★ 霜降
麻布は坂の多い街です。わが家の隣りスーパー「ピーコック」を過ぎると緩やかな上り坂「大黒坂」です。坂の途中に大黒様を祀った大法寺があります。少し傾斜がきつくなって上り切ったあたりが「一本松坂」、 麻布七不思議のひとつ「一本松」があります。右から「暗闇坂」「たぬき坂」の道が合流してきます。暗闇坂の中程にはオーストリア大使館があります。二つの道にはさまれて古い洋館が建っています。
大正13年に建てられたこの建物は、日本の鉄筋コンクリート工学の開祖といわれる建築家阿部美樹志(あべ みきし)氏が自邸として設計されたものです。現在は美樹志氏のご子息で、芭蕉研究の第一人者阿部正美氏がお住まいですが、90年も前の建物ですからかなり劣化しているのでしょうか、取り壊すとの噂を聞きました。ちょっと残念に思い写真を撮ってきました。玄関にはきれいなステンドグラス、大正時代の豪邸だったことが想像されます。 麻布十番商店街は戦災にあい、すべてを焼失した私の父も 「50年の努力灰燼に帰す」 とメモっていました。坂の上の阿部邸周辺は戦火にもあわず、駐留軍(古い言葉ですね)に接収された豪邸も多かったところで、戦後しばらく停電の多かった時でも このあたりは停電のないお屋敷町と言われていました。
大正時代に民家としての鉄筋コンクリート造りの建物は、歴史的価値もあると思われますし、残して欲しい気もしますが、お住まいの方は不自由なのでしょうね。
二十四節気「霜降」 寒くなりましたね。ご自愛下さい。
2015.10.24