※前回のいわきの記事はこちら(34節・藤枝戦、1-1)
※前回の水戸の記事はこちら(33節・鹿児島戦、0-3)
<いわきスタメン> ※()内は前節のスタメン
- GK田中が今季限りでの引退を発表。
- 負傷離脱していた生駒が前節(岡山戦、1-2)スタメンで復帰。
- 近藤の負傷が発表され、10/9に発生して翌日に手術実施、全治約3ヶ月との事。
<水戸スタメン>
- 梅田の負傷が発表され、10/4に手術実施したとの事で、発生日・全治ともに未発表。
シーズン最終盤の局面で組まれた「常磐線ダービー」。
それはお互い、この勝敗で何かが決まる立場となっての対決と化し。
いわきは昇格争いに加わっての戦いを繰り広げるものの、立ち位置は既に崖っぷちで勝利出来なければプレーオフ圏への浮上、即ち昇格の可能性がほぼ消える一戦。
対する水戸は苦難の残留争いも、窮地を脱した末にこの日引き分け以上に持ち込めれば、残留決定という所までやって来ました。
お互い基本フォーメーションは同じ(といっても、いわきはアンカーシステムとの流動性ある布陣ですが)ながら、そのスタイルは真逆に映り。
とにかく前進する姿勢が凄まじいいわきと、カウンターの意識を持ち併せる水戸が組み合った結果、予想通りいわきの攻勢という入りになりました。
前半2分に早々にコーナーキックを得て、そこからミドルシュート2連発(加瀬と柴田が撃つ、共にブロック)とゴールを狙う意識も旺盛ないわき。
そして続く前半3分、空中戦で水戸・大崎がクリア出来ずに流れた所を拾う形で好機が生まれると、西川がドリブルでその裏を突きに掛かり。
しかしエリア手前で新井のスライディングに倒され、完全に足にいってしまったように見えたものの反則の笛は鳴らず。
思わぬ形で阻まれ、ホーム(ハワイアンズスタジアムいわき)のスタンドにヘイトを貯めるのみに終わってしまい。
しかし水戸もその後5分の攻撃で、ラフなロングパスをヘッドで合わせ収めた久保が、そのまま右ポケットを突いてシュート。
フィニッシュ自体はループの軌道で可能性を感じさせた(GK立川キャッチ)ものの、浮き球のまま撃ちにいった反動か、着地の際に足を痛めてしまった久保。
ここは痛みを堪えて起き上がるも不穏な空気を残しての継続となり、結果無事では無かったようで。
その後も、いわきは1タッチパスを交えながらの縦に速い攻めを繰り返す事で攻撃権を支配する展開。
その流れを切りたい水戸は12分、自陣左サイドでクリアボールを拾った草野がプレッシャーをいなすように浮き球を送ると、走り込んだ新井が堂鼻を追い抜く強烈なスピードで拾い攻撃に繋げます。
そのまま敵陣に切り込んだ所を追走する堂鼻に倒されて反則・警告と、猛スピードという個の力でそれを果たしに掛かり。
これで得たフリーキックから、キッカー櫻井のファーに上げたクロスを、長澤が叩き付けるヘディングシュートを放ちましたがワンバウンドを経てゴール右へと外れ。
しかしいわきも、17分に今度は山口が中央→左へと向かうドリブルで、山本を剥がしたのちにクロスと個人技で好機を生み出し。
この跳ね返りを拾った山下が再度同サイドからクロス、これを谷村が合わせヘディングシュート(GK松原セーブ)と、新井の脅威にも物怖じしない姿勢を見せ。
20分には水戸同様にセットプレーからで、左からのFKで山下から上がったクロスに、今度は有馬が合わせるもディフェンスを掠めてラインアウト。
これで右CKに移ると、キッカー山下のニアへのクロスをまたも有馬が合わせ、決定的なヘディングシュートが放たれるもGK松原のファインセーブに阻まれます。
そのいわきの圧力はまさにフィジカル集団の本領発揮という所で、次第に防戦一方となる水戸。
25分にいわきがゲーゲンプレスで(有馬が)ボール奪取ののち好機、敵陣でのポゼッションを経て、堂鼻右ポケットへスルーパス→山口奥からマイナスのクロス→有馬シュート(山田がブロック)とここでもフィニッシュに繋げ。
何とか防いで切った水戸でしたが、このタイミングで久保が先程の負傷で限界を迎えてしまい、倒れ込んで交代を強いられます。
同ポジションの駒という事で、ジョーカー的存在の中島を早くも投入せざるを得ず。
劣勢の水戸ですが、先程新井という強烈な槍を見せた事もあり、いわきの攻撃は左サイドが中心に。
即ち加瀬が彼の突破への意識を強めなければならず、その推進力は消される格好となったためやや単調化していたでしょうか。
それでも好機を繰り返すいわき故に、その単調ぶりが伸びきった所を突きたい状況。
30分を迎えた辺りから、徐々にボール保持で攻撃を形にする時間が出来、いわきのプレッシャーに負けないという機運を高め。
ボランチの片割れが最終ラインに降りる「ミシャ式」の形での繋ぎを基本線としながら、降りて来るシャドーを使った前進で好機に持ち込み。
1トップが中島に代わり、彼のポストワークは基本的に「ロングボールを合わせる」のみしか期待出来ないため、逆に地上での繋ぎをと腹が据わった感がありました。
またそのロングボールでは、中島へ蹴り込むと見せかけて、長身ボランチの碇の落としを交える事で単調化を防ぎ。
そんな水戸の主体的な攻撃を受けても、相変わらずマイペースにいわきは好機を作り続け。
展開的には押し気味ながら、前半最後の好機は水戸で45分、そのいわきの素早い攻めを象徴する縦パスの先で牛澤が奪い。
そしてこちらも大崎→草野への縦パスを通して前線へと運びましたが、その後中島のポストプレイがズレて途切れ。
その後長めのアディショナルタイム(目安3分)になるも、お互い粗雑ぶりが目立つのみに終わり、前半終了の運びとなりました。
共に交代無く、流れを掴むのはどちらかという状況で迎えた後半戦。
やはり前半最後で、いわきの流れを断ち切るかのような好機を作った水戸へと振れる結果となります。
早々の後半1分に、こぼれ球を碇が1タッチで縦パスと、いわきの素早い攻めのお株を奪うように前進に成功。
右サイドで山本が石田に遮断されるも、すぐさま奪い返して継続させ、中央へのパスワークを経て中島がペナルティアークからシュート。
堂鼻がブロックするもこぼれ球を長澤が左ポケットへスルーパス、反応した新井が奥からマイナスのクロスと決定的な流れを演出するも、誰にも合わずという結果に終わってしまい。
しかし流れを構築した水戸に対し、あくまでマイペースな応戦姿勢のいわき。
これが拙かったでしょうか、5分に再びこぼれ球を繋いで左サイドから攻める水戸に対し、いわきディフェンスは前掛かりで奪いにいくも(碇のポストワークもあって)果たせずサイドにセンターバック2人も釣り出される事態を招き。
ドリブルに入る新井に堂鼻が剥がされ、大森が立ちはだかりにいくも事態はさらに悪化し、草野へと送られるラストパス。
そしてエリア内を突いて放たれたシュートがゴールネットを揺らし、先制点に辿り着きます。
膠着しながらも押され気味だった展開のなか、自分が観に行った試合(24節・横浜FC戦、2-2)と同様に逆境を跳ね返すゴールを奪った草野。
これで追う立場を強いられ、昇格への灯火が危機となるいわき。
それを振り払うには攻め上がるのみで、7分にはスローインから投げ入れられたボールをラフに柴田がロングパス、これが直接エリア内へ届くボールに。
走り込んだ谷村のポストプレイを経て山口がシュート(ミートせず)と、あくまで少ないタッチでの勝負を挑みます。
対する水戸は11分、いわきのプレッシングに対し地上での繋ぎを挑み、牛澤→櫻井への間を抜く縦パスで突破。
地上でのビルドアップならびに保持の色を濃くする、リードを活かさんとする立ち回りを強め。
先にベンチが動いたのはいわき(水戸の前半の交代を除く)で12分、西川→棚田へと交代。
流れを変えんとした直後の13分、水戸が左スローインで直接裏を突いた草野がワイドからポケットへ侵入と、それに冷水をぶっかけるような好機。
ボールキープがディフェンスに遭い、拾った中島もこぼされた所を、反応した草野が再びシュート。(GK立川セーブ)
いわきの狙いが浸透する前に決めきりたかった所ですが、その役割を担った草野が16分に交代となり。(落合と交代、同時に山本→齋藤へと交代)
ここから防戦一方の状態に陥る水戸、それもいわきが投入した棚田を掴まえられずという形で好機を作られ続け。
20分に棚田がパスを出し入れしながら左へとサイドを移したのち、柴田がポケットを突くパスを入れる状況となり。
最初の谷村を走らせるミドルパスはクリアされるも、尚も繋いで棚田へと縦パスが入ると、カットインからのミドルシュート(GK松原キャッチ)でゴールを脅かします。
ひとしきり押し込まれた水戸は、その後ロングボールでの攻撃で陣地回復ののち、23分に右スローインからポケットを突く落合。
しかしそのカットインが大森に倒され、チャージが完全に足に入ったように見えましたが、反則ならびにPKを告げる笛は吹かれず。
全体的に不安定な印象のジャッジが、今度は水戸の側に牙を向く形になり。
その後、キッカーの位置に2人(大崎・櫻井)が立つという変則的なCKを連続させ、何とか時間と余裕を確保するという立ち回りへと移り変わり。
それも一匙の安堵といった風に、断ち切られると再開されるいわきの攻撃。
29分に今度は右から仕掛ける棚田、有馬とのパス交換からカットインに入ってシュート(ゴール上へ外れる)と、痛烈に脅かされる水戸ゴール。
この直後に加瀬・有馬→五十嵐・ブワニカへ2枚替えと、駒を代えてさらに攻め上がるいわき。
そしてその直後、いわきの方がGK立川から攻める体制を取り、水戸がプレッシングを掛けるという逆の図式で始まり。
これが良かったか、堂鼻縦パス→棚田ポストプレイ→柴田間を通すパス→山口で、プレス回避から中央突破に入る好機を迎え。
右ポケットへのスルーパスに走り込んだ五十嵐のクロスが上がると、ファーサイドで谷村がドンピシャで合わせヘディングシュート。
さしものGK松原も弾くのみが精一杯でゴール上へと突き刺さり、いわきがとうとう攻勢を結実させて同点となります。
それでも勝利以外は不要であり、2点目は不可欠のいわき。
尚も果敢に攻め込みますが、そこに落とし穴が待ち受けていました。
34分、ロングパスを左サイドで新井がカットした水戸は、(バックパスで)保持に入ると見せかけて大崎縦パス→落合ポストプレイで、再び前への意識が高いいわきディフェンスの裏を突くように前進開始。
これが嵌ってまたも好機を迎え、大崎のスルーパスを受けた中島が、その勢いのまま左ポケットへ進入してシュート。
GK立川がセーブするも、ボールの勢いもそのまま勝ってゴールイン。
前線の守備もポストプレイも甘々な、純正リアルストライカーの神髄が発揮されて再度リードを奪った水戸。
またも2点が必要となってしまったいわき。
攻撃の最中でロストが目立つようになる、言わば焦りが顔を出す状態に。
それを尻目に水戸は38分、新井→飯泉へと交代(大崎が左ウイングバックに回る)して守備固めに入り。
その直後に、ボールと無関係な所での反則で警告を貰った飯泉ですが、彼を中央とする5バックで粛々とリードを守りきりに掛かります。
何とかしたいいわきは、40分に最後の交代。(柴田・谷村→大西・熊田)
直後の41分、五十嵐が落合の腕でのチャージを受けながらもキープ、そこから右→中央→左とサイドを移したのち山下のミドルパスが左ポケットへ。
受けた山口が、ワントラップでそのまま前を向きに掛かりましたが、櫻井に身体を入れられて倒れた事でラインアウトで終了。(反則無し)
その際に猛然と追い掛けたブワニカが櫻井を倒してしまう、ボディコンタクトの部分で苛立ちを露わにするという具合に、やはり焦りから良くない流れを強いられ。
それでも終盤を迎えた事で、いわきが猛然と仕掛ける攻撃に、途切れたのちも堂鼻の果敢なボール奪取も加わり継続性も高まり。
五十嵐の右からのクロスを、足を延ばしてヒールで合わせる技巧を見せたのは熊田ですが、枠には飛ばず。(45分)
そうして1点差のままアディショナルタイムに突入、流石にターゲットへのロングボールのみと、パワープレイの色を強めるしか無く。
その中でとうとう決定機が訪れ、堂鼻ロングパス→ブワニカフリックで、左ポケットで拾った山下がカットインを経て中央からシュート。
牛澤がブロックし、掻き出されたボールを山口が追撃、地を這うミドルシュートが間を縫うもGK松原がセーブ。
この跳ね返りを棚田が詰めましたが右へ外れてしまい決められずと、怒涛の3連撃を放ってもゴールを奪えなかったいわき。
仮に決めても時間的に厳しかったでしょうが、結果的に運気は残っていないという事を示すシーンとなりました。
結局1-2のまま試合終了。
残留決定の水戸と、昇格の可能性消滅といういわき。
最終盤らしい、明暗分かれた試合後の光景となったダービーマッチでしたが、来年以降も開催される環境(双方J2のまま)を維持できるでしょうか。
栃木の降格が決まり「北関東ダービー」がJ2から無くなるだけに