとすれば、来日外国人に対する行動制限は当然のこととして、無観客にしてパブリックビューイングなども行なわないなどして、人が集まらない工夫をすれば開催の道はあるかもしれない。

追記2:そんなことだろうなとは思っていたが、やはり「業務から離れている人を中心に依頼し、地域医療に支障を生じない形で人材を確保」はうそっぱちだったようだ。公的医療機関には医師や看護師、検査技師、薬剤師を五輪・パラリンピックに派遣するよう要請が来ているという(朝日新聞2021-6-11夕刊)。



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