リベラルくずれの繰り言

時事問題について日ごろ感じているモヤモヤを投稿していこうと思います.

首相の休校要請:「学校は休校で学童保育に」「補償するから休職しても大丈夫」はおかしくないか

2020-03-01 | 一般
安倍首相が突如、公立学校に休校を要請して混乱が広まっている。事前に春休みの前倒しを助言した萩生田文科相も、2月27日木曜日の夕方にいきなり「来週3月2日〔月曜〕から春休みまで臨時休業」という発表に驚いたという(朝日新聞2020-2-29)。
学校がいきなり休校になって誰でも真っ先に思いつくのは、共働き家庭のことだ。中高生ならいざ知らず、小学生が家にいるとなると仕事に行けなくなる親も多いはず。その一番肝心な点に全く説明のないままの休校要請だった。
さすがに首相も29日に記者会見を開いて「十分な説明がなかった」と認め、「説明」をした(朝日新聞2020-3-1)。だが「十分な説明」にはほど遠い。会見は35分程度で、「まだ質問があります」という記者がいるのに予定時間とのことで打ち切られた。熊谷俊人・千葉市長が「演説」と皮肉る(同3面)のに喝采を送りたくなる。

首相の説明はこうだ。
・休校で働けなくなる保護者向けの支援策として、休職に伴う所得の減少に対する「新たな助成金制度」を創設し、「正規・非正規を問わず、しっかり手当てしていく」という。
・学童保育についても各自治体の取り組みを支援するという。
・また、業績が悪化した企業が従業員の雇用を維持した場合に給付する「雇用調整助成金」の特例を設けて、非正規労働者も含め休業者支援も行うともいう。

最大の疑問、共働き家庭で子供だけで留守番させるのが心配な家庭はどうすればいいのか、という点について、「休職したら助成するよ」というのが根本的に発想が間違っていると思う。すでに多くの人が指摘しているようだが、今回の新型コロナウイルスの現状では、子供たちの学校の休校よりも、テレワークや時差出勤の推進のほうが拡散防止に効果があるのではないだろうか。「テレワークでは車は作れない」というように限界があるのはたしかだが、大企業では何千人もが自宅勤務になったという話も聞く。かけ声だけでなく、労務管理や秘密保持の都合からテレワークに後ろ向きな企業に対して具体的な方策を周知することも重要だ。

休職した労働者だけでなく、休業や業務縮小に追い込まれた企業にも支援するというのはいかがなものか。「業績悪化」というが、休校による業績悪化のほか、先だってのイベント自粛要請による業績悪化も含まれるのか、何も自粛しなくてもウイルスへの警戒から外出が減った結果の業績悪化はどうなのか、など考えると、結局、原因は問わず「業績悪化」をカバーすることになるのだろうが、いくら非常時で支援が必要とはいえ、限度がある。

結局、「従業員が休職して企業が業務をしなくても企業も労働者も国が支援する」ということになりそうだが、そんな「国による丸抱え」は、先進国最悪の財政事情がなくても立ち行かないことは明らかではないだろうか。アベノミクスはもともと「あとは野となれ山となれ」でばらまきの放漫財政を続けているが、その調子で際限なく支援をふくらませるのはやはりおかしい。待機児童問題でもそうなのだが、安倍政権は優先順位を無視して聞こえのよい人気取り策に走ることが多すぎる。

共働き世帯が困らないように学童保育への支援はするというが、学校が休校になって子供たちが過密な学童保育で過ごすのでは逆効果ではないか。ある横浜市立小学校では、休校期間中、1~3年生は各学校で「緊急受け入れ」をするとのプリントが配られた(同横浜版)。これでは何のための休校だったのか、ということになる。しかも民間学堂の利用申し込みが3月2日なのに「緊急受け入れ」の「詳細は後日」となっていて比較ができないなど、拙速な決定がゆがみを生んでいることも明らかだ。

もちろん、仮に致死性の高いインフルエンザの変種が流行するような場合であれば、学校の休校や社会活動の縮小なども考えなければならないだろう。将来に備えてそうした検討は必要だが、今回そこまで必要なのかどうか、もう少しきちんとした説明が必要だ。
今回の新型コロナウイルスは軽症の人が多く、知らない間に感染を広げやすい特徴があると聞く。だとすれば、(すでに指摘されていることだが)拡大防止にはあまり意味がなく、重症化しやすい高齢者への感染防止を徹底することに軸足を移すことも考えられる。専門家会議が提言もしていない学校休校より先に、こうした点について、専門家によく検討してもらうべきだ。

関連記事:
「新型コロナウイルスはどうやって感染するか―「正しく恐れる」ために」
「新型ウイルス:政府の封じ込め失敗を責めすぎるべきではないが…」

追記:やはりというべきか、休校要請した政府は学童は開くよう求めているが、自治体によってはそれでは「休校した意味がなくなってしまう」と学童も閉鎖したところもある。開きたくても急な話で職員の調整がつかず、午後からの開所としたところもある。(朝日新聞2020-3-4


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