気象庁は12日、全国の活火山の去年12月以降の活動状況や警戒すべき点について発表しました。噴火が発生したり火山活動が高まったりして、全国の13の火山に「噴火警報」や「火口周辺警報」が発表されています。

【火口周辺警報は12火山】今後の噴火によって火口周辺や居住地域の近くに影響がおよぶおそれがある「火口周辺警報」が発表されているのは、群馬県の草津白根山、群馬と長野の県境にある浅間山、長野と岐阜の県境にある御嶽山、熊本県の阿蘇山、宮崎県と鹿児島県にまたがる霧島連山の「新燃岳」と「えびの高原の硫黄山周辺」、鹿児島県の桜島と口永良部島、諏訪之瀬島、薩摩硫黄島、それに小笠原諸島の西之島と硫黄島の合わせて12の火山です。
【噴火警戒レベル3は桜島と口永良部島】このうち、入山規制などが必要とされる「噴火警戒レベル3」は、鹿児島県の桜島と口永良部島に発表されています。

桜島では昭和火口と南岳ともに去年9月以降、噴火は観測されていませんが、衛星を使った観測では鹿児島湾奥部の「姶良カルデラ」の地下にあるマグマだまりの膨張が続いていて、火山活動が再び活発化する可能性があります。おととし1月ごろからは膨張の速度がやや増大しているということで、気象庁は昭和火口と南岳山頂火口からおおむね2キロの範囲では、大きな噴石や火砕流に警戒を呼びかけています。

口永良部島では、去年12月の中旬ごろ、一時的に火山性地震が増加して月の回数としてやや多くなりました。火山ガスの放出量は、平成26年8月の噴火前よりやや多い状態が続いています。気象庁は、おととし5月の爆発的噴火と同じ程度の噴火が発生する可能性は低くなっているとしたうえで、火口からおおむね2キロの範囲では大きな噴石や火砕流に、向江浜地区などでは火砕流に警戒するよう呼びかけています。
【噴火警戒レベル2は8つの火山】火口周辺への立ち入りなどが規制される「噴火警戒レベル2」が発表されているのは、草津白根山、浅間山、御嶽山、阿蘇山、霧島連山の新燃岳とえびの高原の硫黄山周辺、諏訪之瀬島、薩摩硫黄島の8つの火山です。

阿蘇山は、去年10月に中岳第一火口で爆発的噴火が発生し、噴火警戒レベルが2から3に引き上げられましたが、その後は噴火は発生せず、地下のマグマや火山ガスなどの動きを示すと考えられる火山性微動の振幅もおおむね小さい状態が続いたことなどから、去年12月20日、噴火警戒レベルが2に引き下げられました。一方、火山ガスの放出量は、1日当たり1000トンから1700トンとやや多くなっています。気象庁は、中岳第一火口では、引き続き小規模な噴火が発生する可能性があるとして、火口からおおむね1キロの範囲では噴火に伴う大きな噴石や火砕流に警戒するよう呼びかけています。

おととし6月にごく小規模な噴火が発生した浅間山では、山頂火口直下のごく浅いところを震源とする火山性地震がやや多い状態が続き、去年12月は合わせて1432回発生しました。火山ガスの放出量は、12月16日の観測で1000トンで、その後1月11日の観測でも1日当たり2200トンとさらに多くなっています。1日当たりの放出量が2000トンを超えたのは、おととし10月以来です。また、夜間に高温の火山ガスなどが雲などに映って赤く見える「火映現象」が、12月6日に観測されました。浅間山で「火映現象」が観測されたのは去年9月9日以来で、その後、12月28日と29日、31日、1月に入って6日と7日にも観測されています。火山活動はやや活発な状態が続いていて、気象庁は、浅間山では今後も小規模な噴火が発生する可能性があり、引き続き、山頂火口からおおむね2キロの範囲では噴火に伴う大きな噴石に警戒を呼びかけています。

御嶽山では、平成26年10月中旬以降、噴火は観測されていません。また、去年9月から11月にかけては火山性微動が観測された日がありましたが、12月は観測されませんでした。一方、火山性地震は続いていて、火口から噴煙も出ていることから、気象庁は今後も小規模な噴火が発生する可能性があるとして、引き続き、火口からおおむね1キロの範囲では噴火に伴う大きな噴石に警戒を呼びかけています。

草津白根山では、湯釜火口周辺の斜面などでふだんより地面の温度が高い状態が続き、引き続き噴気も確認されています。気象庁は小規模な噴火が発生する可能性があり、引き続き、火口からおおむね1キロの範囲では噴火に伴う大きな噴石に警戒を呼びかけています。

霧島連山の新燃岳では、火山性地震が時々発生しましたが、地下深くのマグマだまりが膨張していることを示す地殻変動は、おととし1月ごろから停滞しています。気象庁は、新燃岳では火口周辺に影響を及ぼす小規模な噴火が発生する可能性があり、引き続き、火口からおおむね1キロの範囲では噴火に伴う大きな噴石に警戒を呼びかけています。

霧島連山のえびの高原の硫黄山周辺では、去年12月12日に火山性地震が増加したほか、火山性微動や山体の膨張も観測されたことから、気象庁が火口周辺警報を発表し、噴火警戒レベルを「1」から「2」に引き上げました。その後、火山性地震は少なくなっていますが、気象庁はおおむね1キロの範囲では噴火に伴う大きな噴石に警戒するよう呼びかけています。

諏訪之瀬島の御岳火口では、去年12月は噴火が時々発生し、爆発的噴火が7回発生するなど活発な火山活動が続いています。このうち13日の噴火では噴煙が高さ2500メートル以上まで上がったことが確認されました。今後も火口周辺に影響を及ぼす噴火が発生すると予想され、気象庁は引き続き、火口からおおむね1キロの範囲では噴火に伴う大きな噴石に警戒を呼びかけています。

薩摩硫黄島では、1月に入って火山性地震が増加し、気象庁は5日、火口周辺警報を発表して噴火警戒レベルを「1」から「2」に引き上げました。薩摩硫黄島の噴火警戒レベルが2に引き上げられたのは、4年前の平成25年6月以来です。火山性地震は、その後も1日に40回から60回程度観測されています。一方、監視カメラによる噴煙の観測や地殻変動のデータには、これまでのところ特段の変化は見られないということです。また、気象庁が10日に行った観測で、火山ガスの放出量は1日当たり500トンとやや少ない状態だったということです。気象庁は、硫黄岳の山頂にある火口からおおむね1キロの範囲では噴火に伴う大きな噴石に警戒するよう呼びかけています。

【海底火山に「噴火警報」】小笠原諸島の近海にある海底火山の福徳岡ノ場には、周辺の海域で警戒が必要な「噴火警報」が発表されています。
【警報なし・レベル1の注意】全国の活火山の中には警報が発表されておらず、噴火警戒レベルがレベル1の火山がありますが、過去に噴火を繰り返してきた活火山であることに変わりはなく、気象庁や自治体が発表する情報に注意が必要です。
【火山情報の確認を】各地の火山活動の状況や注意点などは、気象庁や各地の気象台、自治体のホームページなどで確認することができます。