
「おばぁちゃん、この二人のうちどちらかが次の総理大臣になるんよ」
「ふ~ん」
「ほんでどの人に総理大臣になってもらいたい?」
「ほおよねぇ・・・私しゃあ男前の方がええねぇ」
(ホホォ~88才でも男前がええかぁ、おばぁちゃんも元々面食いやったんか~、知らなんだなぁ)
「ほんじゃあ、どっちが男前かねぇ?」
「・・・・・・」
「ねぇ、どっち?」
「・・・・・・」
おばぁちゃんの男前の基準からすると、どっちもどっちというところなのだろう。
・・・確かに・・・。
ある朝カーテンを開けながら
「おばぁちゃんお早う、よう寝れた?」
「うん、なんぼでも眠れるんよ、どうしたことだろ」
「ええこっちゃないの、元気な証拠よ」
「ほんでもように眠ってしもうて、何にもわからんようになるんじゃないかと心配なんよ」
日によっては「手も足も痛うてちょっとも眠れなんだ」と云う時もある。
夕食のあと、ウトウトしていた彼女、ふと目を覚まし、
「よう考えてみたら、私しゃぁもう何日もご飯を食べてないと思う」
「そぉ、おばぁちゃんお腹すいた?」
「・・・・・・」
「さっき晩御飯も食べよったヨ。大丈夫やつれせん」
「この頃は何でも忘れてしもうて、私しゃようにバカになりよる」
「エェじゃないの、ドンドン忘れてドンドン覚えて行きゃあエエ。覚えれんでも大勢に影響ないよ」
こんな会話を繰り返し乍ら日が過ぎる。
やがて確実に訪れる別れの日、一日一日をゆっくり楽しもう。
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