<大分スタメン> 3-4-2-1
GK 高木
RCB 小出 CCB 坂 LCB 三竿
RWB 井上 DH 小林 DH 長谷川 LWB 高畑
IH 渡邊 IH 野村
FW 高澤
<徳島スタメン> 4-2-3-1
GK 上福元
RSB 岸本 CB 石井 CB 福岡 LSB 吹ヶ
DH 岩尾 DH 藤田譲瑠チマ
RSH 浜下 CH 宮代 LSH 藤原
FW 垣田
7年ぶりのJ1の舞台へと降りた徳島。
前回の戦いは2014年で、当時の監督は現北九州の小林伸二氏。
シーズン前の補強は殆ど行わず、良くも悪くも「初のJ1という地の冒険」のような意気込みで挑んだものの、最下位(18位)・1年で降格という結果に。
それから月日が経ち、あの時のような過ちは犯すまいと言わんばかりの動きを見せたオフ。
2020年内は大人しかったものの、年が変わった途端に補強の針が振れ始めます。
ヴェルディの藤田譲瑠チマ、新潟の本間と立て続けに主力獲得を目指すニュースが流れるという具合に、フロントの本気度を表現。
本間の獲得は叶わなかったものの、資金を余らす事無く以降助っ人2人を獲得(クリスティアン・バトッキオ、カカ)し、陣容を整えてシーズン開幕を迎えました。
それでも新助っ人2人に加え、監督のダニエル・ポヤトス氏も、未だ来日出来ずというイレギュラーな状況。
指揮を執るのは甲本偉嗣ヘッドコーチで、「駒を増やして監督にバトンを渡す」という意思なのでしょうか。
この日のスタメンには吹ヶ・藤原と、前年未出場の選手が並んだのが目を惹きました。
お互い最終ラインでのビルドアップが下地のチーム同士の対決。
しかし試合が始まると、意外にも徳島がボール支配する時間が長い展開を描きます。
J2時代で貫きつつ、勝利を齎してきたスタイルを、カテゴリーが上がっても継続する姿勢を見せます。
前半4分にGK上福元が大分・渡邊のチャージを受けて奪われ、無人のゴールにシュートされる(渡邊の反則でノーゴール)という紙一重の場面も作ってしまうも、ペースを乱す事は無く。
逆に6分、右サイドから福岡のサイドチェンジで攻撃開始、受けた藤原がカットインから中央へパス。
このパスが主審に当たってしまうも、藤原が拾い直し攻撃を続け、吹ヶのクロスがクリアされた後も逆の右サイドで攻撃継続。
岸本のクロスが浜下に当たるも、拾ったチマがミドルシュート(枠外)と、フィニッシュまで持っていきました。
度重なるイレギュラー発生にもめげず、有効打を放った徳島。
一方の大分ですが、従来の3-4-2-1の基本システムを若干アレンジして臨んでいたこの日。
攻撃時はそのままですが、守備時には右ウイングバックの井上は降りて来ず、4バックでのブロックを形成。
可変システムを取り入れ、変化を加えていました。
しかしそれが効果的になったかといえばそうでも無く。
この辺は、オフに鈴木・岩田と最終ラインの選手に移籍されてしまったが故の苦しさが滲み出ていたようで、まだまだ試行錯誤のような感じでした。
最終ラインを中心にボールを回しつつ、隙を見つけてのロングパスを通して好機を作る徳島。
どちらかといえば従来大分が得意としていたパターンの攻撃で、相手のお株を奪っていたかのようなこの日。
32分には左サイドで藤原がドリブルからスルーパス、受けた垣田のクロスが上がり、ファーサイドで浜下が折り返し宮代がシュート体勢に入るも撃てず。
直後には中央でチマの浮き球のパスを垣田が落とし、宮代のパスを受けた藤原が左からカットイン、そしてシュートにいくもディフェンスに遭い不発。
着実にゴールに近づくものの、後一歩という場面が続くもどかしい展開。
しかし37分、これまで劣勢ながら耐えてきた大分ディフェンスにミスが。
右ハーフレーンから岩尾がエリア内へロングパス、岸本が走り込んだ所にGK高木が跳び出すも、高畑のクリアミスでボールがエリア内に。
これを迷い無く岸本が蹴り込み、見事にゴール。
試合を支配していた効果が表れるかのような先制点となりました。
尚も42分、再び岩尾のエリア内へのロングパス、GK高木の跳び出しの手前で宮代がヘディングシュート。
ディフェンスの浮つきを突いたかのような攻撃でしたが、シュートは僅かにゴール左へ外れ。
大分も決して無抵抗という訳では無く、36分には敵陣深めで渡邊のボール奪取からフィニッシュに繋げる(小出グラウンダーでクロス→渡邊トラップからシュート・ブロック)など、好機は作っていました。
しかしその回数は極めて少なく、新たなシステムへの不安からか、中々プレッシングにいけなかったのが要因だったと思われます。
終了間際の45分、右からのスローインで好機を作ったのち、野村がペナルティアークからシュート。(ブロック)
反撃姿勢を見せる大分でしたが、アディショナルタイムにはその野村が足を痛めるシーンが。
古巣相手に発奮、というシーンを見せたかった野村ですが、この影響で後半頭に交代で退く事となってしまいました。(町田と交代)
今オフも、限られた予算の中での編成に頭を悩ませる事となった大分。
前述の通り鈴木・岩田を失い、その影響が色濃く表れていたようなこの日の前半のサッカー。
かといって前線も安泰では無く、知念・渡と入れ替えるかのように、渡邊・長沢を獲得と試行錯誤。
といっても、その前の藤本・オナイウ阿道のような、十分な結果を出した矢先の移籍劇では無いのが救いでしょうが。
前年の大分は、小規模の予算での限界という事象が色濃く表れたようなシーズン。
そこからさらに大黒柱(鈴木)が抜けたとあって、この日の可変システムは、片野坂知宏監督の一種の焦りのようにも映りました。
新たなサッカーを見出さなければ上は目指せないという。
しかし結果的に、この日の前半は「後輩」のような徳島に上をいかれてしまい、迎えたハーフタイム。
野村→町田へと交代し後半に臨んだ大分。
そのキックオフで、後方へ戻したパスを三竿がロングパス、これが一気に好機を生みます。
このパスを受けた高澤、エリア内を急襲するも、その前に徳島・福岡を倒したプレーが反則に。
しかしこれで肩の荷が下りたか、以降はボールを握り反撃体制を整えます。
そして守備の際には、井上も最終ラインに落ち従来のような5バックへ。
果たして頭から徳島を押し込み続ける大分。
後半9分には左からのスローイン、奥で受けた渡邊がカットインからグラウンダーで中へ入れ、高澤がワントラップから左足でシュート。
しかしGK上福元のセーブに阻まれます。
そして14分、いかにも大分らしい最終ラインからのフィニッシュでした。
GK高木から左右へボールを回したのち、坂の右サイド裏へのロングパスを井上が受けて好機到来。
奥でキープののち、エリア内へのパスを町田が入れ替わって中央からシュート、ブロックされるも渡邊が拾って再度シュート。
豪快にネットに突き刺し、同点に追い付いた大分。
追い付かれたものの、あくまでスタイルは変えない徳島。
失点以前の11分には、吹ヶ→川上エドオジョン智慧へと交代。
このエドオジョンも前年未出場と、コンセプトがハッキリしているような選手起用を見せます。
それでも、前半とは打って変わっての大分のプレッシングの前に危機を招くシーンが。
16分にそのエドオジョンが(ファーストタッチ?)井上にボールを奪われたのを皮切りに、24分・26分と大分のインターセプトが冴え渡り。
特に飲水タイム後の26分は、左サイド深めで渡邊がカット、そのままエリア内へとパスを送られる危機。
幸い精度を欠いてGK上福元が直接抑えたものの、今後J1を戦い抜く上での、隙を見せるとやられる怖さが垣間見えるシーンとなりました。
その後は、28分に徳島・石井がエアバトルの着地の際、頭部から転落してしまい起き上がれない事態に。
脳震盪による交代準備が行われる(安部へ交代)なか、大分サイドも高畑・高澤→松本・伊佐へと交代。
アクシデントによる長めの中断の最中に、放送では今季から背番号13(ミスタートリニータ・高松大樹氏の元番号)を付けた伊佐のエピソードが語られるなど、ほっこりとしたムードが生まれたりもしました。
それでもピッチ上では常に真剣勝負。(のはず)
36分に渡井を投入(藤原と交代・同時に垣田→河田へと交代)という勝負手を打った徳島ですが、ボールキープするもゴールに迫れず、バックパスで仕切り直す事多々。
その停滞を突かんと、大分もコーナーキックから伊佐がヘディングシュート(39分・枠外)、小林の縦パスを受けた渡邊がミドルシュート(41分・枠外)など攻め立てるもモノに出来ず。
同点のままアディショナルタイムを迎え、直前に大分は渡邊→刀根へと交代。
ポジション入れ替えを複数生む(小出が右CB→右WB、井上が右WB→シャドー)交代となり、これが拙かったのか、ATは徳島の時間帯になります。
渡井と浜下のポジションチェンジを絡めつつ、ボール支配して押し込んでいく徳島。
そして好機が到来、岩尾の左へのロングパスを受けたエドオジョンが奥に進入、カットインからマイナスのクロス。
クリアされるも安部が拾い、チマのスルーパスから浜下のクロスが上がると、中央の河田の足元へ。
合わせてシュートした河田でしたが、ボールは無情にも枠の上に逸れてしまい勝ち越しはなりませんでした。
最後は大分サイドが用意していた長沢が投入(井上と交代)されるも、その直後に試合終了の笛が。
開幕節は引き分けで、互いに勝ち点1を得る結果となりました。
今季は4クラブ降格という厳しいレギュレーションで「残留出来れば御の字」ともいえるでしょうが、その思想に囚われると降格の沼に浸かってしまうのは明白。
徳島は果敢に前年のサッカーの踏襲を見せたものの、世界情勢故スタッフの体勢がどうなるか今後も不透明。
大分は前年の上積みを図るような姿勢を執ったものの、機能不全に映ったこの日を踏まえ今後どう進んでいくかこちらも不透明。
双方不安材料を抱えながら……という開幕となりましたが、この勝ち点1を上手く繋げられるでしょうか。