このお話に出てくる農民達は既に相当追い込まれた状態です。
土地や仕事を貴族達に奪われ、鬱積した不満は爆発寸前です。
高くそびえる壁に向かって、怒りをぶつけるように激しく投石します。
農民達は舞台に開けられた2つの”穴”や、1階席の扉から何度も出て来ます。
客席に降りての演技も多く、アタシは彼らと兵士達の戦いをそばで観る機会に恵まれた時がありました。
とても印象深かったのは、農民達が兵士達と対照的なところ。
農民達の手にする武器は鍬や熊手と言った農耕具で、服は粗末な物だし、靴は擦り切れていました。
比べて兵士達はピカピカの鎧を着、手にする剣はとても立派で切れ味が良さそうです。
農民達の瞳はギラギラしていました。裸同然で立ち向かってゆく彼らの姿に、どこかやるせない気持ちになりました。
舞台から飛び降りたり、通路では取っ組み合いが始まります。
席に座っている、その床が「ドンっ!」と響くのを感じました。とても迫力がありました。
アタシの座席のすぐそばで、農民が兵士に倒されていました。
横倒れになった彼は兵士をすがる様な目で見つめ、「た、たすけて下さいっ・・・。」と懇願していました。
彼にはマイクがついてはいなかったため、それは一人の農民の肉声でした。
アタシは彼のその言葉を聞いた時、農民達には守るべき家庭があり、愛する家族があるのだと知りました。
彼は若かったから、若い妻と小さな子供が居るのかもしれない。
土地を奪われ仕事を失ってしまっては、家族が飢え死にしてしまう。
農民達を組織し、集団化させたのはロバート・ケットと言う男。演じていたのは和泉崇司さん。
農民達はどう見ても”戦士”には見えませんでしたが、行き場のない不満をそのままにしていたとしたなら、事態はもっと惨たらしい状況を招いていたかもしれません。
土地を奪われ、ひどい目に遭わされている者達に共通の敵を作り向かわせる事が必要だったのかもしれません。
それが、彼らが人間らしくある最後の手段であったのかも。
ケットはそれを知っていたんじゃないかとアタシは思います。
粗末な服であろうと、ピカピカの鎧を着ていようと、プライドは同等の物を持っている。
同じ人間なのだから。
きっと、ケットは英国軍の兵士であったとしても、良い指揮官になり得たと思います。
ちなみに彼らが投げた石は舞台の上空から降りて来る壁にぶつかって転がり、壁が上へ戻り場面転換がなされてもそのまま放置される事が多くありました。
貴族の皆さんの衣装は床をするほど丈が長いので、当然の事ながら床にある石をコロン、と衣装の裾で転がしてしまうのです。
踏んじゃわないのかな、片付けないのかな、とちょっとヒヤヒヤしたんですがこの舞台の冒頭ではロジャー・アスカムが「私は石と話す。」と言う様な台詞を言うんです。
それは、古来からずっと変わらずそこにあり、その土地で生きた人々の姿や起こりえた出来事を見聞きして来た物の象徴として「石」を捉えているからかなと思いました。
例えば、何百年も前に建設された日本の城には石垣が残っている物があります。
その石たちは絶対的に、歴史的な出来事の真実や歴史上の有名人達を全て目撃しているのです。
「語り部」としてのロジャーは、言葉を持たぬ石に代わって舞台と客席を結んでいたのかもしれない。
農民達の投げた石もまた、”歴史のかけら”とするならば、舞台上に存在し続ける意味がありますね。
農民達のリーダー、ロバート・ケット役の和泉崇司さん。
ケットは帽子を被りヒゲを生やした風貌でした。
どうやら舞台から飛び降りる演技をしたのは、和泉さんだったみたいです。
最初は全然彼が和泉さんとは分りませんでした。思うより低い声だったし、野生的な感じがしたので・・・。
農民達の先頭に立ち、大きな声で掛け合い彼らを鼓舞する様な場面がありました。
ついこの間、上川さんも出演したドラマ「スペシャリスト」で、和泉さんは学生運動が盛んだった頃の大学生を演じていらっしゃいましたね。
知的で、静かに燃える野心を胸に秘めた青年を非常に繊細に演じていました。
和泉さんはとても深い瞳をした役者さんだと思います。
こういう目をした人は、内面的な事をその瞳だけで表現できる人です。
上川隆也さんもそう言う瞳の役者さんですね。
おんなじ瞳をしてると思うんです。
A-STUDIOと言うテレビ番組に上川さんが出演した時、司会の鶴瓶さんが上川さんに内緒で和泉さんのところへ取材に行っていました。
和泉さんと会って話した鶴瓶さんは、確か和泉さんの事をまるで上川さんの様だと、(印象が)「生き写し」だと言っていた様な気がします。
やっぱり、お二人は似てるんだなぁ・・・と思いました。
和泉さんのこれからがとても楽しみですね。
つづく。
土地や仕事を貴族達に奪われ、鬱積した不満は爆発寸前です。
高くそびえる壁に向かって、怒りをぶつけるように激しく投石します。
農民達は舞台に開けられた2つの”穴”や、1階席の扉から何度も出て来ます。
客席に降りての演技も多く、アタシは彼らと兵士達の戦いをそばで観る機会に恵まれた時がありました。
とても印象深かったのは、農民達が兵士達と対照的なところ。
農民達の手にする武器は鍬や熊手と言った農耕具で、服は粗末な物だし、靴は擦り切れていました。
比べて兵士達はピカピカの鎧を着、手にする剣はとても立派で切れ味が良さそうです。
農民達の瞳はギラギラしていました。裸同然で立ち向かってゆく彼らの姿に、どこかやるせない気持ちになりました。
舞台から飛び降りたり、通路では取っ組み合いが始まります。
席に座っている、その床が「ドンっ!」と響くのを感じました。とても迫力がありました。
アタシの座席のすぐそばで、農民が兵士に倒されていました。
横倒れになった彼は兵士をすがる様な目で見つめ、「た、たすけて下さいっ・・・。」と懇願していました。
彼にはマイクがついてはいなかったため、それは一人の農民の肉声でした。
アタシは彼のその言葉を聞いた時、農民達には守るべき家庭があり、愛する家族があるのだと知りました。
彼は若かったから、若い妻と小さな子供が居るのかもしれない。
土地を奪われ仕事を失ってしまっては、家族が飢え死にしてしまう。
農民達を組織し、集団化させたのはロバート・ケットと言う男。演じていたのは和泉崇司さん。
農民達はどう見ても”戦士”には見えませんでしたが、行き場のない不満をそのままにしていたとしたなら、事態はもっと惨たらしい状況を招いていたかもしれません。
土地を奪われ、ひどい目に遭わされている者達に共通の敵を作り向かわせる事が必要だったのかもしれません。
それが、彼らが人間らしくある最後の手段であったのかも。
ケットはそれを知っていたんじゃないかとアタシは思います。
粗末な服であろうと、ピカピカの鎧を着ていようと、プライドは同等の物を持っている。
同じ人間なのだから。
きっと、ケットは英国軍の兵士であったとしても、良い指揮官になり得たと思います。
ちなみに彼らが投げた石は舞台の上空から降りて来る壁にぶつかって転がり、壁が上へ戻り場面転換がなされてもそのまま放置される事が多くありました。
貴族の皆さんの衣装は床をするほど丈が長いので、当然の事ながら床にある石をコロン、と衣装の裾で転がしてしまうのです。
踏んじゃわないのかな、片付けないのかな、とちょっとヒヤヒヤしたんですがこの舞台の冒頭ではロジャー・アスカムが「私は石と話す。」と言う様な台詞を言うんです。
それは、古来からずっと変わらずそこにあり、その土地で生きた人々の姿や起こりえた出来事を見聞きして来た物の象徴として「石」を捉えているからかなと思いました。
例えば、何百年も前に建設された日本の城には石垣が残っている物があります。
その石たちは絶対的に、歴史的な出来事の真実や歴史上の有名人達を全て目撃しているのです。
「語り部」としてのロジャーは、言葉を持たぬ石に代わって舞台と客席を結んでいたのかもしれない。
農民達の投げた石もまた、”歴史のかけら”とするならば、舞台上に存在し続ける意味がありますね。
農民達のリーダー、ロバート・ケット役の和泉崇司さん。
ケットは帽子を被りヒゲを生やした風貌でした。
どうやら舞台から飛び降りる演技をしたのは、和泉さんだったみたいです。
最初は全然彼が和泉さんとは分りませんでした。思うより低い声だったし、野生的な感じがしたので・・・。
農民達の先頭に立ち、大きな声で掛け合い彼らを鼓舞する様な場面がありました。
ついこの間、上川さんも出演したドラマ「スペシャリスト」で、和泉さんは学生運動が盛んだった頃の大学生を演じていらっしゃいましたね。
知的で、静かに燃える野心を胸に秘めた青年を非常に繊細に演じていました。
和泉さんはとても深い瞳をした役者さんだと思います。
こういう目をした人は、内面的な事をその瞳だけで表現できる人です。
上川隆也さんもそう言う瞳の役者さんですね。
おんなじ瞳をしてると思うんです。
A-STUDIOと言うテレビ番組に上川さんが出演した時、司会の鶴瓶さんが上川さんに内緒で和泉さんのところへ取材に行っていました。
和泉さんと会って話した鶴瓶さんは、確か和泉さんの事をまるで上川さんの様だと、(印象が)「生き写し」だと言っていた様な気がします。
やっぱり、お二人は似てるんだなぁ・・・と思いました。
和泉さんのこれからがとても楽しみですね。
つづく。