※前回の大宮の記事はこちら(32節・横浜FC戦)
※前回の柏の記事はこちら(31節・山形戦)
昇格確定まであと一歩、という歩みを進んでいる首位の柏。
前評判から言えば当然というものでしょうが、長い一シーズン故の苦しみは容赦無く襲い掛かります。
そんな「王者」の存在で、最初から昇格枠を一つ潰されるかの如き2019年のシーズン。
その怒りのパワー故か2位争いは激しさを増しており、その激しさに巻き込まれるかのように横浜FC・水戸に連敗を喫した(35・36節)柏の近況。
そして千葉・福岡に勝利して、この日は再び昇格争いの有力チーム・大宮との戦いとなりました。
攻撃の中心の一人であるクリスティアーノが故障離脱を余儀なくされているのは痛手ですが、J1レベルの選手がゴロゴロしている選手編成とあって、その影響は小さく。
試合開始早々の前半3分、センターバック・染谷のロングパスが左サイドへと通り、走り込んだ瀬川がクロス。
これをエリア内でマテウス・サヴィオが合わせてゴール、関与選手の少なさ・ダイレクトプレーの連続という流れる攻撃で早々に先制点を奪った柏。
J2という枠組みでは相対的に大戦力となっている柏。
それでも近年のJ1・神戸の不調期のような「バルサ化」「ポゼッションサッカー」を強く推し進めたりはせず、というのが今季の柏の恐ろしさでもあります。
最近の不調の時期は、不動のボランチであったヒシャルジソンを(外国人枠の関係もあるものの)使わず(33~36節)という、傍らから見ても首を傾げるような起用法も一因となっていました。
監督のネルシーニョ氏は、一辺倒な起用法をしないという代わりに、中心選手とのこじれが生まれやすいという負の側面もあります。(名古屋時代の2005年マルケス、ウェズレイ両選手が対立の果てかシーズン途中退団となったのが例・その後自身も解任)
それを改めたのかそれとも単なる微調整の一貫なのかは不明ですが、再びヒシャルジソンがスタメンに戻ると同時に調子を取り戻した柏。
この日も先制点を挙げ、その後は相手にある程度ボールを握らせつつ、FWオルンガを生かしたカウンターを展開して追加点を狙うという具合に盤石かと思われました。
しかし大宮は基調となるサッカーがハッキリしているチーム。
そんな柏の強さを浴びる立場になっても慌てる事無く、落ち着いて守備時はブロックを組みつつ「リトリート・プレス」の構えで対応。
1点ビハインドの展開にも動じずという展開を魅せると、徐々に持ち味であるフアンマ・デルガドのポストプレイを生かした攻撃で反撃体制。
22分シャドーの茨田が右サイドから、フアンマとワンツーで突破しエリア内に進入、そこから折り返すものの受けた奥抜は収められず。
すると、夏場以降の新たな武器であるイッペイ・シノヅカの推進力も生きてきます。
32分、柏のパスを右サイドでカットしたシノヅカがそのまま攻め上がり、茨田とワンツーで前進。
そこから中央へパスを出しフアンマが受けドリブル突破を魅せましたが、シノヅカへのラストパスは繋がらず。
34分、同じくシノヅカのパスカットで攻撃、そのまま上がったシノヅカがクロスを上げたもののフアンマには合わず。
徐々に柏ゴール前でのプレーが増えていくとともに、前線で柏のビルドアップに対するプレスも積極化。
そしてそんな姿勢が実ったのが42分でした。
石川が敵陣で柏・手塚からボール奪取、こぼれ球を拾った奥抜がエリア内に進入し、飛び出してきたGK中村を右にドリブルしてかわしてシュート。
DFのブロックを掻い潜り、同点ゴールを挙げました。
ビハインドから脱した大宮は立て続けに攻撃を仕掛け、迎えた44分。
左サイドから酒井が縦パス、これをフアンマがポストプレイの体勢から左前方に。
エリア内へのスルーパスの形になり、奥抜が走り込んだところにGK中村が飛び出すものの奥抜はその上を通すキック。
ゴール右に逸れたものの、走り込んだシノヅカ折り返し→茨田シュートという流れでゴールに蹴り込まれ、戻った中村のセーブも及ばず前半のうちに逆転を果たした大宮。
後半頭、流れを変えたい柏は一気に2枚代え。
江坂→ジュニオール・サントス、高橋→川口という同ポジション同士の交代。
今季の柏は交代枠の使い所に苦慮している印象で、交代カードを余らせて試合を終える事も多々。
そしてそれと逆を張ったかのような交代劇で、この日の停滞感を打ち破りたいという気持ちが表れていたと思います。
江坂はトップ下に近い位置で、しばしば降りてきてはパスを受ける動きが目立っていた前半。
しかしリード時の大宮の守備の固さ・それによる江坂の有用性の薄れを考慮してのものだったでしょうか、ハッキリとしたサントスとオルンガの2トップという形にシフト。
そんな柏の動きで始まった後半でしたが、決定機を迎えたのは大宮の方でした。
後半4分、相手クリアボールを櫛引が跳ね返し、そのまま石川→茨田→奥抜→シノヅカとパスが繋がってエリア内へ。
シノヅカはエリア右の位置から中央へパスを送ると、フアンマがトラップ後さらに左へ送り、待ち構えていたのは左ウイングバックの酒井。
フリーでシュートを放ちますが、川口のスライディングのブロックで辛うじて防がれます。
8分には中盤からのロングスローをフアンマが受けた所から攻撃開始、三門が左サイドへ展開すると、酒井→河面→奥抜→三門→茨田→三門と細かいパスワークで中央へ。
三門から右へパス、これを受けたシノヅカはカットインで正面へ回り、エリア手前からシュートしますが惜しくも左に逸れて追加点はならず。
昇格へ向けて正念場を迎えている大宮。
前回取り上げた横浜FC戦以降は5勝1敗というハイペースで、1試合未消化という立場もあって2位争いのイニシアティブを握ります。
しかし最近3試合連続複数失点と、ここに来て持ち味である堅守ぶりが薄れているのが、昇格争いの激しさを物語るようでもあり。
その間試合内容と同時に選手起用も激しさを増し、この日の柏と同様に後半頭での交代が目立ちます。
35節・水戸戦(3-2)はロビン・シモヴィッチ→フアンマ、小島→石川と2枚代えを敢行し、見事0-2からの逆転劇に繋げる大きな勝利。
翌37節(36節・福岡戦は悪天候で順延)・徳島戦(2-3)も、逆転を期するべく小島→石川に代え、一旦同点に追い付いたものの力及ばず敗戦。
翌38節の琉球戦(3-2)こそハーフタイムでの動きは無かったものの、後半3分という早い段階でフアンマ→シモヴィッチへと交代しています。
1トップであるフアンマ・シモヴィッチを1セットにしての交代、というのが定番化している今季中盤以降の大宮。
またキャプテン・三門が故障から復帰してボランチに入った事で、それまでドイスボランチのコンビであった石川・小島もセット化したのか、ビハインド時での早期交代が目立っています。
シーズンが進むにつれ使える選手の駒もハッキリする事もあり、交代も定型化が進むのはよくある現象でしょう。
そんな状況で迎えたこの試合ですが、シモヴィッチはベンチ外。
そのためフル出場が前提となったであろうフアンマは、時間が進むにつれて疲労の色を隠せず、終盤は試合から消えかけていたのは仕方無い事だったでしょう。
ポストプレイの連続で、マーカーから激しくチャージを受ける役目を一身に背負うその姿は頼もしくもあり辛そうでもあり。
22分、大宮の左サイドからのスローイン、これをフアンマが収めて三門へのポストプレイからチャンス。
こぼれたボールは富山(茨田と交代で出場)が、エリア手前正面からシュートを放つもGK中村がキャッチ。
徐々に柏ペースになっていく試合展開の中、それでもフアンマを起点に柏ゴールに迫ります。
しかしそんな場面も後半25分以降は打ち止めで、同点を目指す柏が圧倒的にボールを握る展開へとシフト。
フアンマと同様に攻撃の橋梁堡だったシノヅカを下げた(渡部と交代・28分)のもあり、柏の攻勢の前に、ブロックを固めるのみの状況を強いられます。
それでもオルンガを徹底して封じた中央センターバック・河本の働きもあり、エリア内で決定的な場面はそれほど作られずに時間を進めます。
柏はサヴィオやヒシャルジソンがミドルシュートを放つシーンが目立ちましたが、いずれも決まらず。
オルンガのシュートシーンは38分、コーナーキックからの二次攻撃でサヴィオ左からクロス→クリア→大谷ヘッドで中へという流れから、エリア内で混戦になった後に放ったものがありましたがこれはブロックに遭いました。
大宮は38分に奥抜→小島へと交代、完全に守備を固める姿勢に。
試合も終盤、柏は前線を囮にしつつCB山下がオーバーラップでヘディングシュート、という場面を2度作りましたが山下は惜しくも決められず。
ほとんどハーフコートマッチ状態ながら、そのまま試合終了まで得点はなりませんでした。
逃げ切りに成功し勝ち点3を得た大宮ですが、今週は順延になった36節・福岡戦が水曜に待っています。
1試合たりとも無駄に出来ない状況での過密日程、その戦いぶりやいかに。