Chef's Note

『シェフの落書きノート』

世界の小澤征爾

2007-04-03 | 自由 気ままな独り言
今日、久しぶりにバイトに来たスタッフ

彼女は、音楽大学に通い声楽を専攻している。
オペラ歌手を夢見て頑張っている明るい娘。

「今日、小澤征爾(おざわせいじ)さんの稽古を見てきたんです」

「へぇ~。凄いね!で…どうだった?」

「シェフは、小澤征爾さんって知ってますか?」

「世界の小澤でしょ?世界でトップの指揮者でしょ?」

「あっ!知ってるんだ…」

「知ってるよ。クラッシックのことはよくわからないけど…小澤征爾さんの名前くらいは知ってる」

「やっぱり、凄かったですよ…。凄く温かい器の大きい人ですね」

「そうだろうなぁ~。なにしろ世界の小澤だからなぁ~。でも良い大学に通ってるね。小澤征爾さんの練習風景を見られるなんて…」

「えっ?大学じゃないですよ。私一人で行ってきたんです」

「はぁ?大学じゃないの?えっ~?どうやって見られたの?」

「電車の中でお会いしたので、声をかけたんです…」

「電車?え~!?小澤征爾さんも電車に乗るんだ…。なんて声かけたの?」

「『失礼ですけど、小澤先生ですか?私は音楽大学で声楽を学んでいるものですが、先生の稽古を拝見したいと思っているのですが、宜しいでしょうか?』って声をかけたんです」

「いきなり会って稽古を拝見したいっていう君も凄いけど…。でも快くOKしてくれたでしょ?」

「そうなんですよ。『いいよ。遊びに来なさい。来る時はここに連絡して僕がどこにいるか聞いてから、来るんだよ。いつでもいいから…』っておっしゃって…。本当に温かく普通にそう言ってくれました」

「凄いな…。さすがは世界の小澤だな…。でも、電車の中で小澤征爾さんに気がついた人は他にいなかったでしょ?」

「そうなんですよ。誰も気づかなかったです。小澤征爾さんを知っている人って少ないんですね」

「そうだろうな…。クラッシックに興味をもっている人なんかだったら、わかるかもしれないけど…。名前を聞いただけでは、わからない人も多いかもね」


やっぱり凄い!…と彼女は、何度も言った。
「小澤征爾さんは、本当に凄く勉強しているし、稽古も穏やかで温かな感じで、何度も何度も同じところを繰り返し丁寧にやってました。世界のトップはやっぱり凄いですね。あんなに凄い人なのに少しも偉そうにする所もないし、本当に温かくむかえてくれて…」

「狭い世界で俺が一番!なんて言ってる井の中の蛙とはわけが違うだろうね。頑張れよな…。電車の中でそう簡単に会える人じゃないぞ!ましてや普通は、『小澤征爾さんですか?お会いできて光栄です』で終わるところを、稽古まで見られるチャンスを頂いたんだから、神様は、おまえを応援しているんじゃないか?小澤征爾さんに会いたい人なんて、どれだけいるかわからんぞ!」

「そうですよね。『また、いつでも遊びにおいで…』って温かく言ってくれました」

「本当にマジスゲエ!これがロック界だったら、ミックジャガーに会えるフリーパスを貰ったようなもんだぞ」

「えっ?なんですか?肉じゃが?」

「ミックジャガー!!!ニクジャガじゃねぇ!ミックジャガーだ。ローリングストーンズのボーカル」

爆笑!


それにしても…
やはり世界のトップを走る人は凄い!

彼女もその人間の器の大きさに感嘆していた。

僕は『世界の小澤征爾』も電車に乗るのかと…少し驚いた。

見も知らぬ電車の中で出会った娘を快く招待して、オーケストラの練習風景を見せる。
あのカラヤンを師匠とし、カラヤンが認めた小澤征爾。

正真正銘の本物は、その人となりに接した時、人に大きな夢を与え、温かく人を包み込んでいく…。





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