「おい、我が家にも台風被害が出たぞ」
玄関先で夫が叫んだ。急いで外に出た。まだ風は強い。小雨も降っている。
街灯と玄関の明かりでラティス五枚が倒れているのが見えた。コニファー一本も斜めになっている。
「どうする、おまえ」
──どうするって、聞きたいのは私のほうよ。
「明日考えるわ」
寝床に入ってからも倒れたラティスが気になって仕方がない。
二年前、私一人で、ブロックとフェンスで出来ている既存の塀に沿わせた中古のラティス。支柱は立てなかった。ラティス同士は金具で繋いだが、フェンスに括り付けただけだ。
我が家の夫も息子も手伝う気は無いようで、口出しも手出しもしない。女一人で作業しているのを他人が見たらなんと思うかしら。そんなことを考えて、極力音を立てないように注意して設置したものだ。
全部取り替えるか、一部だけやり直すか。どちらにしても業者に頼むしかないだろう。ラティスは十九枚。それに支柱が必要だし、工事代含めると幾らになるだろうか。
次の台風が来たら持たないだろう。なんて考えていたが、いつの間にか眠っていた。
翌朝、ゴルフに出かける夫に手伝わせてラティスを起こした。一枚が枠から外れていたが、どうにか、元通りに近い状態に戻すことが出来そうだ。
主要なところを括り付けるまで手伝った夫は、車で出かけていった。修理もその後どうするもお前に任せると言いたげだ。
日曜の朝で我が家の息子夫婦や孫達はまだ眠っている。近所の家からも生活音は聞こえてこない。私は、静かに修理を続けた。
著書「夢幻」収録済みの「ステタイルーム」シリーズです。
主人公はそれぞれの作品で変わります。
楽しんで頂けたら嬉しいです。
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