
「すみれ、どうした?」
「すみません。お腹が痛くって」
「大丈夫か。先生も学生の時、試験というと腹が痛くなって、お袋に……あ、ごめん。さ、二時間目に間に合ったのだから、いいさ」
夏木先生はすみれの頭を撫でた。
すみれはクラスメートの視線を避けるように自分の机に向かった。千秋の横を通ったとき、千秋が言った。
「すみれ、先生に優しくされたかったんじゃないの。お腹が痛いなんて嘘でしょ」
千秋の後ろの席の珠恵がすみれの右腕を突いた。
「甘えてんじゃないの」
久美が威嚇するように顔を近づけた。
「調子乗ってると……」
「こら、お前たち、仲良くしなきゃ駄目だろ。さ、みんな席に着きなさい」
夏木先生が大声で言った。
すみれは、なんとなく下腹が疼いていた。仮病をついた罰だなと思いながら、給食を摂っていた。千秋がすみれと目が合うと、大げさに目をそらした。珠恵と久美が大声で笑った。いつものことだと思いながら、腹立たしい気持ちを抑えた。
放課後の教室の掃除は、なるべくあの三人には近寄らないようにした。下腹の疼きは遠退いたようである。
学校からの帰り道、またポピー公園に行こうと思った。学校から住んでいるアパートまで十五分かかる。公園はその中間地点から南に二十分くらい行った所だ。
歩きながら下腹の痛みが強くなって、内股に生温いものが流れる感じがした。すみれは、方向を変えアパートに帰ることにした。
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著書・夢幻に収録済み★連作20「すみれ五年生」が始まります。
作者自身の体験が入り混じっています。
悲しかったり、寂しかったり苦しかったり、そのどれもが貴重なものだったと思える今日この頃。
人生って素晴らしいものですねぇ。
楽しんでお読みいただけると嬉しいです。
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