堅守の戦い・第2ラウンド。(ちなみに前回も取り上げました)
現在広島の監督を務めている城福浩氏は、前所属がFC東京の監督という因縁持ち。
しかもそれは2期目であり、FC東京関係者(サポーター含む)に一定の信頼を得ていたと思われましたが、その2期目を務めた2016年はあっさりとシーズン途中で解任という憂き目に遭いました。
1期目はというと、2008年から就任しナビスコカップ(現ルヴァンカップ)のタイトル獲得を齎したりしましたが、やはり2010年途中に解任されるという終わり方。しかもこの年最終的にFC東京はJ2降格してしまうというミソまでついてしまいました。
Jリーグ参入直後の大熊清氏・原博美氏の事例しかり、FC東京の日本人監督は、2度監督を務めなければならない。
そんなクラブ伝統の縛りを感じさせてしまうこの城福氏の履歴であり、前任のマッシモ・フィッカデンティ氏がチームを浮上させた後とあって、成績面でも誰も得をしないという状態だった当時のFC東京。
その後現監督・長谷川健太氏就任(2018年開幕前)まで混迷を極める事を余儀なくされましたが、今季は優勝も現実的な立ち位置にまで浮上している現状。
一方城福氏はというと、FC東京1期~2期の合間には、甲府の監督を務め当時J2に居たクラブをJ1に昇格させる事に成功。
その後2年間同クラブをJ1に残留させ、3年間の任期を全うし惜しまれながらの退任となりました。
その時甲府に在籍していた柏・佐々木・稲垣が、現在城福氏の下で広島選手として在籍しているという、偶然にしては出来過ぎな巡り合わせとなっています。(3人とも甲府から直接広島に移籍という経歴)
広島は2010年代に3度リーグ優勝を果たし、成績の面ではビッグクラブと言っても良い最近の歴史を描いていますが、そうはなれない一因がクラブの体力面。
決して裕福とはいえない経営面で、一度歯車が狂うと一気に転落してしまう状況は中堅・下位クラブと変わらず、2017年には降格一歩手前まで低迷する事を強いられました。(15位でギリギリ残留)
そして翌年から城福氏を監督に招き、今季は再びACLと並行しながらの戦いに戻る事に成功しています。
前年から戦術を変更し、3-4-2-1のフォーメーションを基調に、堅守を貫きながらも攻撃はボール支配率を高めるという両方を突き詰めているのが今季の広島。
その変更は前年大活躍のパトリック(現ガンバ)すらサブメンバーに回される程の非情ぶりで、かつメンバーを固定しての戦いでも無く。
目下8戦無敗(4勝4分)でこの日を迎えており、ACLの関係で中2日での戦いを強いられた21節・札幌戦でもチーム一丸となって1-0での勝利を挙げるなど粘り強さも健在です。
さて試合の方は、堅守同士の戦い極まれりという立ち上がり。
ボール保持に長けた広島側が、中々シュートを撃つという選択肢に辿り着かないという、ややもすると退屈とも採られかねないような展開を描いていきます。
東京はいつもの4-4-2ブロック、2の部分の縦関係の配置(ディエゴ・オリヴェイラと永井)でカウンターを狙うというのは変わらず。
しかしポゼッションスタイルの相手には、要所でプレスを掛けて高い位置で奪うという姿勢を見せるのも必要になってきます。
それが前半15分に敢行されたものの、ここでは奪えずにリトリートを余儀なくされる東京。
今季広島で全試合出場しているのは、柏と川辺の2人。
今季の戦術変更は、前年サブに甘んじていた川辺をパサーとして機能させるためのものかと最初は思っていました。
しかし攻撃の中心は両ウイングバック周辺であり、そこで三角形を作りながらのパスワークでボールを支配していく形が基本線。
その中心の一方が左WBの柏で、もう一方の右に助っ人枠を使うという選手編成が採られています。
開幕当初右WBのレギュラーはエミル・サロモンソンでしたが、故障もあり現在はハイネルに鉢が回ってきています。
そのサロモンソンが途中退場した試合(13節・浦和戦)でいきなりゴールという結果を挙げたハイネル、その2節後からスタメン定着する事に成功していますが、そのプレーは粗削りという印象。
突破力に長けているものの球離れや守備面ではやや難あり、というのが自分の最初の見立てであり、サロモンソンを鋭利と表現するならハイネルは豪快、そんな感じでしょうか。
ハイネルでこの日最も印象的だったのが、前半アディショナルタイム。
佐々木の縦パスを受けたドウグラス・ヴィエイラがFC東京DFをかわして右サイドにパス、その先には走り込むハイネルが。
トラップしてからクロスorカットイン(からのシュート)を狙うのが定石でしょうが、ダイレクトで蹴られたボールは明後日の方向に飛んでゴールラインを割ってしまい、良くも悪くも豪快だという印象を強くしたシーンでした
そんなハイネルですが、最近は広島のチームカラーにも順応しているようで、右サイドでのパスワークに馴染みを見せていたこの日。
話を戻し、この両WB中心のパスワークにより、FC東京サイドも「ボールを奪ってカウンター」という理想形にいく事が中々出来ず。
縦に速い攻撃が理想であるのがカウンターですが、広島側がゆっくりとしたボールキープを敢行し中々フィニッシュまでいかないため、FC東京もそれに知らず知らずのうちに合わせてしまっていたような感じでしょうか。
そこに審判団の判定も重なり、次第にフラストレーションも溜まっていく展開に。
前半アディショナルタイム(上記のハイネルのプレーの後)、中盤でのパスカットが永井に渡るという絶好機になりましたが、ディエゴとワンツーでエリア内に進入を図った所で広島・野上とぶつかり倒れます。
しかしこれがノーファールという判定になり、直後の前半終了の笛で味の素スタジアムはブーイングの嵐に。
後半立ち上がり早々のFC東京の攻撃、左サイドでオジェソク→高萩のヒールパスでディエゴに渡ります。
ディエゴは広島・野上をかわしてカットイン、ゴールに接近しようとするもゴールラインを割り惜しくもゴールキックに。
流れを掴んだかに見えましたが、それも生かすことが出来ず。
後半5分にハイネルのドリブルを室屋が、8分には柏のドリブルを森重が反則で止めるという、徐々に守備陣に綻びが感じられるシーンを作ってしまいます。
逆に前半のパス回し中心のサイド攻撃から、突破を図り脅威を与える事に成功した広島。
後半12分に青山を投入(東峻希と交代)し、川辺がシャドーに上がるという勝負手を打ちます。
それが16分に実を結び、一旦は右サイドから攻撃しようとするも、ハイネルからボールは中央へ戻り稲垣→青山と渡り逆の左サイドへ。
ボールを受けた柏は、エリア内左に動いたシャドー・川辺にパスを送ると同時に上がり始めエリア内へ、そこに川辺は2タッチでリターンパスを出し、絶妙なタイミングで受けた柏。
ワントラップからの強烈なシュートはGK林彰洋も止めきれず、弾かれたボールはそのままネットに突き刺さりました。
先制されたFC東京、すかさず永井→ジャエル・大森→三田と2枚替えを敢行し攻勢に。
直後の18分、敵陣でディエゴがボール奪取に成功しコーナーキックを得、そこから何度もクロスを上げる攻撃を見せますが最後はジャエルのヘディングが枠外に。
高い位置で奪う攻めの姿勢を見せた攻撃でしたが、守備が薄くなる諸刃の剣でもあります。
25分に東慶悟が川辺を倒して反則、28分にジャエルが青山を倒すもアドバンテージで攻撃を受ける(その後柏がタッチに出す)という場面は、前方から何としても奪わなければならないという気持ちが前に出過ぎたため起こったのでしょう。(両者に警告)
その後30分に東慶悟→ナサンホに交代。
広島側もハイネルが足を攣らせて31分にサロモンソンと交代、27分のドウグラス→レアンドロ・ペレイラとの交代と併せ、両チーム早々と3枚交代枠を使い切る試合に。
ディエゴ・ジャエル・ナサンホと助っ人3人が揃い踏みとなったFC東京。その後の攻撃でジャエルはヘディングシュート(36分)、ナサンホは強烈な直接フリーキック(43分)と見せ場を作りますが、いずれも広島GK・大迫にキャッチされゴールならず。
逆に広島は相手のお株を奪うカウンターを何度か炸裂させますが、何故か1トップのペレイラはそれに絡む事無く、川辺や柏が単騎でエリア内に突入するという状況でゴールは奪えずに終わります。
結局そのまま0-1で広島が逃げ切り勝利。
シュート数も7対4と非常に少ない、守り合いに相応しい結果となりました。
首位のFC東京、敗戦という結果でこれからの「地獄のアウェイ8連戦」を迎えてしまう事となりましたが、初優勝への難儀な関門を突破できるでしょうか。