理想国家日本の条件 さんより転載です。
年01月06日 00時00分00秒 | 拡散記事・報道、教育(活動。繋がる)
http://www.sankei.com/premium/news/170104/prm1701040010-n1.html
2017.1.4 14:01産経ニュース
【これを読めば北朝鮮の核・ミサイル問題丸分かり・米国編】 大陸間弾道ミサイルに備え米本土での迎撃能力強化
米コロラド州コロラドスプリングス。北米航空宇宙防衛司令部(NORAD)のオペレーションルームでは、北朝鮮のミサイル発射などが24時間体制で監視されている。ミサイルの発射地点や航跡がスクリーンに映し出され、コンピューターが角度、方角、速度などを瞬時に解析し、予想される着弾地点や時刻を割り出す。この情報はアジア太平洋に展開する米イージス艦などとリンクしており、ミサイル防衛(MD)のいわば心臓部である。
北朝鮮がミサイルを発射した際、NORADは声明の形で発射時刻と場所、着弾地点など情報の一部を開示している。その際に決まって付け加えられるのが、「米国への脅威はない」という、胸をなで下ろしたかのような一文だ。
裏を返せばこの一文は、北朝鮮の核・ミサイルが、米国本土をも脅かすさし迫ったものだという危機感を端的に表している。
現に、前NORAD司令官のウィリアム・ゴートニー氏は「北朝鮮は米国本土とカナダを射程に収めた大陸間弾道ミサイル(ICBM)を、宇宙空間に撃ち上げる能力をもっている。核爆弾を小型化しICBMに搭載する能力も保持している」と言明している。
米軍はミサイルの射程などからスカッドは韓国攻撃用、ノドンは日本攻撃用、ムスダンはグアム攻撃用だと大まかに分類する。北朝鮮から米国の西海岸までは約1万キロ。ゴートニー氏が言う米国本土を脅かすICBMとは主に、推定最大射程が1万キロ以上とみられているKN08を指す。
こうした脅威の増大は、米側に戦略上の微妙な変化をもたらしている。日米韓のミサイル迎撃網を今や、米国本土を守るための「第一防衛ライン」と位置づけているのだ。
米国の防衛体制を概観すると、グアムには米軍の最新鋭地上配備型迎撃システム「高高度防衛ミサイル」(THAAD)の1個中隊が展開している。米軍はムスダンの場合、発射から約7分後に高度約580キロの大気圏外に突入すると予想しており、イージス艦がSM3で迎撃し、これに失敗すればTHAADで迎え撃つ二段構えになっている。
一方、ハワイはグアム防衛などに比べると手薄とされ、イージス・システムなどの迎撃実験が行われているカウアイ島のイージス・アショア実験施設を、実戦配備施設にすることなどが検討されている。
本土防衛としては、地上配備型防衛(GMD)と呼ばれるシステムがあり、迎撃ミサイルGBIがアラスカのフォートグリーリー基地に26基、カリフォルニアのバンデンバーグ基地に4基の計30基が配備されている。これを44基に増強する計画で、ゴートニー氏は「GMDは機能する」と自信を見せている。
これに加え、北朝鮮のミサイルのさらなる長射程化を見据え、東海岸にも迎撃施設を建設することも検討されている。2、3カ所に総額約30億ドル(約3500億円)をかけて、日米共同開発のSM3ブロック2Aを配備する方向だ。
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ヘリテージ財団の上級研究員ブルース・クリングナー氏は、2016年の北朝鮮の動向をこう総括する。
「移動式ミサイルと潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、個体燃料、核弾頭技術の開発で前進があった。移動式ミサイルとSLBMは、捕捉し標的とすることが難しい。固体燃料は発射に必要な時間を短縮する。複合的なミサイルは核戦力と体制の生き残りの能力を高め、(米国などによる)先制攻撃の実行可能性を低減させる。北朝鮮の核による奇襲攻撃や、反撃の能力も高める」
クリングナー氏は「北朝鮮は16~20発の核弾頭を保有している」とみる。SLBMについては「軌道によっては、射程は千キロ以上」と分析する。
アンジェロ大学教授で、米国防情報局(DIA)の情報分析官だったブルース・ベクトル氏は「開発は金正恩体制下で加速されている。孤立した国家は、核兵器を放棄することはない」と警鐘を鳴らす。
北朝鮮の野望をどう阻止するかとなると、経済制裁の強化など選択肢は限られる。ベクトル氏は「現行の制裁措置は、紙の上では素晴らしいものに見える。しかし、強制力が欠如しており、印刷した紙切れにすぎない。北朝鮮に本当の圧力をかける制裁措置ではない」と手厳しい。
クリングナー氏も「北朝鮮に対しては長らく、『スマート制裁』といわれる限定的な制裁が導入され、オバマ政権は本腰を入れてこなかった」と批判する。
多くの有識者が主張するのは、北朝鮮への送金や、資金洗浄などの“温床”とみられている中国の銀行を対象とした制裁措置だ。「これにより北朝鮮の敵対的な行動に、変化をもたらすことができるだろう」と、ベクトル氏は言う。軍事分野では「米国はMDをもっと配備すべきで、THAADの日本への配備も重要だ」と指摘する
トランプ次期米政権の対北朝鮮政策も鍵となる。クリングナー氏は「政策を予測することは難しい。われわれは未知の領域にいる。次期政権は日本と韓国に対する核の傘、ミサイル防衛、通常戦力による抑止力を無条件で保証し確約すべきだ」と強調する。
一方、ベクトル氏は「次期政権はオバマ政権より積極的だろう。現状を変更する方策を講じるとみられ、北朝鮮に圧力をもたらすだろう。オバマ政権の山ほど失敗した『戦略的忍耐』は、くずかごに入れられる」との見方を示す。
リチャード・アーミテージ元国務副長官は、北朝鮮の姿勢に変化を促すことには懐疑的だ。
「北朝鮮の態度が変わることを望んできたが、もはやこうした展望は抱いていない。北朝鮮に現在の針路を思いとどまらせる唯一の方法は、体制転換だ」
(ワシントン 青木伸行)