酔眼独語 

時事問題を中心に、政治、経済、文化、スポーツ、環境問題など今日的なテーマについて語る。
 

「死ぬまで働け」の勧め?

2017-01-06 09:30:25 | 話題
 世の中には暇な方々がおられるようで…。学者などというのもその範疇に入っているらしく、高齢者の定義見直しなどというお節介に乗り出した。

《日本老年学会などは5日、医療や介護などで「65歳以上」とされている高齢者の定義を「75歳以上」に見直すべきだとする提言を発表した。健康に関するデータの分析から、医療の進歩や生活環境、栄養状態の改善などで、65歳以上の体の状態や知的機能は10~20年前と比べ5~10歳ほど若返っていると考えられるという。

「高齢者」の厳密な定義はないが、国連は1956年の報告書で65歳以上を高齢人口と定義し、日本も準じている。国民年金や介護など社会保障関係の国内法令も、現役世代との区分を65歳としている。

 同学会は、65~74歳を健康で活力がある人が多い「准高齢者」と定義し、仕事やボランティアなどの社会活動への参加を促すよう求めた。75~89歳は「高齢者」、90歳以上は「超高齢者」と位置づけた。

 65歳以上の心身に関する各データを同学会が解析したところ、要介護認定率や脳卒中死亡率などは年々低下し、身体の動きや知的機能は上昇が見られた。2014年度の内閣府意識調査で、高齢者を男性が70歳以上、女性は75歳以上とする回答が最多だった点も勘案した。

 一方で、提言を社会保障制度に直接結びつける議論は慎重にするよう訴えた。

 提言をまとめた同学会の大内尉義(やすよし)・虎の門病院長は「65~74歳は元気な人も多く、今の高齢者の定義に合わなくなっている。自主的な社会参加を促せば、社会の支え手を増やせる」と説明した》=mainichi.jp=。


 本気でこんなことを考えているとしたら、それはもう学問や科学ではない。年齢と体力の関係について文科省のレポートは次のように述べている。

 《新体力テストの合計点からみた6歳から 11 歳の体力水準は,男女とも加齢に伴い急激で著しい向上傾向を示している。12 歳から 19 歳では,男子は 17 歳までは著しい向上傾向を示し,その後緩やかな低下傾向を示す。女子は 14 歳までは緩やかに向上し,19 歳まではその水準が維持される。20 歳以降は,男女ともに体力水準は加齢に伴い低下する傾向を示しているが,その
傾向は,ほぼ 40 歳代ごろまでは女子の方が男子よりも比較的緩やかである。40 歳代後半からは,男女ともに著しく体力水準が低下する傾向を示し,65 歳から79 歳でも,男女とも加齢に伴いほぼ直線的に低下する傾向を示している》

 男女とも体力的なピークは20歳前後、40歳代後半からは「著しく体力水準が低下」し、65歳からはさらに急激に低下するというのだ。元気そう、若く見えるといっても、加齢による衰えは確実にあるのだ。

 一方、当の高齢者たちからも「65歳を過ぎたからといって高齢者扱いされたくない」という声があがっている。年齢不詳の「美魔女」などという人種もおられる。これはこれ、それはそれ、である。若者は子供扱いされたくないし、年配者は年寄り扱いされたくないのが人情だ。こういうことは学会が四角四面に定義するような問題ではないだろう。

 ただ、医療や福祉分野では高齢者の定義は必要だ。65歳を過ぎると一見健康そうでも、あちこちガタが来る。当然医者にかかるケースも増えてくる。厚労省のデータは次のように言う。

 《年齢階級別にみると、0~14歳は2兆2326億円 (6.4%)、15~44歳は4兆8362億円(13.9%)、45~64歳は8兆7397億円 (25.1%)、65歳以上は18兆9999億円(54.6%)となっている。
人口一人当たり国民医療費をみると、65歳未満は15万8900円、65歳以上は67万3400円となっている。そのうち一般診療医療費では65歳未満が11万4200円、65歳以上が51万7400円となっている。歯科診療医療費では、65歳未満が1万7400円、65歳以上が2万9900円となっている。薬局調剤医療費では、65歳未満が2万4600円、65歳以上が10万4500円となっている》。

 65歳が一つの曲がり角であるのは疑いようがない。

 なぜこんな提言が出てくるのか。《提言を社会保障制度に直接結びつける議論は慎重にするよう訴えた》とはいうものの、狙いは明らかだ。医療費や社会保障費の抑制と労働力の確保である。年金支給は75歳から、死ぬまで働け-の掛け声が聞こえてくる。

 生涯現役などという言葉が流行っているようだが、意味不明だ。人間は生きている限り「現役」である。どのような生き方をするかは個人が決めることだ。働いていないものは「現役」ではないような言い方はピンボケもいいところである。「飲んで 食って 歌え」-「べっぴんさん」の先々代が残した言葉を噛み締めたい。

 
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タクシー、なぜ暴走?

2016-12-06 17:24:45 | 社会
 3日前、福岡市で起きたタクシーの暴走事故が気になる。

 最近、高齢ドライバーによる病院などへの突っ込み事故が相次いでいる。この事故も、一報を聞いたときには「またか」と思ったが、違うようだ。自動車運転処罰法違反の疑いで現行犯逮捕された容疑者はプロドライバーでまだ64歳。体調にも問題はなかったと伝えられている。

 引っかかったのは、事故車がプリウスだということ。数年前、アメリカで「急発進事故続発」と問題になった。かの国のケースはほとんどがアクセルとブレーキの踏み間違いだったとされ、その後沈静化した。ただ、プリウスに限らず、近年の自動車は電子機器の塊。回路の不良などによるトラブルも起きている。

 事故を伝えるテレビの映像をみるとボンネット先端のトヨタ車マークがすっぽり外れている。警察が気を利かせて外したわけでもないだろうが、あんなに綺麗に外れるものなのか。

 運転手は「ブレーキが効かなかった」と供述しているらしい。「エンジンブレーキも効かなかった」と言う。これだけでは踏み間違いではなかったとは言い切れない。ただ、ハンドル操作はそれなりにできており、他の車を回避したりしている。うーん、分からん。

 事故原因の特定を警察だけに任せておくのはいかがなものか。事故調なりで本格的に調べてはどうか。

 これまで「踏み間違い」などとされてきた事故に不具合は紛れ込んでいないか。きっちり調べてもらいたい。
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盲目のメディア

2016-11-10 09:26:08 | メディア
 米大統領選挙はトランプの勝利で幕を閉じた。「世紀の大番狂わせ」「驚くべき結果」「何が起こったのか」-メディアは自らの予想と反した結果に周章狼狽の体である。番狂わせとは平幕が絶好調の白鵬に買った場合などに言う言葉であって、今回のようにつばぜり合いの戦いには当てはまらない。これを「番狂わせ」と評しているのは、自らの不明を告白しているようなものであろう。ブレグジットと言い、米大統領選と言い、メディアは予想を外しまくっている。なぜか。彼らはエスタブリッシュメントのインナーであり、大衆の心理が理解できない存在に「成り上がって」いるからだ。

 読売新聞国際部長の飯塚恵子は「大衆迎合で大国導けぬ」と題してこう書く。

 「米国でこんなに怒りや不満を抱え、『疎外』されていた人が多かったのか、と驚くばかりである」。商業紙で世界最大部数を誇る新聞の国際部長がこんなことで驚いてもらっては困る。かの国の下流社会の現実の酷さについては、10年前邦訳が出版された「ニッケル・アンド・ダイムド」や堤未果の一連の著作などが明らかにしている。メディアはそれに目を塞いできたのだ。

 飯塚はこうも言う。「トランプの熱狂的支持者は、比較的貧しい白人労働者たちだ、と何度も報じてきた。だが、彼らの怒りがここまで充満していたことにどれだけの日ちが気づいていただろうか。「何度も報じ」ながら、深層を見抜けなかった己を恥じてもらいたい。

 大衆の怒りに「迎合」しろとは言わない。だが、大衆の心理に迫れないメディアは、既にその存在価値を失っている。一連の「驚くべき結果」から何を学ぶか。そこが要である。
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「パリ協定」日本抜きで発効!

2016-10-05 17:03:42 | 政治
2020年からの温暖化対策を定めた国際ルール「パリ協定」が11月初めに発効することが確実となった。米中2大排出国に加え、世界4位の温室効果ガス排出大国であるインドも批准を決定、近く批准手続きを終えるEUと合わせると発効の条件とされる排出量の55%を上回ることが確実になったためだ。批准国による締約国会議は11月7日にモロッコで開かれる。

 ところがである。5月の伊勢志摩サミットで「パリ協定の早期発効を目指す」との首脳宣言をまとめた日本は、この会合に参加できないというのだ。

 《山本公一環境相は5日の参院予算委員会で、2020年からの地球温暖化対策の国際ルールを定めた「パリ協定」について、日本は国会での承認手続きが間にあわず、11月7日にモロッコで始まる国連気候変動会議(COP22)での締約国会合に参加できないとの認識を示した。民進党の福山哲郎氏の質問に答えた》=朝日Web=。

 未だに批准案を国会に提出する準備が出来ていないとは驚きだ。各国での批准がこれほどサクサク進むとは読んでいなかったためなのか? 外務省の情報収集能力の低下を物語る出来事といえよう。

 この問題をめぐるメディアの対応も面白い。「政府機関紙」の感がある読売はほぼ一貫して無視を決め込んでいる。朝日は先月半ば頃から「日本が取り残される恐れ」との観測記事を書き、日経は「さっさと批准して温暖化対策を先導しろ」と政府の尻を叩く。ユニークなのは産経で「慌てて批准するな」と警鐘を鳴らす。①温室効果ガス削減余地の大きい米中と日本を一緒にはできない②原発のフル活用が見通せない状況で過度な約束をすべきではない-などがその理由だ。

 批准への地ならしがスピード感を欠いているのは、果たしていかなる事情によるのか。外務省の無能、批准への逡巡それとも安倍クンのリーダーシップの欠如か。もっとも安倍晋三にとってパリ協定などちっぽけな事柄かもしれない。今国会の所信表明でも触れていなかったもんね。


 
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「天皇」ってほんと難しい

2016-09-25 16:23:32 | テレビ
 さる8月、天皇が国民に向けたビデオメッセージで「生前退位」の意向をにじませる考えを表明したことを受け、ようやく政府が動き出した。「有識者会議」を設置して「静かに議論」するのだという。どんなお方が-と顔ぶれを見てがっかりというか、げんなりというか…。憲法や天皇制を専門にした識者はゼロ、いつかどこかで見たような人々で固めた〝お友達会議〟というのがふさわしい。

《政府は23日午前、天皇陛下の「生前退位」を検討する有識者会議のメンバーに経団連の今井敬名誉会長や東大の御厨貴名誉教授ら6人を起用すると発表した。会議の設置は同日付で、10月中旬にも初会合を開く。政府は今の天皇に限り退位を認める特例法での対応を軸に、早ければ来年の通常国会での法整備を目指しており、有識者会議で議論を本格化させる。

 会議の名称は「天皇の公務の負担軽減等に関する有識者会議」で、安倍晋三首相が開催する。メンバーはほかに上智大大学院の小幡純子教授、慶応義塾の清家篤塾長、千葉商科大の宮崎緑教授、東大の山内昌之名誉教授。会議では憲法や皇室制度に精通した外部の専門家からも意見を聴き、提言を取りまとめる。事務局は内閣官房皇室典範改正準備室が担う。

 菅義偉官房長官は23日の閣議後の記者会見で「今上陛下がご高齢であることを踏まえ、公務の負担軽減などについて予断を持つことなく静かに議論したい」と強調。有識者会議については「憲法上、天皇の地位は国民の総意に基づくとされていることを踏まえ、高い識見を有する方々に国民の幅広い意見を反映した提言を取りまとめてもらう」と語った。

 提言時期については「いたずらに対応を先延ばしするものではない。はじめにスケジュールありきではなく会議の議論の中で考えてもらう」と述べるにとどめた。有識者会議の議論の方向性がまとまった段階で、与野党を交えて議論する必要があるとの認識も示した。

 首相は26日の臨時国会召集日に実施する所信表明演説で、有識者会議で議論を深める考えを示す見通し。生前退位を巡る議論については18日に羽田空港で記者団に「期限ありきではなく、静かにまずは様々な方々からお話を伺いたい」と述べた》=24日・日経Web=。

 だいたい、会議の名称からして逃げ腰だ。「公務の負担軽減等に関する…」-生前退位を前面に据えなくてどうする。「陛下のお言葉を受けて、生前退位の検討~立法化となると憲法に抵触する恐れがある」と考えてのことだろうが、こんなことでまともな議論ができるわけがない。

 この会議にはもっと大胆な議論を求めたい。例えば憲法第一条の「国民の総意」とは何かといったことについてである。憲法改正に熱心な安倍首相のことである。第一条からきちんと考えてみようではないか。

 とはいえ、宮崎緑さんらがそのような本質的な問題について侃々諤々やりあうということはないだろう。結局、官邸と宮内庁の合作による答申に終わるのがおちだ。
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パラリンピック考

2016-09-21 09:23:04 | スポーツ
 リオパラリンピックが閉幕しました。NHKが頑張って中継してくれたおかげで、様々な種目を堪能できました。目の見えないスイマーの豪快な飛び込み、浮遊感がすごい走り幅跳び…。オリンピックとはまた違った魅力がたっぷりでした。

 今大会、金メダル10個を目指した日本は、メダル総数こそ前回を上回ったものの金はゼロ。各メディアは「強化に遅れ」「指導者不足が顕著」などと警鐘を鳴らしています。

 《18日に閉幕したリオデジャネイロ・パラリンピックで日本勢は金メダルがゼロに終わった。前回ロンドン大会を上回る24個のメダルを獲得したが、「金ゼロ」は夏季大会では初めて。障害者スポーツ界で何が起きているのか。
 競泳男子の木村敬一(26)が目に涙をにじませた。金メダルが期待されていた14日の100メートルバタフライ(視覚障害)決勝。0秒19差で2位になり、「負けた以上、悔いが残らないことはない。死ぬまでモヤモヤする」と絞り出した。17日にあった陸上男子走り幅跳び(切断など)では、山本篤(34)が8センチ差の2位に終わった。
 日本は、24個のメダルを獲得した。前回のロンドン大会の金5を含む計16個を上回ったが、今大会の金メダルはゼロ。1964年東京大会に参加して以来、夏季パラリンピック史上初めての事態となった》=9月20日朝日Web。

 パラ五輪もスポーツである以上、成績を重視するのはある意味当然でしょう。しかし、メダル獲得競争が加熱するのは感心しません。某大国のように国を挙げての強化、強化の行き着く先を考えると少し寂しくなります。

 障害の程度によるクラス分けも細分化しすぎていて、分かりにくい。両足義足の人と機能マヒの人が同じクラスで走るのは何か変です。腕を失った人のレースを見ていると、両手がない人、肘から下がない人、肩からない人などいろんな人が競っていました。どう考えてもハンディは違う。車椅子でトラックを走るもの制約が多過ぎる感じです。

 パラ五輪の参加者は、装具などの習熟に時間がかかるせいか、ベテランが多い。4度目、5度目という人も珍しくない。もともと競技層が薄いのですから、これは仕方ないことかもしれません。とはいえ、「これまで獲得した金メダル10数個」などというのは正常とは思えません。

 用具が勝負を決めてしまうような側面もあるといいます。これでは途上国の選手は太刀打ちできません。

 パラ競技の用具の研究、装着した場合の有利不利をさらに徹底的に追求し、トップの選手は五輪で競うのがベストでしょう。陸上100mなどを見ていると、両足義足の選手の終盤の加速力は目を見張ります。直線200mのレースがあれば、ボルトを負かしてしまうかもしれません。

 パラリンピックは障害者でもスポーツで輝ける-と訴えています。輝くのは勝者だけではありません。幾多の困難を克服して競技に打ち込む、その姿が輝いているのです。メダル争いだけに固執するのではなく、「参加することに意義がある」大会にしてほしいと思います。

 

 
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鳥越俊太郎の「晩節」

2016-07-13 15:20:05 | 話題
 「ジャーナリスト」の鳥越俊太郎が東京都知事選に野党統一候補として出馬するという。

 《東京都知事選(14日告示-31日投開票)を巡り、ジャーナリストの鳥越俊太郎氏(76)が12日、都内で記者会見し、立候補を正式に表明した。鳥越氏は「憲法改正が射程に入ってきた。そうした流れを元に戻すため、首都東京から発信できればすばらしい」と述べた。民進と共産、社民、生活の野党四党は同日、鳥越氏を統一候補として支援することで一致した》=東京新聞。

 鳥越氏は12日の記者会見で「残りの人生はそんなにない。その何分の一かを使って、チャンスを与えていただいたら、東京都のために全力をささげたい」、「外側からウォッチし続けるアウトサイダーであり続けたいと思ってきたが、最後に一回ぐらい責任を果たして見る気はないのかという内なる声に導かれて手を挙げた」などと述べた。いい年をした大人が、出たいというのだから外野がとやかく言うこともないが、どうもこの御仁は胡散臭い。

 鳥越はそのソフトな風貌と語り口でそれなりに人気があった。筑紫哲也のフェイクと言えないこともないが、一応反権力のポーズは取り続けている。がしかし、である。鳥越はテレビのCMや新聞広告にも頻繁に顔を出しているのである。アフラック、損害保険協会、トゥルースリーパー、サントリー…。企業や製品の宣伝を一切するなと言っているわけではない。説得力に満ちた基準、確固たる信念に基づいてその商品なりを薦めるのであればまだ理解できる。だが、鳥越からそれぞれの企業・商品について「能書き」以上の説明は聞いたことがない。タレントは別として学者やジャーナリストは個別のCMなどにかかわるべきではない。もっとも彼は「ジャーナリストではなくニュース職人」と称しているようだが…。

 76歳という年齢やガンの予後のこともある。何よりも問題なのは、いきなり都政にかかわりたいと考えた動機である。「憲法改正の流れを元に戻すため」-ポーズは決まっているが、中身はゼロだ。かつて京都府の蜷川虎三知事は「憲法を府政に活かす」をスローガンに掲げた。蜷川府政の功罪については置くとして、福祉や教育では独自色を発揮していた。鳥越が憲法を叫ぶなら、現行の都政を憲法の視点できっちり点検し、問題点を都民に提示すべきだ。それ抜きに憲法、憲法と言い募っても政治的プロパガンダに過ぎない。

 表題には「鳥越の晩節」と掲げた。だがこのお方に節などはないのだ。それにしても民進党はじめ野党はだらしない。お茶の間に名前が知られた候補でなければ勝てない-と判断した時点で終わっている。それは自民党にも言えることだが…。

 「2020年五輪返上」-泡沫以外で真面目に訴える強者はいないのかねえ。

 

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「ダッカ殉難者」帰国に思う

2016-07-05 08:42:16 | 国際事件
 「ダッカ人質事件」で犠牲となった邦人7人の遺体が5日早朝、政府専用機で帰国した。岸田外相、北岡JICA理事長らが出迎えた。

 専用機近くには白布で覆われた七つの柩が並んだ。花束が手向けられ、黙祷が捧げられた。7人の無念さを思うと胸が塞がる思いである。と同時に、この映像を執拗に流し続けるNHK(ほかは見ていないので分からない)には違和感を覚えた。

 午前7時数分前、ローカルニュースを遮って羽田からの中継が飛び込む。岸田外相が献花するシーンが映し出された。ローカルニュースの前にも十分すぎるほどの時間を割いて専用機帰国を伝えていた。岸田らの献花は地元ニュースをぶった切って流すほどの意味があるとは思えない。そんなことを考えながら眺めているうち、妙な既視感にとらわれた。ベトナムやアフガン、イラクなどで戦死した米兵遺体の帰国シーンである。

 星条旗にくるまった柩。政府や軍関係者が出迎え、儀仗兵が柩を運ぶ。お国のために戦った人々への鎮魂の礼である。

 〝安保法案〟の施行により自衛隊員が海外で戦死する蓋然性が高くなっている。今回の出迎えは、それに備えた予行演習のように見えた。

 途上国支援はJICAの表看板である。脆弱な社会インフラを立て直し、暮らしやすい地域を作り上げる。現地で活動する一線の方々の思いは純粋だろう。だが、巨視的に見れば援助国の海外進出の橋頭堡であることは間違いない。だから中国と競い、欧米と権益争いを繰り返すのである。

 バングラのハシナ政権は野党を力で封じ込め、道路封鎖などのデモを蹴散らした。これに反発する若者らの過激な行為が跡を立たず、昨年は100人以上のテロ犠牲者を生んでいる。こうした流れの中に今回の事件も位置づけられよう。

 事件の犠牲者を悼み、卑劣な犯行を憎むのは当然の心情だが、過度に死者を美化することは慎みたいものだ。

 

 
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NHK質問のとほほ

2016-06-02 08:54:36 | テレビ
 来年4月に予定されていた消費税引き上げを2年半先延ばしすると安倍首相が正式に表明した。理由は「世界経済のリスクを回避するため」だという。あれこれ並べ立てていたが、いずれも苦しい言い訳に聞こえた。

 《 安倍晋三首相は1日夕、第190通常国会の閉会を受けて官邸で記者会見し、2017年4月に予定していた消費税率10%への引き上げを19年10月まで2年半延期すると表明した。「危機に陥るリスクに手を打つべきだ。内需を腰折れさせかねない」などと理由を述べた。

 安倍首相は先月27日、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)閉幕にあたっての記者会見で、世界経済について「大きなリスクに直面している」との見方を示していた》=日経com=。

 二枚舌、三枚舌の安倍の言説についてはこの際置いておく。取り上げたいのは内閣記者会の面々による質問のくだらなさだ。ゆるゆるで話にならない。「参院選で信を問う」「勝利は改選議席の過半数」と述べた安倍に、なぜ「目標に達しなかったら辞任するのか」の質問を投げかけないのか。参院選敗北→下野という安倍のトラウマ、古傷を突く価値は大いにあると思うのだが…。

 最もひどかったのがNHK官邸キャップの原聖樹である。参院選の勝敗ライン、憲法改正などの質問が続いたあと「最後に」と指名されてやおらお伺いしたのがこれである。

 《(内閣広報官) 最後にもう一問だけいただきます。 では、原さん。

(記者)
 総理、伊勢志摩サミットでは、中間層が経済的な利益を得られるような財政出動ですとか投資を行うべきだという認識で共有されたわけなのですけれども、個人消費の伸びに力強さがないことに対して、中間層が細っているですとか、あるいは格差が拡大しているという批判がありますけれども、そういった御指摘に対して総理はどのように受け止められていますでしょうか。
 また、消費増税の延期と合わせて、中間層を分厚くするための経済対策を講じる考えはおありでしょうか 》=官邸HP=。

 原質問は官邸サイドと打ち合わせて行われた形跡が濃厚だ。質問に答える安倍はメモに目を落とし、細かい数字を上げてアベノミクスの成果を強調してみせた。「よくぞ聞いてくれました」というわけである。

 原は質問の冒頭名乗ることになっている所属を言わなかった。出来レースが見え見えの質問で「NHKの原です」と名乗るのが恥ずかしかったのだろう。岩田明子や原らは「官邸御用達記者」と呼ぶのがふさわしい。

 
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オバマの花道

2016-05-11 08:45:52 | テレビ
 米国のオバマ大統領が月末の伊勢志摩サミットの「ついで」に広島を訪れることが決まったという。

 《日米両政府は10日、オバマ米大統領が今月26~27日に三重県で開かれる主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)のために来日する際、被爆地・広島の平和記念公園を訪問すると発表した。現職の米大統領による広島訪問は初めてで、安倍首相が同行する。訪問はサミット閉会後の27日夕を予定しており、オバマ氏は現地で演説し、「核兵器のない世界」に向けた取り組みを今後も継続する方針を表明する見通しだ。

 安倍首相は10日夜、首相官邸で記者団に「オバマ大統領の広島訪問を心から歓迎する。今回の訪問を、全ての犠牲者を日米でともに追悼する機会としたい」と語った。その上で「オバマ大統領が被爆の実相に触れ、その気持ち、その思いを世界に発信することは、『核兵器のない世界』に向けて大きな力になると信じる」と訪問の意義を強調した》=読売online。

 各紙は1面から社会面まで「歓迎」のオンパレード、世紀の決断のように伝えている。しかし、オバマの広島訪問は戦没米軍人を含む「慰霊」であり、「謝罪」の意図はないとされる。核廃絶に向けた決意を改めて披瀝する場と位置づけているという。

 オバマと核兵器といえば、2009年4月のプラハ演説を思い出す。「核なき世界の実現」を高らかに歌い上げ、ノーベル賞を射止めた。その後、あの決意はどうなったか。今に至るまで何もしていない。で、広島である。最初と最後を外国での「核廃絶演説」で飾るだけではないのか。オバマ自身はその気があったとしても、対抗する勢力に阻まれて何もできなかったことに変わりはない。広島で核廃絶について述べるなら、自らの非力さ、不誠実さをまず謝罪してからにしてほしい。

 オバマの広島訪問は安倍にとっては渡りに船だ。早くも政府内からは「(参院選で)外交成果として強調できる」などの声が上がっている。歴史に名を刻みたいオバマと安倍の思惑が合致したということなのだろう。

 被爆地も歓迎一色と伝えられる。本当に日本人って悲しいほどに善人で、素直だ。
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