※前回の山形の記事はこちら(41節・いわき戦、3-1)
※前回の甲府の記事はこちら(39節・長崎戦、1-1)
<山形スタメン> ※()内は前節のスタメン
- プレーオフ出場の条件は、勝利のみ。
- 岡﨑が今季限りでの引退を表明。
<甲府スタメン>
- PO進出の条件は、勝利で無条件、引き分けの場合は長崎が引き分け以下。
- ACL4節(浙江戦、4-1)からの継続スタメンは、井上・中村・宮崎の3人。
PO出場権を掛けた、6位・7位の仁義なき戦い。
とはいっても、山形の方は前年も経験あり。
前段階では8位だったものの、勝ち点差1の6位・徳島とのホームでの対戦となった最終節。
試合に入りきれていない相手に対し、徹底的に裏を突く攻撃でペースを掴み。
早期に先制点を挙げたのみならず、そのすぐ後に相手に退場者(エウシーニョ)が出た事で俄然有利な状況を手中にしました。
そして数的不利の相手に着実に加点していき、終わってみれば3-0の快勝。
かつ、7位の仙台が(秋田に)引き分けに終わった事で、2つ順位を上げて見事滑り込みに成功。
何が起こるか最後まで判らないPO争い、今季もその場をセットアップして、迎えたホーム最終戦。
ここ最近の戦いとは裏腹に、チアゴをスタメンで起用してきた渡邉晋監督。
対する甲府、ACLを兼務する過酷な戦いを続けていますが、リーグ戦に関しては3試合連続での同一スタメンであり。
前半2分、最後方でのパス回しを経て、GK後藤雅が甲府2トップ(守備時)の間を抜いて縦パスを高江に通し。
そしてすかさず左サイド裏へとロングパスを送る高江、受けたチアゴがカットインで左ポケットに進入して中央へ横パス。
イサカのスルーを経て渡った後藤優がシュート(GK渋谷キャッチ)と、この日も前年のあの時同様、徹底した裏狙いを貫く事を予感させる入りとなり。
それでも序盤は甲府のハイプレスの前に、その前段階である縦パスを遮断される事が多く。
7分には松本凪が敵陣でその縦パスをカット、拾った中村がエリア内右へスルーパスを送り、そこに走り込むクリスティアーノ。
そしてダイレクトでシュートともクロスとも取れるボールを放ったもののブロックに遭い。
甲府優勢とも取れる展開から、流れが変わったかのようなシーンは11分。
ここもチアゴに向けてロングパスを送る山形、オフサイドポジションだったチアゴですが、手前でクリアしたため笛は吹かれず。
しかしそのクリアが逆方向に流れてしまい、甲府サイドがセルフジャッジかつ手を上げてアピールしていたのを尻目に左ワイドで小野が拾って継続。
この後は奥から上がったクロスがクリアされて終わるも、やや迂闊な一幕を露呈してしまいます。
そしてこれと前後して、急速に風が強まるピッチ上。
向かい風をモロに受ける事となった甲府、GK渋谷のフィードもその影響で乱れがちとなり、それに合わせる作業を強いられます。
10分近く山形が攻撃権を独占する時間が続き、出した甲府の答えは宮崎の突破力を押し出す事だったでしょうか。
ハイプレスを諦め、中央を固める事で自陣~中盤でしっかりと山形の攻撃を防ぎ。
そこから右サイドのスペースを突き、ドリブルで奥を取りにいく宮崎。
その流れで得た右コーナーキック(20分)、クロスの跳ね返りを繋いで再び右からクリスティアーノがクロス。
これを中央で中村が合わせ、放たれたヘディングシュートはループの軌道を描いたもののゴール上へと外れ。
しかし折角の反撃の流れもすぐに途切れ、再度山形の攻勢に。
それでも、しっかり中央を固める甲府の前に、普段のような電撃的な縦への運びは期待出来ない状況となります。
そんな中でも、最終ラインは西村を中心に間を通す縦パスを狙う姿勢は崩さず。
33分、例によって西村縦パス→高江から、今度は裏を狙わずに右から前進の姿勢も一旦戻して逆サイドへ。
今度は野田から縦パス攻勢で、小野→チアゴと渡り、そのチアゴのエリア内へのスルーパスに藤本が走り込み。
GK渋谷に抑えられるも、いつものような前進が封じられた事で、繋ぎながら隙を見つけるポゼッションスタイルの崩しの気概が高まった感があり。
中々攻撃できない甲府、35分にはセンターバックの井上がドリブルで右サイドを敵陣まで運ぶなど、何とか流れを変えようとするもその姿勢は報われず。
前半も時間が進み、再度ハイプレスを仕掛けにいき。
41分にはそのプレッシャーでGK後藤雅にフィードを蹴らせたものの、藤本の落としを経て結局山形の攻撃にさせてしまうなど依然として振るわず。
ここからチアゴのドリブルを経て、中央へのパスを受けた高江がミドルシュートを放つもGK渋谷がキャッチ。
結局は「引き分けでOK」(この時点で長崎は1-1の同点)という精神の下、耐え凌ぐ意識を強くせざるを得なかった前半の甲府。
そしてスコアレスのまま、何とか前半を終了させました。
後半を迎える前に、ハーフタイムで宮崎→鳥海へ交代と甲府が動き。
あれだけ攻められれば当然という感じですが、より流動的に動き回る鳥海の投入で流れを変えに来たか。
それともACLでもスタメンだった宮崎に、前半のみで体力を使いきるべく立ち回らせたのか。
後半3分、早速投入した鳥海を絡ませての攻撃。
井上が右斜めへ縦パスを送ると、鳥海がスルーして三平に渡りここから前進。
上げられたクロスは跳ね返されるも松本凪が拾い、三平のダイレクトパスを受けた鳥海が右ポケットへ進入(その後奪われる)という具合に、単騎突破が多かった宮崎とは対照的な立ち回り。
そして直後の4分、縦パスを受けた鳥海に対し小野が後ろからチャージしてしまい反則。
これで警告が出たと思ったら、それはその後異議を唱えた(放送席では人間違いと言っており詳細は不明)後藤優に対してのものであり。
このカードが物議を醸すシーンを招く事となり、その後の7分。
甲府最終ラインにプレッシャーを掛けにいった後藤優ですが、パスを出した蓮川にアフターチャージという結果を招いてしまいます。
当然反則で蓮川も長らく倒れ込む事態となりますが、カードは出ず。
恐らく2枚目はなるべく出したくないという判断が主審(榎本一慶氏)にあったのでしょうが、当然甲府ベンチが猛反発する事となり。
篠田善之監督の大声がひっきり無しに響く状況となりますが、結局判定は変わらず試合は続きます。
その後10分の甲府の攻撃の最中にも、松田をアフターチャージで倒してしまった南が(アドバンテージを経て)警告を受け。
尚も発される篠田監督の(これが警告で何で後藤優のがノーカードなのかという)異議が目立つも、流動性が高まった相手を前に守備面で厳しくなってきたという山形。
そして14分、半分クリアボールという最後方からの縦パスを三平がポストプレイで繋ぐと、右サイドから鳥海が斜めに向かうドリブル。
一気に中央まで切り込んだ末に右ポケットへスルーパスを送ると、走り込む三平が受けるのを阻みにいくGK後藤雅という際どいシーンが生まれます。
腕でしっかりボールを抑えた後藤雅でしたが、その直前にブロックにいった足が三平を引っ掛けてしまったのが拙かったか、三平が倒れた結果反則の笛が鳴り響き。
山形サイドにとっては釈然としないPKとなりましたが、当然判定は覆らず。(前述の甲府サイドの度重なる不満が効いた格好だろうか)
山形が後藤優→高橋へ交代したのもあり、長らく間が置かれた末に、キッカー・クリスティアーノのシュートがゴール左へ強く蹴り込まれ。
GK後藤雅は反応するも届かず、POに近付く先制点を挙げた甲府。
その後、19分にまたも蓮川が(藤本の)アフターチャージで痛む場面が生まれ。
再び長らく倒れ込んだ蓮川でしたが、篠田監督の檄が飛んで何とか起き上がりプレー続行。
その後も、長崎が勝ち越した事で、ピッチ内に「勝つしかないんだ」と指示を飛ばしたりとチームを動かす篠田監督の大声が一際目立っていたこの日の甲府。
反撃の糸口を掴みたい山形。
HTでの調整の影響か、前半と比べて多用していた縦パスを遮断される事が一層多くなり、PKのシーンまで攻撃機会は僅か一度と低調な流れを強いられており。
そして2度目は23分で、南の縦パスを受けた藤本が前進する所中村に反則を受け。
このフリーキックを素早くリスタートさせ、イサカが右からカットインを仕掛けるも防がれて実りません。
早く仕掛けたいという焦りも見え始め、正直この時点では勝利のビジョンが見えない状況に感じました。
既に後半で、良くない流れは采配で変えるべきであり。
26分にベンチが動く山形、イサカ・藤本→横山・デラトーレへと2枚替え。
デラトーレ狙いのロングパスを選択肢に加え、30分に西村ロングパス→デラトーレフリック→チアゴとホットラインらしきものを見せ。(その後チアゴがクリスティアーノに反則を受けて途切れる)
32分にはチアゴがロングパスをフリック、左へ流れるボールを自ら拾うという具合に逆の選択も生きてきたでしょうか。
ここから長らく敵陣で繋ぎ、チアゴのミドルパスをエリア内で収めた高橋がシュートするも枠を捉えられず。
甲府も33分に、三平・クリスティアーノ→飯島・ウタカへと2枚替え。
一方山形は35分に最後の交代、高江・チアゴ→小西・宮城へと2枚替え。
この日は一転してジョーカーの役となった宮城、そして直後に最高の結果を叩き出す事となります。
36分、左からの前進を選択する山形、手法は小野のパスを経ての宮城のドリブル。
細かいタッチで前進し、カットインの姿勢からフェイントで縦突破を選択すると、奥を窺ってポケットへの横パス。
小野が受けた所に松本凪がアタックを掛けるも、上半身を使いながら止めにいくなかで出した足が小野を引っ掛けてしまい、倒れて反則の笛が鳴り響きます。
先程のお返しというようなPKゲットで、キッカーはその状況を齎した宮城が務め。
そしてゴール右へ蹴り込み、GKの逆を突いて見事に決めた結果、試合は振出しに。
他方、長崎はほぼ同じ時間に3点目を挙げており勝利はほぼ手中に。
あと1点が必須の山形ですが、これで甲府も1点が必要と同じ条件なり、混沌とした状況と化するピッチ内。
39分、これまであまり目立たなかった三浦がドリブル突破を仕掛け、左ワイドから中央へ斜めへと向かった末にウタカへスルーパス。
しかし長くなってしまい繋がらず。
41分にも長谷川ポストプレイ→ウタカ横パスを経てボールを持った三浦、左ポケットへ切り込んで中央へ横パスを出しましたが、これも遮断されてしまい好機を作れず。
キツくなってくる時間帯で突破力を利かせにいきましたが、精度が悪く流れを齎せない三浦。
(直後に松田→関口へと交代)
そしてその疲労度の影響か、甲府の守備強度も極端に落ちてしまい。
前掛かりになっては山形にそれを突かれるの連続で、45分にはウタカのスルーパスがブロックされて直接カウンターに繋がってしまい。
宮城が今度は中央を突破してペナルティアークからシュート、しかしGK渋谷がキャッチ。
直後にも山形の攻撃、今度は横山がボールキープの姿勢からカットインを経て縦パス。
受けた高橋が中央からミドルシュートを放ちますが、ゴール左へ際どく外れた末にクーラーボックスを直撃。
その際の激しく飛び散る氷を観て、これが歓喜に変われば……という思いが最高潮に達したかどうかはいざ知らず。
ついに突入したアディショナルタイム。
甲府も山形のバックパスをカットしてカウンターを仕掛け、長谷川の中央突破からのラストパスにウタカが走り込み。
そしてシュートが放たれるも西村がブロックと、勝ち越しを防ぐ側の粘りも凄まじい最終盤。
続く山形の攻撃、右サイドで川井と南がパス交換、ディフェンスに遭いながらも2人で前進。
そしてポケットで縦パスを受けた南が間髪入れず低いクロスを送ると、デラトーレが中央で合わせ。
この足の出し方も万全な風では無かったものの、ワンテンポ置いて左足で放たれたシュートはゴール上部へ突き刺さります。
とにかく点を取るだけというオープンな展開のなか、とうとうスタンド全体を熱狂の渦に巻き込む勝ち越し弾が生まれました。
諦めは許されない甲府。(キックオフの前に松本凪→林田へ交代)
井上を前線に上げ、パワープレイの格好で押し込みに掛かり。
その井上へのロングボールから、跳ね返りを繋いで右から関口がクロス、大外で長谷川が合わせにいきましたが身体に当ててしまいミート出来ず。
何とかその後CKを得て、GK渋谷もターゲットに加わり最後の攻撃。
キッカー長谷川のニアへのクロスをウタカがヘッドで合わせるも、これも枠外に終わり。
そして試合終了の笛が吹かれ、PO最後の一枠の決着がつきました。
既にPO圏を決めている千葉が敗れたため、5位にまで浮上する事となった山形。
前年とは遥かに厳しい戦いとなりました、それでも苦労の末にATの劇的ゴールで勝ち取ったPOは格別なものがあるでしょう。
余韻に浸る間も無く……と見せかけ、今季は代表ウィークに合わせるように2週間のインターバルが採られる日程。
1回戦の相手は強敵・清水なので、これを利用しどれだけ煮詰める事が出来るかが勝負のカギとなるでしょうか。
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