リベラルくずれの繰り言

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東京五輪:動画投稿禁止は便乗商法以外は黙認を

2019-05-26 | 一般
便乗商法に厳しいオリンピック組織委の厳しさがよく問題になるが、2020年の東京オリンピックでは観客が会場で撮影した動画をネットに投稿することが禁じられるという(朝日新聞2019-5-25)。撮影自体は認められていて、静止画の投稿もOKなのだが、動画をSNSなどに投稿することは許されないという。どういうことなのだろうか。

スポーツ競技は著作権では保護されないから、本来観客が撮影することは著作権法では禁じられない(「中継は著作権? スポーツと将棋の場合」参照)。現に、今回の動画投稿禁止は選手が映った動画に限らず、一切だめということだ。では禁止の根拠は何なのかというと、施設管理権ということなのだろう。規約に同意した人だけが会場に入場できる、ということで観客が規約に束縛されることになる。そして規約には、観客は写真・動画・音声の一切の権利をIOCに移転することに同意すると定められているという。福井健策弁護士は「五輪で著作権を移転させ、動画のSNS投稿まで禁止するのは観客の自由を制限しすぎでは」と話しているそうだ。一般論として、一方的な規約はたとえ相手が同意したとしても無効、というような話があったと思うのだが、今回の場合、それはあてはまらないのだろうか。
大会組織委の法務部長によれば、不適切な動画の投稿があった際にIOCが事業者に削除を要請できるようにすることがねらいだという。だとしたら観客にそのような削除要請を認めさせるだけでよかったようにも思う。
そもそもオリンピックに関する規制がきびしいのは、巨額の料金を払っているスポンサーの利益を守るためだというが、それより多額の税金が投入されていることも忘れてはならない(「オリンピック宣伝利用規制:スポンサー料の何倍もの税金が投入されていることをお忘れなく」参照)。動画をSNSで共有するというのは今や普通に行なわれていることらしいから、だとすれば、納税者のためにも、便乗商法にならない程度の動画SNSを認めてもいいのではないだろうか。
組織委のブランド管理部長によれば、知的財産権に厳しい理由を、「税金の投入を抑えるためにマーケティング活動による収入が重要」としている。だが一般ユーザーの動画SNS投稿が、東京オリンピックに投入される倍大な税金の原因になっているとは思えない。
とはいえ、同氏は「スポンサーに悪影響を与えない」「特定の利益を生まない」「五輪の機運の盛り上げに資する」と判断できる場合には黙認もありうるという。その判断が組織委に委ねられることや、五輪批判が許されないのは気になるが、削除要請を抑制的に行なうというのはやむを得ない落としどころではないだろうか。

記事では「規約が認知されていない」と実効性を疑問視する声が紹介されているが、細かい規約は読まずに観客は写真と同じように動画も投稿してしまうだろう。だが、よほどひどい場合に限って組織委が事業者に削除してもらうのでよいのではないか。(私は、組織委による禁止以前に、他人が映り込む可能性の高い試合会場での動画をSNSに投稿するということにそもそも違和感がある。)
今回は新聞に大きく取り上げられてしまったが、いざというときのために規約上は厳しめにしておく、ということは許されるように思う。あまり是か非かということをつきつめず、あいまいにしておくのも手だと思う。


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